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犬だって車酔いします! 愛犬が快適に車内ですごせるための対策法とは? 30年の経験を元にドッグライフプロデューサーが伝授します

筆者の愛犬とメルセデス・ベンツAクラス

犬が車酔いしない対策を伝授します

愛犬とドライブしたい。そんな思いでいざドライブに出発してみると、どうも愛犬の様子がおかしい。落ち着かず、泣いたり吠えたり、あくびをして、次第に呼吸が荒くなり、大量のヨダレが出て、体が震え出す……。そんな症状があるなら、間違いなく車酔いの症状と考えていいでしょう。それでは楽しいはずの愛犬とのドライブも台無し……いや、即刻、対策を講じるべきです。

そもそも車内環境は犬が落ち着きにくい空間

まず基本中の基本として、「愛犬がクルマに乗ることを嫌がっていないか」である。初めて愛犬をクルマに乗せたときが動物病院行きだったりすると、クルマに乗ることそのものに「怖いところに連れて行かれる」と、抵抗しがち。そもそも車内環境は普段と異なり、犬が落ち着きにくい場所でもある。

その環境の変化が車酔いの原因となり、ストレスに感じることもあるのだ。そのため初めてクルマに乗せるときは、ドッグランやドッグカフェなど楽しい(美味しい!?)場所に連れて行ってあげることがポイント。そうすれば、愛犬は「クルマに乗ると楽しいこと、嬉しいことが待っている」と記憶し、クルマやドライブが好きになるというわけだ。愛犬がクルマに乗ることに抵抗がありそうなのであれば、短距離短時間で楽しい場所に連れて行ってあげて、少しずつクルマやドライブに慣れさせてあげたい。

走行中の揺れや車内のニオイが原因に

車酔いの原因は、人も犬も同じ。耳の鼓膜の奥に「内耳」と呼ばれる平衡感覚などを司る三半規管(さんはんきかん)と前庭(ぜんてい)があり、クルマの揺れなどによって三半規管や前庭に刺激を受けると、平衡感覚や自律神経が乱れ、それが車酔いに繋がると言われている。また車内のニオイも嗅覚に優れる犬にとって刺激になり、車酔いの原因になる可能性がある。

では、愛犬とドライブするに相応しい、車酔いしにくいクルマとはどんなクルマなのか。車酔いの原因として走行中の「揺れ」があるとすでに説明したが、つまり乗り心地がフラットで揺れの少ないクルマが理想となる。カーブなどで大きく傾き、ブレーキング時を含めて前後左右にグラグラ揺れるクルマは避けたほうがよいということだ。

ここで愛犬と暮らして早30年以上になり、愛犬連れのドライブの機会も多いモータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーでもある筆者の、犬と暮らしはじめてからの愛車を紹介すると、その多くはステーションワゴン。ミニバンにも乗っていたが、乗り心地がフラットで安定感に優れていたのはホンダ2代目「オデッセイ」のスポーティシリーズ「V6アブソルート」だった。現在は2代続けてステーションワゴンに乗っている。

とはいえ、SUVやミニバンでも比較的に乗り心地がフラットで揺れの少ないクルマもあるので、プロの試乗記などを参考に選ぶといいだろう。ただし、すでにカーブでグラグラ揺れるようなミニバンなどに乗っている場合は、車種によるが、パフォーマンスダンパーを装着すると改善するかも知れない(COXでさまざまな車種に対応している)。

筆者の先代ステーションワゴンは愛犬のラブラドールレトリバーが10歳になったのを機に、乗り降りがしやすいようにローダウンし、さらにパフォーマンスダンパーを装着。一段と低重心かつ揺れが少ない、愛犬にも優しい走行性能を手に入れたのである。

ちなみにマツダ車に採用されているG-ベクタリング コントロールは、ステアリング修正舵角低減、走行安定性の向上に加え、乗員の揺れを抑えたスムーズな走りをサポートする。乗り物酔いしやすい子どもにも優しい技術として、2016年の第10回キッズデザイン賞を受賞している。わが家の先代ラブラドールレトリバーのマリアをマツダ「CX-5」の後席に乗せてネックレスの動きをチェックしても、揺れは最小限だった。

普段使っているアイテムを車内に持ち込もう

愛犬をストレスなくドライブを楽しんでもらうには、乗せ方も重要になる。すでに犬はニオイに敏感であると説明したが、喫煙はもちろん芳香剤の使用はNG。食事の直後は車酔いしやすくなると言われているので、乗車する1~2時間前に犬の食事を済ませ、軽いお散歩に出し、排泄させてから乗車させるのが基本となる。車内の換気も忘れずに。

