オイルパンの中にはあり得ないモノが……
もうひとつの“なぜこんなことに?”の方は、謎のままというか、推測するしかない。チェックのためにオイルパンを外してみたら、何とあり得ないモノがポロポロ出てきたというのだ。僕も現場で見せてもらったのだけど、いや、鳥肌が立った。ちぎれてグニャグニャになったオイルシールのスプリング、ボロボロになったオイルシールのゴムパッキン、それにタイミングチェーンのツメ、その他……。
オイルシール周りの部品については、おそらく新名神で華々しく煙を上げて立ち往生したときのものだろう。あのときにはオイル周りのどこかが壊れたことは直感したけど安全にクルマを停められる場所が見つけられずに少し走ってしまい、そんなこともあって破損したオイルシールの部品の行方なんてわからなくなっていたはずだ。これはオイルパンの中を見ないとどうなっているかわからない類のもので。まさかそんなことになってるとはこれっぽっちも思っていなかったから、オイルパンを外してのチェックはあのときにはお願いしていなかった。いや、ホントのホントに“まさか!”である。
タイミングチェーンが伸びていた……?
そしてタイミングチェーンのツメについては、もっと謎だ。普段は目にすることができない箇所だけどオイルシールの修理をしてもらったときに見える部分だから、少なくともその時点では、まったく問題はなかったことだろう。その後、オイルをほんのりと噴き出させながらもゴブジ号は無事に──無事じゃなかったときもあったけど──走っていて、しかも走るときには結構距離を走っていたわけで、おそらくタイミングチェーンが伸びていたんだと考えられる。その証拠に、タイミングチェーンのカバーの内側に、チェーンが何度か干渉した痕跡があった。そのときに弾け飛んだツメが、どういう弾みかオイルパンの中に飛び込んだのだろう。それ以外に推測できることがない。
いや、でもチェーンがカバーに当たったら音でわかるんじゃないか? これも自分のミスか? ……と思って、さらにズボッと落ち込みそうになった。
「いや、無理ですよ。チンクエチェントって走っているとあっちこっちからいろいろな音がして、すごくうるさいじゃないですか。聞き取れるわけないですよ。無理無理(笑)」
平井社長の言葉で救われた気分になった。さらには助手席のキシキシ音も完全にはなくならなかったけどだいぶ静かになったし、車体側のステーが曲がっちゃっているからフツーに閉めると片側に隙間ができてしまうフロントフードをピッチリと閉めるコツを教わったし、何をやってもサビができてしまう三角窓のステーを次の課題にしようというお話もできて、まぁ気持ちの中の複雑な部分が完全に消えたわけじゃないけど、静岡駅に降り立ったときよりは遙かにマシな気持ちでスティルベーシックを出発し、僕はゴブジ号と一緒にツインメッセ静岡に向かうことにした。
その短い移動時間の楽しかったこと! たった2週間弱ほど乗れなかっただけなのに、やたらと嬉しい。管理者として不甲斐ないことだらけなのに、それを責めることなく健気に走ってくれるゴブジ号が、愛しくて仕方ない。おかげで反省は反省として忘れちゃいけないことだけど、気分はずいぶん上向きになった。本当に不思議なチカラを持ったクルマだな、と思う。もしかしたら僕は、ゴブジ号と離れられなくなっちゃうんじゃないか? そんな気持ちになった。
■協力:チンクエチェント博物館
https://museo500.com
■協力:スティルベーシック
https://style-basic.jp
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