サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

スズキ「ジムニーシエラ」をピックアップにしてラリーに参戦! 車両製作は中央自動車大学校の学生たち…ドライバーは女性ペアでチャレンジします

AXCRに参戦するスズキ ジムニーシエラ:カーボンコンポジットメーカー「トラス」の協力を得て、ボンネットはスイスB-comp社の天然素材由来のコンポジットを使用したものとなっている

ジムニー ピックアップでラリーに挑戦!

今年も開催まであとひと月強となったアジアクロスカントリーラリー(2024年8月11日~17日開催。通称AXCR)。そろそろ日本から参戦する各チームは現地に向けて車両などを送り出すタイミングとなっています。長年AXCR参戦車両の製作および整備にかかわってきている中央自動車大学校では、今季初挑戦をするスズキ「ジムニーシエラ」の仕上げと発送準備の最終段階に入っていました。

ラリーレイドマシンを仕上げるのは、自動車大学校の学生たち

東南アジアを中心に開催されるFIA・FIM公認国際クロスカントリーラリーとして1996年から開催されている「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)」は、毎年8月、タイを中心にアジア各国の山岳地帯やジャングル、沼地、海岸、砂漠、プランテーション、サーキットなど、毎年凝ったコース設定で特徴のあるラリーレイドとなっています。

その第29回大会は、2024年8月11日(日)から17日(土)にかけて、タイ南部にあるスラタニからスタートし、タイ国内を北上し、カンチャナブリでフィニッシュするルートが設定され開催予定です。当初はタイとマレーシアの2カ国をまたぐルートで開催予定だったのですが、安全上の理由からマレーシア区間の中止を決め、今回はタイ国内のみの1国開催となっています。

このAXCRに長く関与しており、長らく車両の製作および整備を行っているのが、中央自動車大学校(CTS)です。この学校は学校法人中央技術学園が1988年に開校した、千葉県白井市、鎌ケ谷市にキャンパスを持つ自動車整備士を養成する自動車大学校。高校卒業資格も取れる高校課程から一級整備士・二級整備士を目指す専門課程まで幅広いコース設定と、少人数クラス編成が特徴の学校です。

今回ここで紹介するのは、中央自動車大学校の一般自動車整備科の皆さんが製作しているスズキ「ジムニーシエラ」がベースのラリーカーです。でも一見するとジムニー風のピックアップにしか見えません。

実はこの車両、ジムニーシエラをストレッチしていたのでした。ラダーフレームの中間をカットし30cm伸ばしているということです。それに合わせ、ボディシェルもBピラー以降をカット、ラゲッジスペース自体を後ろに伸ばしつつ、ルーフ後端をBピラー側に寄せていき、ピックアップトラック風に仕上げているのです。車幅側のジオメトリーの変更はないものの、205幅の横浜ゴム・ジオランダーM/T G003を履くため、オーバーフェンダーも装着します。ラゲッジスペースには、タイヤ、ジャッキ、ウインチ機を搭載することになるため、その固定用のバーを新設しています。

AXCRに合わせたカスタムで、上位進出を狙う

このストレッチの理由については、AXCRのコースの特徴として直進区間が意外と多いという点が挙げられます。そのため直進安定性をあげていくことの有効性を考えたものとなります。またラリーレイドという競技の特性上、車室内のスペースを確保したいという要件があるとのことでした。

ちなみに、この車両はAT車のまま参戦。AT用オイルクーラーを新規に追加していますが、今回はエンジンには手を入れていません。エンジンがノーマルのままというのは、このプロジェクト自体が2年計画となっているためで、まず初挑戦となる今回、エンジンまわりはストック状態で、AXCRに必要な足まわりをしっかり仕上げて参戦し、その後フィードバックを反映させて来年に臨む計画だそうです。

ちなみに足まわりは、この界隈ではおなじみのKING製のショックを採用しています。スペックとしてはジムニーシエラにはオーバースペックといえますが、このスムーズな摺動性とヘビーデューティな環境下での信頼性からのチョイスだということです。

この車両に搭乗するのは、台湾のロズリン・シェン選手がドライバー、そして青木拓磨号のコ・ドライバーを務めているイティポン・シムラック選手の娘であるナダ・シムラック選手がコ・ドライバーを務める予定で、女性ペアでの参戦となります。

CTSの実績としては、昨年は、AXCR2023優勝車両であるトヨタ「フォーチュナー」を手がけ、実際にラリーの現場に4名の選抜メンバーが参加していました。今回は一般整備課の4年生の中から、菅原 上、谷本慧悟、山本 駿の3名が選抜され、この本戦に同行することとなっています。

AXCRは、昨年優勝したTOYOTA Gazoo Racing INDONESIAの青木拓磨選手や、元パリ‐ダカールラリーの覇者である増岡 浩監督率いるチーム三菱ラリーアート、そしてタレントの哀川 翔さんが総監督を務め元D1GPチャンピオンの川畑真人選手がドライバーとして参戦するFLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESなど、日本からも多くのチームが参戦することになります。2024年8月11日(日)にタイ南部のスラタニでスタートセレモニーが行われ、8月17日(土)までの6日間、過酷なクロスカントリーラリーとなります。ラリーの模様は、随時AMWでレポートしますのでお楽しみに。

AXCRに帯同する選抜メンバーのコメント

菅原 上さん

高校課程からCTSに入学し、7年在籍している菅原くん。クルマ好きであったことからこの学校を選んだが、このラリー活動については入学後に興味を持ち始めたといいます。人生経験のひとつとしてぜひ行ってみたいということで今回の選抜メンバーに志願している。「フレームを切ってストレッチをしましたが、失敗も許されませんし、緊張感がすごくありました」とこれまでの作業を振り返ってくれました。

谷本慧悟さん

菅原くんと同じく高校課程から入学している谷本くん。「将来何がしたいかを考え、そこで出た“クルマにかかわる仕事をしたい”という目標に向け、高校の3年間を有意義に過ごしたい」とこの学校を選んだそう。昨年はラリー北海道にも同行し、いい経験になったと語り、今回のAXCRについても「昨年北海道でできなかったことなど、自分の成長を確かめたいです。まだ残り1カ月あるので、しっかり技術を身に着けて現場に入りたい」と語ってくれました。

山本 駿さん

他の友達と比べてあまりクルマに興味がない方で、知識も少なかったから、ということで、少人数のクラスで丁寧に教えてもらえる学校を、とこのCTSを選んだ山本くん。今回のラリー選抜については、せっかくの機会だし、あとから後悔はしたくないということで挙手したそうです。「今でこそ形になっていますけど、途中の試行錯誤の期間は壮絶でした。現地に行ったら優秀な2人(菅原、谷本)の足を引っ張らないように頑張ります」

モバイルバージョンを終了