愛犬の乗車場所は、エアコンの風が届き、視界が良く、前席の飼い主とアイコンタクトしやすい後席が特等席だ。さらに乗車場所に自身のニオイが染みついたペット用シートマットを敷いてあげたり、お気に入りのベッドを設置してあげると安心してドライブを楽しむことができる。安心=ストレス低減ということだ。

わが家が長年重宝しているのは、ホンダ純正アクセサリー「Honda Dogシリーズ」の後席用「ペットシートサークル」。前後席ヘッドレストにロープでしっかりと固定でき、左右に通気性にも優れたメッシュ窓があるのがポイント。現在はこれにジャックラッセルの愛犬ララ自身のニオイがついたマットレスを敷いている。現在はホンダ車に乗っているわけではないのだが、ホンダ車以外の車種にも対応してくれるのだ。先代愛犬のラブラドールレトリバーのマリアは後席にハンモック状に設置する「ペットシートマット」を愛用していた。ララと2頭でもゆったり快適に過ごせたようだ。

また、愛犬に優しいドライブプランニングも重要だ。2時間に1回は高速道路のSA/PAの緑地やドッグランなどに立ち寄り新鮮な空気を吸わせ、リフレッシュさせてあげたい。エアコンの効いた車内は乾燥しがちなので、水分補給も忘れずに。ペット用水筒や、車内に置いても水がこぼれない水飲み皿を用意するといい。

犬にとって快適な室温は22度

車内の暑さも愛犬の体調を崩す原因になる。愛犬をクルマに乗せる前にあらかじめすべての窓を開け、車内の空気を入れ替えるとともに、暑い時期であればエアコンを作動させ、車内を涼しくした状態で乗せるようにしたい。

暑さ対策としては、愛犬を後席に乗せる前提では、スーパーハイト系軽自動車やボックス型ミニバンなどに装備されるサイドウインドウのロール式サンシェードで日差しを和らげる方法がある。

ロール式サンシェード非装着車は駐車時専用になってしまうが、筆者も使っているセイワのフロントウインドウ用の「ワンタッチサンシェード」とともに、「楽らくマグネットカーテン Radi-Cool」をマグネットで窓枠に貼り付けて使うといい。このサンシェードは一般的なサンシェードより駐車中の車室内温度を10度以上下げる効果があるというから、愛犬のストレス低減、命にかかわる熱中症予防にも効果があると思われる。また、このマグネットカーテンは視界を完全に遮ってしまうので走行中は使用できない。

走行中の後席の遮光、暑さ、熱さ、紫外線対策としておすすめめしたいのは、セイワの「楽らくマグネットハイブリッドカーテン」。カーテン前部約70%部分がプライバシーを守りつつ安全視界を妨げないメッシュ生地で、後部約30%の後席の乗員の頭部、顔の横にあたる部分が遮光生地になっている。

なお、犬の快適温度は22度とされているが、さすがにエアコンの温度設定を22度にしてしまうと、前席の寒がりの乗員はたまらない。そこで威力を発揮してくれるのが、3ゾーンタイプのフルオートエアコン装着車だ。前席と後席のエアコン吹き出し口からの温度設定をそれぞれ独自にできるため、後席だけより涼しくしてあげることが可能になるというわけだ。

車酔いが収まらないようであれば病院へ

そのほか、飼い主にできる愛犬の車酔い対策としては、獣医さんに処方してもらった犬用の車酔い止め薬を飲ませる手もある。最後に、人、犬の車酔い対策の基本中の基本ともなる運転の仕方について。これは想像がつくように、加速、減速、ステアリング操作、カーブの走行ともに、ステアリング、ペダル操作をできるだけ穏やかに、スムーズにして運転すること。

クルマに走行性能が穏やかになるエコモードが付いていれば、エコモードで走ると、より愛犬に優しいドライブが可能になる。高速走行でACCが付いていれば、ACC任せの走行をすることで下手にドライバーがペダル操作するよりもスムーズで愛犬に優しい走行が可能になることも覚えておきたい。

ただ、多くの保護犬を一時預った経験からすれば、どう工夫しても車酔いする犬は重篤な病に侵されている可能性も否定できない。かつて羽田空港で引き取った保護犬のゴールデンレトリーバーは羽田から高速道路を使い、自宅までの約30分の移動でも嘔吐が止まらなかった。翌朝、動物病院に検診に出掛けた際も車内で嘔吐。診察を受けると、ステージ4の癌に侵されていたことが判明したのである。万全の対策を施しても愛犬の車酔いが収まらないようであれば、一度、動物病院で診断してもらったほうがよいかも知れない。

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