100周年を祝う贅沢なスターティンググリッドに
ドイツ在住でモータースポーツを中心に取材活動を続ける池ノ内みどりさん。2024年で記念すべき100周年となった、スパ24時間レースも取材しています。アップダウンの激しいパドックの様子などをお届けしてきましたが、今回はいよいよ決勝レースの模様をお届けします。スタート前にはファン垂涎のマシンが並びました!
マシンだけではなくドライバーも豪華な布陣
2023年はル・マン、そして2024年はスパ24時間レースがめでたく100周年を迎えました。記念すべき100周年の決勝日をレポートします。
両レースともに第一次世界大戦後の復興期に始まったレースで、途中で第二次世界大戦やオイルショックなど、さまざまな理由で休止があったものの、100年後の現在も続いているレースと考えると非常に感慨深いものがあります。ル・マンやスパで24時間レースが開始したとき、日本は大正時代だと考えると驚きです。
さて、100周年記念のスターティンググリッドでは特別記念ということで、スパ24時間レースの中で歴代最多優勝を飾るBMWがスターティンググリッドに登場。「2000 TI」をはじめ、「3.0 CSL」といった歴史的なマシンを並べ、フォーメーションラップ前には爆音を轟かせてパレードランをしました。
スターティンググリッドにはジャッキー・イクスさんやピエール・ジュドネさん、ヨッヘン・ネアパッシュさんらレジェンドも大集合で、もしもモータースポーツの教科書が存在しているとするなら、歴史の教科書に載っているような方々が勢ぞろいして鳥肌ものでした。
ル・マンやニュルブルクリンク24時間レースのスタートのように、クラス分けされて時差スタートするのではなく、スパ24時間レースでは66台のGT3マシンが一斉にスタートするため、その迫力はとんでもないのです。ましてやスタートしてすぐにオゥ・ルージュの超急高配ですから、ドライバーたちもアドレナリン出まくりでしょう。
私はというと、やはり今年もオゥ・ルージュへ来てしまいました。昨年は観客席の下にいたと記憶しているのですが、今年は直下の縁石の前あたりです。かなり早くスタートグリッドの撮影を引き上げて場所取りへ。レースによってはスタートギリギリに来て、無理やり入ろうとする人もいて、そんなときは大概周りの先に来ているカメラマンたちと揉めます。ですが、今回はそんなこともなく、いつもお世話になっている友人カメラマンたちだったので、お互いに譲り合って撮影をしました。日頃のコミュニケーションって大事ですね。人種や性別は関係ありません。
迫力あるスタートを撮影した後は、スパ名物の登山へ。コースのイン側にはメディアシャトルが通っていて、好きな撮影ポイントまで乗せていってくれるのですが、アウト側は全域徒歩です。電動キックボードを持っているメディア関係者はそれで移動してもいいのですが、それがあったとしても多くの人たちを避けながら乗るのはかなり危険だと思います。私の愛車はトランクも後部座席も非常に狭いので、残念ながらそれらを載せるスペースが確保できないのですが……。
やはり牙を剥いてきた「スパウェザー」
スタートの後はオゥ・ルージュ外側からラソースまで歩きながら撮影です。映像でレーシングカーを観ていてもそんなに速くに感じませんが、至近距離で観ると本当にビックリするくらいに速く、動体視力が付いていかないときもあります。去年はスタート前には雨が降ったこともあり、重装備でのスパの山登りでしたが、今年は蒸していたものの雨のスタートではなくてホっとしたのでした。
天気予報では夜10時頃から嵐だと、地域の災害情報警告が何度もスマートフォンに表示されたのですが、レース開始後の数時間はまったくそんな気配もありませんでした。スパ・フランコルシャンサーキットは森の奥深くにあることから天候がよく変わるため、「スパウェザー」といわれています。
天気予報はあまりあてにならないので、とくに気にも留めていませんでしたが、この日ばかりは大的中! サーキットの上には稲妻が走り、毎年人気のDJイベントも落雷の危険性があるので途中から中止に。肝心のレースはというと……ル・マンの悪夢再び、セーフティカー先導でぐるぐる周回し続けるという、ファンのみなさんにはとっても苦痛な時間がやってきたのでした。
私は少し雨の写真を撮ってから、夜中の2時頃に宿へ戻りましたが、あれだけサーキットはどしゃ降りだったのに、クルマで10分程の宿付近ではほとんど降っていなかったそうです。さすがスパウェザー!