パドックには珍しい車両も多く展示
ドイツ在住でモータースポーツを中心に取材を続ける池ノ内みどりさんが、2024年で100周年を迎えた伝統のスパ24時間レースを取材。パドックには珍しいマシンも展示されていました。希少車などを紹介します!
100年後のレースは一体どうなる?
決勝レースの前日には毎年記者会見が行われ、翌年のレースカレンダーなどが発表されるのですが、なぜか2024年の会場は真っ赤なライティングでムーディな雰囲気。しかし、この会場は会見後にすぐバラされ、決勝レース用のメディアの休憩・仮眠室に大変身したのです。こんな素晴らしいサービスはデイトナでもル・マンでもニュルブルクリンクでも、かつて見たことがありません。
ひとり最長3時間の予約制度で、枕や寝袋は交代のときに洗濯した物と交換してくれるので衛生的です。私の今回の宿はサーキットから近かったためお世話になることはありませんでしたが、夜通し仕事をするメディア関係者もいるので、このサービスは来年以降も継続されることを望みます。
今大会は100周年ということもあり、チームやメディア関係者と100年後のレースはどうなっている? という話題で自然と盛り上がります。身近な一例を挙げると、2024年春に東京で初開催されたFIAフォーミュラE選手権を代表とするEVレースはもちろんですが、ル・マンでは2029年から水素カーのクラスが誕生する予定とのこと。
量販車はもちろん、モータースポーツでも燃料の選択肢が増えつつありますが、2024年のスパ24時間レースでは全66台が100%カーボンフリーのバイオ燃料での参戦となりました。燃料を供給しているフランスのTotal社によると、なんとこのレースウィークだけで16万リットルのバイオ燃料を用意していたそうです。
そういえば、Totalはパレードのときに最近流行りのバケットハットを超大量に配布していました。私もひとつ頂いたのですが、まぁ似合わないこと……。オシャレな方が被るとノベルティのバケットハットも超イケている感じなのですけどね。私は残念な方でした……。また、Total社の燃料の入っていた缶はファンの方に人気で、チームやTotalにお願いして貰って帰る方が結構います。ファンのみなさんの駐車場はサーキットから結構離れているので、いくら中身がカラとはいえ、持って歩くのは大変だったことでしょう。
パドックにはAMGの名車やデロリアンも!
歴史的な節目となったスパ24時間レースのパドックではさまざまなクルマが展示されていましたが、なぜか「デロリアン」も! 一番奥手に展示されていたにもかかわらず、そこを通るほぼ全員が足を止めてスマホで写真撮影。もちろん、私もそのひとりです!
デロリアン自体はたまに見かけるのですが、これは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のレプリカ仕様になっていました。100周年ということで、過去から未来をつなぐ意味も込めているのでしょうか。100年前の第1回大会や100年後のスパ24時間レースのパドックに、このデロリアンに乗って行ってみたいですね。
また、いまや世界的トップブランドに成長したメルセデスAMGですが、元はシュツットガルト近郊の小さな町のチューニングショップが始まり。1971年のスパ24時間レースでは、惜しくもフォード「カプリRS 2600」に負けてしまいましたが、「レッドピッグ(赤い豚)」こと「300 SEL 6.3 AMG」の総合第2位入賞の報は、世界中へ一気に広まり、AMGの名とポテンシャルを実証したのです。
いまもレプリカマシンは大変な人気で、高額で取引されているそうですね。その「レッドピッグ」はメルセデスの展示ブースに鎮座していました。総合優勝ではないマシンが公式プログラムやポスターのデザインになるほどフォーカスされるのは、異例ではないでしょうか。それほどに世間へ与えた影響は大きかったのでしょう。
AMGはドイツ語で「アー・エム・ゲー」と発音し、日本法人では「エー・エム・ジー」として正式に販売されています。いまも「アー・マー・ゲー」とおっしゃるバブル世代以上の方々がいて、それを聞くと昭和から平成初期を思い出させてくれます。いつだったかタレントのRIKACOさんがご自身のYouTubeで愛車のAMGのことを「アー・マー・ゲー」とおっしゃっていた動画を視聴し、久々に聞いたそのワードに懐かしさと微笑ましさを覚えました。