レガシィツーリングワゴンにも搭載されたエンジン
一方のレヴォーグはステーションワゴンで、同「レイバック」がクロスオーバーSUVとして誕生した。車名のLEVORGは、“LE”GACY(大いなる伝承物)、RE“VO”LUTION(変革)、TOU“R”IN“G”の3単語を組み合わせた造語。2013年11月下旬の東京モーターショー・参考出品にてワールドプレミア、翌2014年4月中旬に発表、6月下旬に発売。同時期にアメリカで先行発表されたWRXに対し、レヴォーグは日本国内市場を重視して開発・販売された。
初代のVM型(2014年~2020年)は、5代目「レガシィツーリングワゴン」より全長・ホイールベースともに100mm短く、全高を50mm低く、日本の交通事情で取り回しやすいボディサイズに設定。外観デザインはスバル特有の六角形(ヘキサゴン)グリル、鷹の目(ホークアイ)ヘッドランプなどを採用した。
エンジンは1.6L直噴ターボのFB16型を新開発し、レギュラーガソリン仕様に。レガシィツーリングワゴンGT・DITにも搭載された2.0LエンジンのFA20型は、最高出力300ps/最大トルク400Nmを発揮。トランスミッションは無段変速機のリニアトロニック(マニュアルモード付き)で、とくに2.0L用は高出力に対応するスポーツ・リニアトロニック(マニュアルモード付き)を搭載した。
2代目のVN系(2020年~)は、新デザイン・コンセプトのBOLDERが量産車で初めて採用され、ヘキサゴングリルは立体的でワイドなデザインに進化した。初代で2種あったエンジンは当初、新開発の1.8L直噴ターボDITのCB18型のみ設定だったが、2021年11月の一部改良で、2.4L直噴ターボDITのFA24型を搭載したモデルも追加された。
WRXとレヴォーグの類似点と相違点
WRXとレヴォーグには、類似点と相違点がある。WRXは日本仕様のS4と同じプラットフォームを使い、スポーツワゴンであるレヴォーグのセダン版として位置付けられた。似たエクステリアはWRX S4がアグレッシブな印象で、レヴォーグがスポーティな印象を受ける。ボディサイズも似ているが、WRX S4は幅が広く、最小回転半径も大きい。インテリアに共通点も多いが、WRXは従来のサイドブレーキ・レバーがあり、レヴォーグは先進の電動パーキング・ブレーキを採用した。
セダン対ワゴンというボディ形状・剛性の違いから、ネジレやヨレ等に対するフレーム追従性など、細かな点で相違は当然ある。最大の違いは、コーナリング性能だ。足まわりのダンパー、スプリング、スタビライザーの設定が異なり、それに伴う電子制御も同じではない。
レヴォーグの運動性能はスポーツセダン並みに高いが、WRX S4はセダンならではの更なる高次元のコーナリング性能を体験できる。レヴォーグはツーリングワゴンとして高速・直進安定性のチューニングを施すが、WRXはワインディングで楽しめるコーナリング特性も考慮した味付けを施している。乗員の快適性に関しては、WRX S4のリアシートの方がわずかに広く、ラゲッジスペースの積載能力は言うまでもなくレヴォーグが圧倒的に広い。
かつてスバル車の歴史を辿れば、レガシィやインプレッサにも、セダンとツーリングワゴンが存在していた。セダンのWRXか、ワゴンのレヴォーグか……スバルの伝統が推し進めるスポーツモデルの系譜、両車のどちらを選んで推すかは、スバリストを悩ます永遠のテーマなのかも知れない!?