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予想以上の約6.8億円で落札!「エンツォ フェラーリ」の米国1号車は走行距離8600キロ…高値安定を決定づけるハンマープライスでした

予想以上の約6.8億円で落札!「エンツォ フェラーリ」の米国1号車は走行距離8600キロ…高値安定を決定づけるハンマープライスでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

アメリカでの初お披露目に登場した、歴史に残る個体

2002年秋のパリ・サロンにおけるワールドプレミアから4カ月後、フェラーリは、フロリダ州パームビーチで開催された2003年版「キャヴァリーノ・クラシック」コンクール会場にて、シャシーナンバー「130270」のエンツォをアメリカのフェラーリ愛好家の目前でデビューさせた。

このほどRMサザビーズ「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたエンツォ フェラーリは、この初お披露目に登場した個体そのもの。フェラーリの顧客(特にVIP)がもっとも多い主要マーケットで開催される、もっとも重要なフェラーリのエクスクルーシブ・コンクールにおいてデビューしたという歴史的意義は注目に値しよう。

「ロッソ・コルサ」というこのモデルのデフォルトであるボディカラーに、「ペッレ・ネロ(黒革)」の内装と赤いメーターフェイスで縁取られたキャビンが特徴的な、この重要なエンツォは、ニューヨーク在住の不動産王にして、熱心な自動車愛好家としても知られるカイオラ家が新車でオーダーした3台(130270、130688、131026)のうちの1台。キャヴァリーノ・クラシックでの北米デビューを経て、2003年8月20日、ニューヨーク州スプリングバレーにある「ワイドワールド・オブ・カーズ」社を介して、カイオラ・ファミリーに納車された。

フェラーリの研究者がまとめた非公式な集計によると、このエンツォ フェラーリは、2003年から2005年にかけて米国市場で納車された118台のエンツォのうちの最初の1台とのこと。US仕様車であるにもかかわらず、販売したディーラーが2004年に発行したサービスインボイス・ファイルには、フェラーリがこのエンツォにユーロ市場仕様のECUを搭載していたことを技術者が発見し、無償で交換したという事実が記されている。

2006年6月、このエンツォと約3年を過ごしたカイオラ・ファミリーは、ビバリーヒルズ在住のモダンスーパーカーのコレクターに売却した。この2代目オーナーの手によって、このエンツォの軽合金ホイールは魅力的なグロス仕上げのガンメタリックに再塗装され、現在もその輝きを保っている。

その後2008年5月になると、この2代目オーナーはこのエンツォをカナダのアルバータ州にある彼らの別荘で登録したが、当時の画像とサービス履歴によると、実際にはこのクルマは暖かい南カリフォルニアとアリゾナでほとんどの日々を過ごしていたことがわかる。

専用ポーチにはオーナーズマニュアルほか一式が揃う

そして現在のオーナー、「The Dare to Dream Collection」にくわわる直前の2015年1月、このエンツォは「フェラーリ・オブ・バンクーバー」に委託され、2万5000ドルに相当する点検整備を受ける。この整備には包括的な4年点検にくわえて、ウインドスクリーンの新品交換、オイルポンプおよびウォーターポンプの換装。さらに、フロントバンパーの再塗装も施されている。

また2017年7月には1万6000ドル以上を費やして、ボールジョイントや4輪分のスタビライザーリンクを含む、新品のサスペンションパーツでシャシーをリフレッシュ。さらに最近では、2023年2月にフロントエンド全体を保護フィルムでラッピングしたとのことである。

この歴史的なエンツォ フェラーリが現オーナーのもとで走ったのは、約2000マイル(3200km)とのこと。新車から現在に至るまでわずか3オーナーで、オークション公式カタログ作成時の走行距離は、まだ総計5349マイル(8607 km)に過ぎない。

現在ではラゲッジセットやオリジナルコンディションのホイールとタイヤの追加セット(タイヤは2002年の日付入り)、専用ポーチに収められたオーナーマニュアルと保証書、サービスブック、そして純正ツールキットが付属している。

この出品に際して、RMサザビーズ北米本社では「フェラーリの伝説的な“ビッグファイブ”ハイパーカーのギャラリーを完成させたいコレクターにとって理想的なモデル」という宣伝文とともに、375万ドル(約5億9045万円)~425万ドル(約6億6920万円)という強気なエスティメート(推定落札価格)を設定した。

なお、今回の「The Dare to Dream Collection」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件とされていた。通常では比較的安価な出品ロットで会場の機運を盛り上げるために行われる措置ながら、明らかな高価格が見込まれるこの種のフェラーリではあまり見られないもの。

たとえビッド(入札)が希望価格に到達しなくても、競売人が「これまで」と判断すれば落札されてしまう恐れが付きまとうのだが、この日の競売では入札が十二分に伸びたようで、終わってみればエスティメート上限をわずかながら上回る429万5000ドル。つまり日本円に換算すると、約6億7600万円で競売人のハンマーが鳴らされる結果となったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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