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真夏に約10℃も温度をダウン! 日産が研究中の「自動車用自己放射冷却塗装」は車中の暑さの救世主になる!? 仕組みと今後の課題を報告します

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TEXT: 雪岡直樹(YUKIOKA Naoki)  PHOTO: 雪岡直樹(YUKIOKA Naoki)/日産自動車(NISSAN)

  • 塗料のイメージ
  • ライトを当てて温度上昇の違いを確認
  • 過去に日産自動車が実験した際の映像。約8℃の違いがあった(写真右が未施工)
  • 施工車と未施工車を並べて比較
  • 右の未施工車のほうが約11℃高い結果に
  • 取材時、未施工車のボンネットは約45℃
  • 施工車は約38℃だった
  • 日産自動車とラディクール社との関係
  • 今回の自動車用自己放射冷却塗装を開発するに至った経緯
  • 塗料の違いで約12℃も温度が下がったという
  • これまでに行った実験ではルーフパネルで約12℃も温度差があった
  • 羽田空港にて活躍するNV100クリッパーで実験中
  • 電気自動車のSAKURA
  • 軽商用バンのNV100クリッパー
  • 日産自動車 総合研究所 先端材料・プロセス研究所 主任研究員 物理機能材料(メタマテリアル)エキスパート 工学博士の三浦 進氏
  • 実証実験に使われている日産NV100クリッパーと電気自動車のSAKURA
  • 実用化に期待がかかる自動車用自己放射冷却塗装

実用化が実現すれば夏場での快適性がグッと高まる

連日体温を超えるような温度が記録されている日本列島。真夏の太陽がその熱を人体はもちろん、クルマや建物にも容赦なく送っています。当然、日中屋外に駐車しておいた車両も熱くなって触れないほど高温になっていることがあります。そんな車両の温度が、塗装によって-12℃も下がるという実証実験の結果が得られたと日産は言います。はたしてどんな塗料で、効果はどれほどなのか紹介します。

温度上昇を防ぐ仕組みは主に2つ

その塗装は「自動車用自己放射冷却塗装」と名付けられている。開発経緯としては、2017年に自己放射冷却材料について雑誌『サイエンス』に論文が発表されたことが始まり。その論文を目にした、日産自動車 総合研究所 先端材料・プロセス研究所 主任研究員 物理機能材料(メタマテリアル)エキスパート 工学博士の三浦 進氏が注目。独自にこの自己放射冷却材料の開発者を訪問し、共同開発を提案したことが始まりだ。

三浦進さん

三浦氏は2015年時点で物理機能材料である音響メタマテリアルを研究していた。音響波は従来であれば重い物で遮音していたが、軽量な物で遮音するという、物理法則に従わない高い遮音性能を持つ材料の開発を続け、2023年に音響メタマテリアルの軽量遮音材の科学論文を発表するに至っている。

そして次にこの自己放射冷却素材の共同開発に乗り出す。このメタマテリアルとは、「自然界に存在しない物理特性を材料自体ではなく、人工的に実現した構造」と三浦氏は定義している。つまり、自然界では起きえない物理の法則を超越した材料ということになる。

自己放射冷却材料を開発していたラディクール社では、2019年時点でフィルム形態による冷却効果は認められたとのこと。そこで日産自動車は2021年に車両の塗装に使える材料の開発をラディクール社と行うようになった。2022年には厚膜塗料による冷却効果を確認したというから、開発スピードの速さには驚かされる。

塗料の主な成分は樹脂でできており、樹脂の分子は太陽光が当たることで振動を起こし熱を発生させる。これがボディが熱くなる原因だ。この自己放射冷却塗装の仕組みは、塗料の中に2種類のマイクロ構造粒子を投入し、1つは太陽光の成分の中で樹脂の分子振動を引き起こす、近赤外線の電磁波を反射する働きがあるとのこと。もう1つは樹脂の温度が上昇したときに電磁波を出すことで熱を放出する働きをする。

塗料の中に太陽光で熱くなる原因の電磁波を反射する粒子があり、そこである程度の熱を反射させる。反射しきれず熱せられた粒子の中で特定の電磁波が発生し、それを大気に放出することで塗装表面の温度上昇を抑制するという仕組みだ。

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