1000馬力オーバーの怪物をFSWで全開アタック!
ランボルギーニのフラッグシップは、HPEV(ハイパフォーマンスEV)になって大きな転換を迎えました。自然吸気のV12だけでなく、あらたにモーターまで加わることになって、どれほど走りに変化が出たのでしょうか。スーパーカー大王の山崎元裕氏が富士スピードウェイで試してみました。
ドライブすることが恐ろしく感じられる1台
ランボルギーニは1963年の創立から継承してきたV型12気筒エンジンに、これからどのような運命を与えようというのか。つい最近まで、ランボルギーニやスーパースポーツのファンは、この話題に集中してきた感がある。それはランボルギーニというブランド名を、例えばフェラーリやベントレーに代えても同じことで、前者はV型12気筒自然吸気の「12チリンドリ」という新型車を新開発、また後者はW型12気筒エンジン搭載車の生産を、先日誕生した主力車種の第4世代「コンチネンタルGT」などでは終了するという決断を下してきた。
今回、富士スピードウェイという、おそらくは日本で最高の舞台で試乗することができた「レヴエルト」もまた、ランボルギーニにとって現在の最適解といえるメカニズムを装備したスーパースポーツだ。
白状すると、「カウンタック」以来の伝統となるシザードアを開けるのは、正直なところ怖かった。これまでレヴエルト以上のパフォーマンスを誇示するスーパースポーツ──いや現在ではハイパーカーというべきなのか──をドライブする機会は多くあったが、レヴエルトの場合は、その前身である「アヴェンタドール」から、メカニズムの多くを変化させている。リアミッドに搭載されるのは6.5LのV型12気筒自然吸気エンジンで、12.6の圧縮比から発揮される最高出力は825ps。アヴェンタドールに600台の限定生産車として発表された「ウルティメ」が、780psの最高出力を誇っていたことを考えると、まずここで45psものアドバンテージが得られていることになる。
さらにレヴエルトは、リアに1基、フロントに2基のエレクトリック・モーターを搭載した、プラグイン・ハイブリッドのHPEV(ハイパフォーマンスEV)である。このエレクトリック・モーターの効果により、最高出力はさらに1015psに向上し、最大トルクも725Nmを得ることになった。
軽量高性能な4500W/kgという高比出力を持つリチウムイオン・バッテリーパックは、センタートンネル内に格納され、それは長さ1550mm×高さ301mm×幅240mmと、全体で3.8kWhの容量となるパウチセルを使用している。ランボルギーニにとっては、かつて2019年に発表した「シアン」で、エレクトリック・モーターとスーパーキャパシタを搭載した例があるが、残念ながら電気の出し入れにさらなる速さが期待できる後者は、このレヴエルトには採用されなかった。次世代モデルへの期待といったところか。
V型12気筒エンジンと3基のエレクトリック・モーター。この4つの動力源をいかに自然に協調させていくか。それがレヴエルトの評価を決める大きな要素となるだろう。そのようなことを考えていたら、試乗の時間が訪れた。
アドレナリンを放出させるデザイン
ボディデザインは、Y字型のライトシグネチャーを特徴としたもので、かつそのフィニッシュには彫刻的な美しさが演出されている。デザインはもちろんランボルギーニ・チェントロ・スティーレのミティア・ボルケルト。彼は「レヴエルトのデザインは、アドレナリンを目に見える形で表現したもので、そのデザインによってランボルギーニの個性的なデザイン言語の未来に向かう扉を開くモデルである」と語る。
その内側に包み込まれる基本構造体は、もちろんカーボン製のモノコック。高剛性と軽量性の恩恵で、レヴエルトのパワーウェイトレシオは、同社史上最高の1.75kg/hpを達成したという。スーパースポーツカーでフロント構造を100%カーボン製としたのも、このレヴエルトが初のこと。参考までに車重はドライウェイトで1772kg。この数字はアヴェンタドールより10%軽く(フロントフレームだけでは20%軽い)、ねじり剛性も40000Nm/度と25%の強化を果たしている。前後重量配分は44:56という数字になる。
レヴエルトのドライバーズシートに座り、コクピットドリルを受ける。走行に必要なスイッチは、ほとんどがステアリングホイールに集中しているが、確実な操作性という意味では個人的には若干懐疑的な印象を受けるものだった。停止している状態ならまだしも、はたして走行中にこの小さなスイッチを正しく操作し、場合によってはドライブモードやバッテリーモードの切り替えなどが正しく行われたのかどうかを、インパネの表示で確認することができるのだろうか。