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真夏に約10℃も温度をダウン! 日産が研究中の「自動車用自己放射冷却塗装」は車中の暑さの救世主になる!? 仕組みと今後の課題を報告します

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TEXT: 雪岡直樹(YUKIOKA Naoki)  PHOTO: 雪岡直樹(YUKIOKA Naoki)/日産自動車(NISSAN)

車内でも効果は体感できた

仕組みに関しては少々難しいところもあるが、取材時、この塗装を施した車両へ実際に触れることができたのでレポートしたい。サンプルカーとして披露されたのは、ANAエアポートサービスが羽田空港の構内で移動用などに使用している「NV100クリッパー」と「SAKURA」。約1年間塗装を施し実際に構内で使われてきた車両である。

実験車両

これらの車両の全面に自動車用自己放射冷却塗装を施しており、取材日の日中、太陽光を浴びる場所に駐車。比較用に塗装が施されていない車両も用意されていた。塗装の施工車両ではボディに触れても「暖かいね」というくらいの感触だったが、未施工の車両では「熱っ!」という触るのも躊躇するくらいの差が……。

SAKURAの未施工車両のボンネットでは45.3℃だったが、施工車両のボンネットでは38.3℃と、約7℃の違いがあった。同じようにNV100クリッパーの未施工車両のボンネットは42.3℃、施工車両のボンネットは35.7℃と、6.6℃の違いだった。

取材撮影時に太陽が雲によって遮られたりしたため、同じ位置にありながら差は出てしまった。しかし、実証実験の中でしっかりとした環境で計測した日産のデータによると、ルーフで12℃の差があり、車内の運転席頭上では5℃の違いが出ているとのこと。

たしかにルーフライナーを触ると施工車両の方が車内もそれほど熱くなっていないのが筆者でも確認できた。屋根の無い空港の駐車場で止め置きされている車両が熱くならなければ、作業する人も乗るのが苦にならないだろう。

まだまだ実用化には課題が残る

塗装だけで車両の暑さが変わるのであれば、どんどん量産車へ対応していけば良いのにと思うが、塗装の中に含む粒子の問題で、塗装の厚みを薄くするのが難しいとのこと。あまり薄くすると自己放射冷却の効果が十分に出ないともいう。

さらに現在では太陽光を一番反射する白にしか対応できていないこと。色付き塗料への反映が難しく、現状では白が一番良いとされているのだ。さらに日産の塗料としての品質基準なども考慮しなくてはならず、実用化に向けては課題が多い。塗装の厚さをコントロールしながら効果を見極めること、色付きの塗装などに対応できるようになれば、量産車への採用も見込めるそうだ。ひとまず職人によるハンドスプレーでの塗装であれば施工が可能なため、救急車や幼稚園バスなどの特装車から手始めに施工を進めていきたいそうだ。

今回1年にわたる羽田空港での実証実験で、毎日太陽光に晒されている空港内車両で塗装の劣化などは見られなかったとのこと。もう少し技術開発が進み、量産車への塗布が可能になれば、酷暑で熱くなったボディともお別れできるかもしれない。そうすれば車内の快適度もあがり、エアコンの効きもよくなるということで、灼熱の夏も楽になることだろう。

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