価格とサイズ感がウケて女性にも人気だったアウディ「TT」を振り返る
一時期、一世を風靡するほど街でよく見かけたモデルであっても、気がつくとまったくお目にかかることがなくなっていることはしばしばあります。嫌になるほど目についたクルマも、忘れ去られるのは一瞬。忘れてしまうのは寂しくも勿体ないと、ここではそんな時代を象徴するような人気モデルに焦点を当ててみたいと思います。まずは2023年に3代目で生産終了となったアウディ「TT」に思いを馳せ、どのようなモデルだったのかを紹介していきましょう。
初代から3代目まで、先進的なスタイルで人気を得た
2023年に生産を終了した、アウディのスポーツモデルが、レーシングスポーツの遺伝子を受け継ぎながら「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」を体現したアウディ「TTクーペ」だ。その初代デビューは1998年9月で、日本市場には1999年10月に導入された。
円と直線をモチーフにした低くダイナミックで先進的なスタイリングが特徴で、ボディサイズは全長4060mm×全幅1765mm×全高1340mm。先進的な2+2のインテリア、最終型となった3代目はAudiバーチャルコクピットも大きな魅力だった。
初代のベースとなったのは、初代アウディ「A3」やフォルクスワーゲン4代目「ゴルフ」。そのホイールベースを90mm切り詰め、ワイドトレッド化。アウディA3やVWゴルフとは別物の低重心、ダイレクト感ある操縦性が売りである。日本仕様として初導入されたモデルはアウディ「TTクーペ 1.8T quattro」で、パワーユニットは1.8L直列4気筒DOHC。駆動方式は「quattro」が示すように、アウディ独自開発のフルタイム4WDである。
ライバルはSLKにZ3……
2001年1月には前輪駆動の「アウディTTクーペ 1.8T」を追加。パワーユニットはVWゴルフGTIに積まれた1.8Lターボだが、スペックはゴルフGTIの150ps/21.4kgmに対して180ps/24.0kgmを誇っていた。FFモデルはスポーツカーというよりスペシャルティカーとしてのキャラクターが強いものだったが、1.8T quattro用は225ps/28.6kgmまでパワー&トルクアップされ、スポーツカーとしての性能を追求したモデルと言っていい。
クーペモデルの室内空間は、低く座らせるドライビングポジションと、+2の子ども用/緊急用の可倒式の後席が特徴。ラゲッジルームは後席使用時で270L、後席可倒時で540Lとなる(quattroは同220L/490L)。また、2名乗車となるロードスターも追加されている。
当時のライバルとしては、メルセデス・ベンツ初代R170型「SLK」、BMW「Z3」などが挙げられる。いずれにしても、比較的コンパクトな乗用車ベースのスポーツモデルが全盛だった時代である。