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アストンマーティンが高騰中! かつての6倍近い約5900万円で落札…ナカミチのオーディオをインストールしたメーカー公認「X-Pack仕様」でした

アストンマーティンが高騰中! かつての6倍近い約5900万円で落札…ナカミチのオーディオをインストールしたメーカー公認「X-Pack仕様」でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

メーカーが公式にX-Packチューニングしたヒストリーつき個体とは?

2024年5月31日〜6月1日にRMサザビーズの「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたV8ヴァンテージは、販売時に添付されるファクトリー・オーダーフォームにも記されているように、ルクセンブルクの著名なアストンマーティン愛好家であり、自称「忠実なアストンマニア」であるユベール・ファブリ氏の好みに合わせてオーダーメイドされたものとのことである。

現存するファクトリー公式資料の数々から、日本の「ナカミチ」社製オーディオシステム、アメリカではおなじみ「Cobra(コブラ)」の盗難警報システム、インテリアとマッチしたナチュラルレザーでトリミングされたカスタム仕立てのチャイルドシート、電動スライディングルーフ、フロントのフォグランプ、ラゲッジフィット、灰皿代わりのグローブボックス。あるいはリアアームレストに代えて、革巻きボトルつきカスタムデザインのリフレッシュメントバーを備えるなど、ファブリ氏がこのクルマを彼の好む仕様に仕立てていった過程が読み取れる。

ところが、前述のとおり1986年モデルからX-Pack仕様が用意されることを知ったファブリ氏は、アストンマーティン本社に手紙を書き、次の点検のためにニューポートパグネルのファクトリーへと戻される際に、自分のV8ヴァンテージをX-Pack仕様にアップデートしてほしい旨を依頼した。

エスティメートを上回る落札価格に

ファブリ氏のリクエストは受け入れられ、1986年3月にX-Pack仕様へのアップデートが敢行された。彼は、1984年にニューポートパグネル工場をプライベートで見学した直後から、注文のプロセス、車両の引き取り、X-Pack仕様へのアップデートに至るまでアストンマーティンの重役との間で膨大な書簡を交わしていたのだが、今回のオークション出品に際してはそれらのレターも添付されていたという。

今回の出品に際して、サザビーズ北米本社は「ボンネットスクープにエアダムスカート、そして独特のV8サウンドなど、アメリカで愛されるマッスルカーとV8ヴァンテージを比較しないのは難しい」という、またしてもアメリカ目線、北米大陸の顧客を意識したと思われる謳い文句を添えて、われわれ日本人からするとちょっと強気にも映る、22万5000ドル(約3550万円)~30万ドル(約4740万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定した。

なお、今回の「The Dare to Dream Collection」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがって、たとえ入札が希望価格に到達しなくても落札されてしまう「リザーヴなし」で出品されることになっていた。

それゆえ一時は数百万円レベル、たとえヴァンテージであっても1000万円以下まで相場価格が落ち込んでいた時期もあったアストンマーティンDBS/V8系モデルだけに、この「リザーヴなし」ではお約束ともいえそうなリスクも充分に危惧されたのだが、いざ競売が終わってみれば、エスティメート上限を大幅に上回る36万8000ドルに到達。

つまり、日本円に換算すると約5900万円という、たとえ現在の円安為替レートを加味して考えても、往時のマーケット相場とは隔絶したかに映る価格で、競売人のハンマーが鳴らされるに至ったのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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