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なぜレース好きが醜いクルマで有名なシトロエン「アミ6」に惚れた? 40年来の仲間3人組でクラシックカーラリーを楽しみました

奥三河を経由し浜名湖を周遊する1968年式シトロエン アミ6

ずっとレース一辺倒だったオーナーが選んだのは、対極ともいえるヒストリックカー

愛知県豊橋市に唯一残る木造校舎の学校跡地で開催されたクラシックカーイベント「ジーロ・ディ・三河~遠州」。約70台の時代もスタイルもさまざまな個性豊かなクラシックカーたちの中でも、ひときわ目立っていたのがこのシトロエン「アミ6」です。早速オーナーに話を聞いてみると、意外すぎる経歴の持ち主でした。

攻めた「クリフカット」デザインのアミ6にベタ惚れ

シトロエン「アミ6」は、独特のフロントフェイスに思わず笑みがこぼれ、リアに回るとクリフカットと呼ばれる切り立ったルーフにまた驚くというデザインをしている。そんな奇怪、いや、ユーモラスな佇まいの1968年式アミ6のオーナー近田直人さんとアミとの出会いは、2019年のこと。「シトロエン100周年展」の準備をしていた名古屋の自動車ギャラリー「アウト ガレリア ルーチェ」で初めて見て、その後SNS動画でヨーロッパの石畳を走るアミ6の姿に心を奪われた。

その後、ルーチェの企画展で流すイメージビデオのドライバーとして実際にアミ6のステアリングを握ってからはもうメロメロ(ご本人の表現)になったという。それからは、縁があったら乗ってみたいと周囲に話していたところ、すぐに友人が見つけてくれて手に入れたのだそうだ。

「それまで自分の手足のように走るクルマばかりに乗っていましたが、アミはめっちゃ遅いけど、幸せな気分にしてくれるんですよね。クルマにはこういう楽しみ方もあったのかと思いました。コーナリングでは、なるべく早く向きを変えて、立ち上がりでスロットルを入れてあげれば、ロールも消したスポーティな走りかたもできるんですよ」

じつはオーナーの近田さんは、アマチュアレースの最高峰であるクラブマンRS(単座席オープンレーシングスポーツカー)レースシリーズでは3度のチャンピオンを獲得しているだけでなく、鈴鹿インターナショナルポッカ1000km RSクラス(Gr.Cカーとの混走レース)でもクラス優勝やインターテックの経験もあるという、本気でモータースポーツに取り組んできた輝かしい実績の持ち主だ。

「アミ6で雨の中を走ればトランクに水は溜まるし、でもそれは古いクルマですので仕方ありません。そんなもんだと、ちょっとしたことでも楽しさに変換できるんですよ」

と、旧車のネガティブともいえる要素も魅力に感じているそうだ。

モータースポーツに携わってきた仲間と3人で遠州三河路をドライブ

ジーロ・ディ・三河~遠州は初回から参加していて今回で3度目だという近田さんの助手席で入念にコマ図をチェックしていたのは、富士スピードウェイの取締役や、スーパーフォーミュラの審査委員長などを歴任してきた、モータースポーツ界の重鎮・柘植和廣さんだ。前日に東京・有明で開催されたフォーミュラE東京大会で役員を務めた後、ここ旧多米小学校に駆けつけ、F1日本グランプリ前の束の間の休息を昔馴染みと一緒に楽しむという。

また、この時代のシトロエンならではのソファのような後部座席に座る鈴木陽一郎さんは、学生時代のダートラに始まり、ツーリングカーのN1やRSレースでの近田さんの仲間であり、鈴鹿インターナショナルポッカ1000km RSクラス優勝時のチームメイト。「コマ図は柘植さんに任せて、僕はサブのコ・ドライバーだから、後ろでゆっくりさせてもらうね」

と笑顔をみせてくれた。

それぞれの立場でモータースポーツに携わってきた40年来の仲間という3人組が、今回はゆったりと遠州三河路を楽しむというわけだ。とはいえ、そこは本気のモータースポーツ育ちのドライバー&コ・ドライバーである。

「おい、インカットし過ぎるから、補正と距離が合わないよ!」

と助手席の柘植さんにブツブツ叱られたりもしながらも、アミ6の車内で昔話に花を咲かせていた。

モータースポーツ一辺倒だった近田さんに、これまでとはまた違ったスローな楽しみ方を、製造から半世紀以上を生きてきたシトロエン アミ6が教えてくれたようだ。

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