エンツォ フェラーリの市場は高値安定?
RMサザビーズ北米本社は、とあるコレクターの愛蔵アイテムを集めた「The Dare to Dream Collection」オークションを、2024年5月31日〜6月1日にかけてカナダ・トロントにて開催しました。約300点にも及んだ出品アイテムにおいて、フェラーリ製スペチアーレ「ビッグファイブ」がほぼ勢ぞろいとなりましたが、今回はそのなかから1台の「エンツォ フェラーリ」を紹介します。
わかりやすさとダイナミックな魅力のスペチアーレ・フェラーリ
1998年をもって「F50」の生産が終了するや否や、世界中の「ティフォージ(フェラーリの熱心なファン)」たちは、マラネッロが次にどんなエキゾチックなマシンを開発するのか、そして、それがどんな形で出現するかについて、早々に噂話の花を咲かせていた。
彼らの願望が実現の第一歩に至ったのは、2002年4~7月に東京現代美術館で開かれた「アルテディナミカ:フェラーリとマセラティ」展にて、フェラーリ「FX」と仮称された原寸大モックアップモデルが展示されたこと。
そして、同年9月に開催されたパリ・サロンにて、フェラーリのルカ・ディ・モンテゼーモロ社長は次期フラッグシップモデルとなる「エンツォ フェラーリ」を正式に世界初公開し、フェラーリの次世代フラッグシップモデル待望論に終止符が打たれることになった。
「エンツォ」というモデル名については説明するまでもなかったが、モンテゼーモロ会長は、この新ハイパーカーが1999年シーズンから始まった「スクーデリア・フェラーリ」と帝王ミハエル・シューマッハによる前人未到の覇道の真っ只中にあったF1GPと、ビジュアル的にもメカニカル的にも強い結びつきを持つことを強くアピールした。
フェラーリの市販車では初となったシザードアを採用
モンテゼーモロ会長が主張したとおり、エンツォの外観デザインはオープンホイールのレーシングカーの意匠を模倣しているが、フェンダーとコクピットはまるで外皮に包まれたSFロボットのようにも映る。ピニンファリーナの風洞で空力学的に完成されたボディは、カーボンファイバーとケブラーで編まれたパネルで構成されている。
そして、15インチ径の伊「ブレンボ」社製カーボンセラミックディスクブレーキに固定された19インチのアロイホイールと、フェラーリの市販車では初となったシザードアが、シャシーとキャビンそれぞれを完成させた。F50ほど玄人好みではないものの、F1由来の高い技術力と、分かりやすい魅力を備えたスペチアーレに仕上がった。
この驚異的なシャシーとボディの融合体には、新しいV12エンジンがドライバーの背後に配置され、メーカーがスポーツプロトタイプやハイパーカーで長年培ってきたコンフィギュレーションを継承。パワーユニットは、最新の「プロサングエ」を含む、「599」以降のすべてのV12フェラーリに搭載されたティーポF140系ユニットを初めて搭載した。
このバンク角65度のV型12気筒エンジンは、エンツォ用では「ティーポF140B」と命名され、ニカシルライニングを施したシリンダーウォール、チタン製コンロッド、トルクを高めるために設計されたテレスコピック式インテークマニホールドなどのレーシング直系コンポーネントを満載する。
また前任のF50が、パフォーマンスの面で「マクラーレンF1」に大きく遅れをとる結果となってしまったことの教訓から、排気量は5998ccとF50の4.7Lよりも大幅に拡大。最終的に660psと67kgmという、今日の基準からしても驚異的な数値を叩き出した。
そして、ステアリングコラムに取り付けられたシフトパドルで操作する6速F1マティック+トランスアクスルを介してパワーを伝達するエンツォは、停止状態からわずか3.65秒で100km/hに到達し、最高速度は350km/hに達すると公表されていた。