日本から海外流出の動きが止まらない人気のスポーツモデル
2024年5月18日、アイコニック・オークショネアーズがイギリス・ノーサンプトンシャー州で開催したオークションにおいて三菱「ランサーエボリューションVI トミ・マキネン エディション」が出品されました。最初からイギリス仕様として生産された1台で、シリアルナンバーは「119」。そのコンディションは上々でしたが、落札価格は果たして……。
三菱に数多くの勝利をもたらしたトミ・マキネン
日本と同じ左側通行の国、イギリス。そのイギリスで日本の中古車にマニアからの熱い視線が注がれるようになって、もうかなりの時間が経過した。最初はイギリスには正規に輸出されなかった日産のR32型「スカイラインGT-R」など、人気の中心はスポーツカーにあったが、それから数年を待たないうちに、JDM(Japanease Domestic Market)と呼ばれる日本車の中古車は、イギリスでさらに注目される存在となった。とくにコレクターズアイテムとしての価値と価格が程よくバランスした、1990年代から2000年代のモデルは、その人気が圧倒的だ。
その事実を物語るように、イギリスのアイコニック・オークショネアーズ社は、先日「スーパーカー・フェスト・セール・オブ・アイコニック・アンド・クラッシック・カーズ」と題したオークションを開催。その主役的存在として、7台もの人気スポーツJDMを取り揃えてみせた。
その中でまずオークションのステージへと導かれたのは、2001年モデルの三菱「ランサーエボリューション VI トミ・マキネン エディション」。トミ・マキネンの名は、三菱のファンならずとも、世界ラリー選手権(WRC)や、さらに広くモータースポーツの歴史に詳しいファンには、あえて詳しく説明するまでもないだろう。
三菱は当時グループA規定で競われていたWRCに、「ランサー」の高性能モデル、「ランサーエボリューション」を投入。それはモータースポーツの世界では当然ともいうべき正常進化を続け、エボI~エボVIまでトミ・マキネンの活躍とともに、三菱に数多くの勝利をもたらしたのだった。トミ・マキネン自身は4年連続でドライバーズ・チャンピオンを手にし、また三菱も1998年にはマニファクチャラーズ・チャンピオンの栄誉に輝いた。
専用デザインが採用されたトミマキエディション
今回スーパーカー・フェスト・セール・オブ・アイコニック・アンド・クラッシック・カーズに出品された、ランサーエボリューションVIのトミ・マキネン エディションは、その栄誉を祝して三菱が2000年1月に発売した限定車。モデルバリエーションは「GSR」と「RS」の2タイプで、当時の日本市場における価格は前者が327万8000円、後者は259万8000円の設定だった。
一連のランサーエボリューション・シリーズの中でも、おそらくコレクターズアイテムとしての人気が最も高いのは、エボXのファイナル・エディションと見るのが妥当なのだろうが、このエボVI トミ・マキネン エディションの人気は、確実にそれに続くものと判断できる。
専用デザインのフロントバンパーや、オプションのカラーリングパッケージを選択すれば、その外観の雰囲気はさらに戦闘的なものに変化。ボディカラーは今回の出品車のキャナルブルーを含め5色が用意されたが、スペシャルカラーリングパッケージの選択は、パッションレッドのみで可能なオプションだった。
ちなみにトミ・マキネン エディションの総生産台数は約3000台で、そのうち英国に正式に輸入されたのは5色合わせてわずか250台。他に100台がオーストラリアで販売され、残りは日本国内で販売された。公式の数字によると、英国に割り当てられた台数のうち、キャナルブルーはわずか50台とのことだ。
インテリアもレーシーな雰囲気に包まれるが、もちろん運動性能を向上させるためのチューニングも忘れてはいない。コンプレッサーホイールの小型化などを図ったハイレスポンス・チタンアルミ合金ターボチャージャーや、専用チューニングを施したサスペンションは、いずれもGSRに標準装備(RSはオプション)。ステアリングギア比の高速化や新構造のスポーツマフラーなども、このモデルの専用装備のひとつだった。
エスティメートは約990万円からだが……
アイコニック・オークショネアーズのレポートによれば、出品車は最初からイギリス仕様として生産され、シリアルナンバーは「119」。そのコンディションは上々だ。走行距離も1万7500マイル(約2万8000km)に抑えられていたということもあり、同社は5万~6万ポンド(邦貨換算約990万円~1190万円)という強気のエスティメート(推定落札価格)を掲げた。
数年前にはいわゆるファクトリー出しの由緒正しきトミ・マキネン エディションが10万ポンド以上の価格でオークションでも取り引きされただけに、その成り行きには注目が集まったが、今回は残念ながら最低落札価格をクリアする価格を提示したビッター(入札者)は現れなかった。聞くところによれば、JDMの人気スポーツモデルは今も、日本から海外流出の動きが止まらないという。それらの貴重な財産を守るのは、やはり日本人としての当然の動きといえるのだろうか。