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「カウンタック」は「25thアニバーサリー」でも1億円超え! パガーニの創設者がデザインを担当したランボルギーニという価値がそろそろ浸透しはじめた!?

66万5000ドル(邦貨換算約1億400万円)で落札されたランボルギーニ「カウンタック 25th アニバーサリー」(C)Courtesy of RM Sotheby's

ランボルギーニの25周年を祝うカウンタック

2024年5月31日〜6月1日にRMサザビーズがカナダ・トロントで開催した「The Dare to Dream Collection」。約300点にも及んだ出品アイテムのなかには数多くのスーパーカーが含まれていましたが、今回はスーパーカー界のスーパースターであるランボルギーニ「カウンタック(クンタッチ)」。英語圏では「アニバーサリー」、イタリアでは「ユビリオ」あるいは「アニヴェルサリオ」、そして日本では「アニバ」とも呼ばれている、ランボルギーニ社創立25周年記念モデルを紹介します。

レジェンドたちが鍛え上げたカウンタックとは?

ランボルギーニ「カウンタック」というカリスマを十分に理解するためには、その起源である1970年代初頭までの記憶をたどる必要がある。

当時「スポーツカー」といえば「MG」や「トライアンフ」などの旧き良きロードスターがまだ主流を張り、「スーパーカー」という言葉はこのクルマの前身である「ミウラ」のために作られたばかりだった。ドアは通常、外側1方向にしか開かず、ボディはまだ曲線的で、鋭角や「ウェッジシェイプ」はなかった。エンジンも、まだフロントに搭載されるのが普通だった。

そんな世界に登場したマルチェロ・ガンディーニのデザインは、イタリア・ピエモンテ州の方言で「クンタッチ!」というちょっと品のない驚きの表現から名付けられた。でも、クンタッチにとって「型破り」というのは陳腐な表現であり、控えめな表現でもある。これは、真に型破りなクルマだったのだ。

信じられないほど低くて、シャープなボディラインで形成されたその姿は、同じ時代にイタリアのカロッツェリアが制作したコンセプトカーにも似ていた。しかし1974年に生産が開始され、自動車ディーラーですぐに購入することができた。

その生産期間は16年間にも及びながらも、1990年に生産を終了した時にも登場時と同じようにモダンでフレッシュな姿を保っていた。1988年に発表された25周年記念モデルは、ランボルギーニ・ブランドの四半世紀を記念して名付けられた、まさしく「究極のクンタッチ」だったからである。

サスペンションの見直しも図られた

この創立25周年記念モデルは、ホモロゲーションの取り直しを必要とすることなく、可能な限りのリスタイリングが施される。コスメティックや人間工学、メカニックの面で、このモデルは事実上、25周年記念バッジのもと新たに誕生したカウンタックだった。

この記念碑的な開発作業を行うために、当時ランボルギーニ社内のスタッフだったオラチオ・パガーニと、当時は社外コンサルタントとしてランボルギーニに参画していたラリー界のレジェンド、サンドロ・ムナーリに白羽の矢が立てられる。

パガーニ氏はフロントバンパーやリアフェンダーのエアスクープ、テールランプを再デザイン。彼のデザインによるグラウンドエフェクトも意識したリアバンパーが、カウンタック史上初めて装着された。そのかたわらムナーリ氏のテストと監修により、サスペンションの見直しも図られ、前後のタイヤサイズは最大化された。

この変更により、0-60mph(約0-96km/h)加速タイムのベンチマークを0.5秒低下させるのに十分なグリップが得られたと言われている。くわえて、インテリアではクライメートコントロール、パワーウインドウとパワーシートが標準装備化されたほか、シートやステアリングアッセンブリーも刷新された。

もとは中東にデリバリーされた個体ながら、ついに1億円オーバーに到達

このほど「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたカウンタック25周年記念モデルは、シャシーナンバー「KLA12078」。調査によると、1990年7月27日にサウジアラビアの「アル・アジダ・オートモーティブ」社に新車で納車された個体である。特筆すべきは、このカウンタック ユビリオに搭載されるランボルギーニV型12気筒エンジンが、当初よりパワフルなキャブレター仕様であることだ。

その後、2014年に「The Dare to Dream Collection」に譲渡され、そのまま現在に至っているようだが、北米での車両登録履歴をFAXで取り寄せられる「カーファックス」の資料によると、購入時の走行距離はわずか621kmに過ぎなかったようだ

新車としてデリバリーされた際から「ロッソ・シヴィリア(Rosso Siviglia)」のボディカラーに、ロッソのパイピングが施された「シャンパン」レザーのインテリアが組み合わされた、このランボルギーニのオドメーターは、RMサザビーズ社が公式ウェブカタログを作成した際にも、わずか2660kmを示していたという。

2014年に作成されたサービスインボイスによると、このクルマは現オーナーへの譲渡直前にコスメティックの大規模な手直しが行われていたようだ。外観のペイントの色調を一貫したものとするべく、ボディ全体にわたり再塗装され、必要に応じて内装のレザーが補修された結果、こんにちの整然としたエクステリアとインテリアが実現した。また現在では、純正ポーチつきのツールキットとサービスマニュアルも付属している。

モータージャーナリストのジョニー・リーバーマン氏が2022年8月の米『Motor Trend』誌のレポートで述べているように、「カウンタックはスタンスであり、心構えであり、あるべき姿の記念碑である」。たしかにこれは、真のエンスージアストなら誰もが支持する結論だろう。

魅惑的な「スーパーカー」というジャンルにおいて、紛れもないアイコンであるランボルギーニ カウンタックは、そのパワフルなV12エンジンと大胆で革新的なデザインによって、フェラーリやマセラティというライバルスポーツカーメーカーに対抗する真のプレーヤーとして、ブランドを確固たるものにした。そしてパガーニとムナーリは、カウンタックを以前のモデルよりもはるかにドライバビリティの高い、快適な公道走行が可能なマシンへと仕立て直した。

リザーブなしで出品、その結果は?

この出品にあたり、RMサザビーズ北米本社は「25周年記念エディションは、カウンタックの特徴をさらに洗練させ、その奇抜さを増幅させた、究極のスーパーカーである」という謳い文句を添えて、50万ドル~70万ドル(約7476万円〜1億466万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところで、今回の「The Dare to Dream Collection」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがってこのアニバーサリーも、たとえ入札が希望価格に到達しなくても落札されてしまう「リザーヴなし」で出品されることになった。

しかし、そんな「リザーヴなし」で起こりうるデメリットも、真のスーパースターであるこのクルマには関係なかった。競売が終わってみればエスティメート上限に近い66万5000ドル、日本円に換算すると大台を少しだけオーバーする約1億400万円という価格で落札されることになったのだ。

658台という、カウンタック史上もっとも多くの生産台数が計上された(ほかに諸説あり)アニバーサリーは、以前ならば歴代カウンタックのなかでも比較的リーズナブルな相場価格となるのが通例だったはず。また前世紀には、中東に生息していたヒストリーのある中古車は、少しだけ低めに評価される通例もあったと記憶している。

それでも、やはりランボルギーニ全体が高騰状態となっている今、さらに円安まで加味されてしまえば、1億円オーバーもあり得るということなのであろう。

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