採算度外視で製作された1台
日産車のスペシャリストとして数々のカスタマイズモデルを世に送り出してきたオーテックジャパン。現在は日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社のオーテック事業所と名前こそ変わっていますが、その志は変わることなく日々進化しているのはご存じの通りです。そんなオーテックが2016年に、創立30周年を記念するモデルとして30台限定でリリースされたのが日産「マーチ ボレロA30」です。衝撃的なその中身を振り返ります。
全幅は145mmも拡大
日産「マーチ ボレロA30」は、2代目マーチ時代から続く、ベースにレトロな内外装を与えて人気を集めたオーテックを代表するカスタマイズカーのひとつである「マーチ ボレロ」をベースに、オーテックの技術の粋を集めて作られたもの。採算度外視の匠の技がふんだんに盛り込まれていたのだ。
このA30、特筆すべきポイントは多々あるが、一番インパクトがあったのは全幅が145mmも拡大されたワイドボディだろう。フロントマスクこそ癒し系のボレロ顔となっているが、グラマラスに膨らんだ前後フェンダーは通常のボレロとは一線を画すものとなっている。
このワイドフェンダー、フロントは当然フェンダーパネルが新設されているが、リアフェンダーについてはオーテックの匠の手によって広げられたもの。もちろん給油口も自然な形に形状が変更されており、まさか手作業であるとは分からないレベルのものだ。そして拡大されたトレッドに合わせてボディ補強もなされたほか、トランクスペースにあるスペアタイヤハウス部分をフラット化し、メンバーを追加するなど徹底したボディチューニングがなされていた。
オーテックによるチューニングが施されたエンジン
そして心臓部には「ノート NISMO S」にも搭載された直列4気筒1.6LのHR16DEをベースに、専用のクランクシャフト、コンロッド&コンロッドボルト、カムシャフト、バルブスプリングなどをおごり、シリンダーヘッドのポート研磨までも施したハンドビルドエンジンを搭載。
ピークパワーこそノート NISMO S比で+10psだが、そのフィーリングは完全に別物となっており、600回転高められて7100回転まで許容するレッドゾーンと5速MTの組み合わせは至福の時間を楽しむことができるものとなっていた。
ここまでの説明だと、A30はゴリゴリのハイパフォーマンススポーツモデルのように思えるかもしれないが、じつはグランドツーリング性能を極限まで高めたモデルとなっていた。エンジンはハイチューンながらフラットで扱いやすい特性であり、クラッチも軽め。そして、フロントシートにレカロ社製のLX-F IM110を採用したのもその一環だったのだ。
そんなオーテックの技術の粋を集めたモデルが330万円(消費税別)というロープライスでリリースされたのは、採算度外視で部品代だけプラスした結果とのことで、匠の技による技術料は一切乗せられていないからこそ実現できたもの。
気づけばマーチ40周年まであと2年となっているが、次期A40が登場するとするならば、はたしてどんなモデルになるのだろうか? 今から期待して待ちたいところだ。