コアなファンが世界中にいる
ちなみにレジャーバイクとは、実用的というよりも、クルマに積んでアウトドアで楽しむことも想定したジャンルで、モンキーから始まった。各社からもスズキの「バンバン」など、ライバルが続々と登場してひとつのジャンルとして確立した。実際、モンキーのハンドルは折り畳めるようになっていて、クルマで積載しての移動が可能で、このギミックは「モトコンポ」にも通ずるものと言っていい。
ただ、当初はコンセプトこそ同じだったが、構造は大きく違っていて、Z50M型やZ50A型、Z50Z型と呼ばれる最初期モデルはリアサスがなくてリジットだったり、タイヤがとても小さかったりするなど、遊園地の乗り物的なテイストが色濃く残っていた。その後、1974年に登場したZ50J型で、いわゆる我々がイメージするモンキーとなる。ただし、タンク容量の拡大やクラッチの半自動からマニュアル化、ミッションの3段から4段化、そして電装系の6Vから12Vへの変更など、絶えず進化を遂げてきたのもモンキーの歴史だ。
それゆえ、コアなファンが世界中にいて、各モデルを熱狂的に支持している。もうひとつのモンキーならではの特徴が、大量に登場した特別仕様車で、なかには関東限定の「東京リミテッド」というものまであったり、お馴染みなところでは2014年に出た「くまモンバージョン」も記憶に新しいところだ。
先に紹介したように、モンキーは当初から輸出されていて、西ヨーロッパやアメリカはもちろん、オーストラリアや北欧などでも販売され、現在も愛されている。筆者もドイツ人に「日本に行ったらモンキーを見てみたいが可能か」と聞かれたことがある。じつは初代ゴールドモンキーを筆者は所有しているので「うちに来れば可能」と笑って答えた覚えがある。
初代モデルをモチーフにしたカラーリングが特徴
今回、ヨーロッパとアメリカに拠点を置き、ビンテージのクルマやバイク、パーツを扱うボナムズカーズのオークションで見つけたのは1997年に発売された30周年記念モデル。1967年の初代モデルであるZ50Mをモチーフにしたカラーリングやシート柄などが特徴の、やはりかわいいモンキーだ。ただし、国内のみの販売ということで、日本からなにかしらの方法によって輸出されたのだろう、出品地はベルギーとなっている。日本仕様なのは確実で、写真をよく見るとリアのスイングアームに付く、タイヤのコーションラベルは日本語で書かれている。
さらに驚くべきは走行距離で、メーターが示しているのはたったの1km。奇跡的な1台と言っていい。ただし、実際のところモンキーの特別仕様車はこの類似ケースが多く、数kmというのはネットオークションでもよく出ていて、いわゆる塩漬けものという類だ。
ボナムズカーズのオークションに出ているものも同様で、エスティメート(落札予想価格)は、8000ユーロから1万ユーロ(約136万円〜170万円)が掲げられた。気になる落札価格は1万80ユーロ、約172万円というプライスでハンマーが降ろされた。日本仕様のみで海外では入手困難ということを考えるとこれぐらいの価値はあるのだろう。
ただし日本でこの価格で実際に落札されるのかは微妙で、国内では50万円ぐらい、高くても100万円以内では買えるので、転売屋が暗躍してもおかしくないのだが。また、現在モンキーの部品供給は悪化しているので、乗って楽しむのは厳しいかもしれない。結局のところ、ガレージのアイコンになるのだろうか。