気になる海外でのレンタカー事情とは
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ドイツのレンタカー」についてです。日本とドイツで違いがあり、予約した車種が出てこないといったこともあるとか……。ドイツでのレースに年間で参戦している木下隆之さんが、ドイツのレンタカーについて解説します。知っておけば欧州旅行の際に安心です!
日本と違いドイツはバラエティ豊かで魅力的
筆者はニュルブルクリンクに全戦エントリーしていることから、日本とドイツの往復生活をしています。そのたびに、フランクフルト空港でレンタカーを借りるのですが、それが楽しみのひとつになっています。
交通網の発達しているドイツですから、レンタカー需要は旺盛のようで、ターミナルには十数社のレンタカー会社が受付カウンターを構えています。取り扱いモデルも豊富です。
日本ではたいがい、トヨタかホンダのモデルが中心です。例えばコンパクトモデルを借りようと思えば、「ヤリス」か「フィット」が相場ですよね。決して安くはないハイブリッドはレンタカー会社のコストに影響しますから、日産「ノート」などは数が少ない。ましてEVなどは皆無です。おのずとトヨタかホンダのガソリン車が多くなるのです。
ですがドイツでは、世界のほとんどのメーカーのガソリン車が揃っています。フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツといったドイツ本国のブランドだけではなく、フランスのルノーやスペインのセアト、イタリアのフィアットも揃っています。日本ではほとんど馴染みのない韓国のキアやヒョンデも少なくありません。ルーマニアのダチアなども選べるのですから、クルマ好きにはたまりませんよね。ワクワクします。
しかも、レンタカー屋は臨機応変に車種を選ばせてくれます。日本のサイトで予約をしますが、予約通りのモデルに出会えることは、むしろ稀です。その日空いているモデルを都合よく貸し与えるシステムが一般的なのです。
「ダチアが空いているけどそれでいいか?」
「新車のパサートが入荷したぞ」
たいがいその場で別のモデルをセールスしてくることが多いのです。もちろんすべてのレンタカー会社がそうだとも言い切れないのですが、僕の経験上、たいがいはそのパターンのような気がします。
ただ、気をつけなければならないのは、金額が変動してしまうことです。相手を信頼して任せていると、高額なレンタカーにスイッチされてしまうこともあります。僕はキッパリと「予約した金額以上は支払わない」と告げるようにしています。それ以上ゴネてくることはありませんから、自己主張ははっきりしましょう。そうしないと、結果的に高額請求されてしまうことも少なくありません。
車両の仕様も確認しないと大変なことになる可能性も
日本とは違いMTも多く普及していますから、MTが苦手なドライバーはトランスミッションの形式を確認することも大切。ドイツの南西は大陸性気候であることから、春先でも降雪に見舞われることがあるため、スノータイヤなのかサマータイヤなのかも確認する必要があります。
日本ではまず揃えのないEVも普及していますので、その確認も忘れないようにしましょう。ドイツをあえてEVでドライブするのも楽しみのひとつかもしれませんが、給電設備の問題や航続可能距離の課題がありますので、よほど興味がある方か、事情に詳しい方以外にはお勧めしにくいものです。
日本で生活していると、セアトやダチアといったモデルに触れる機会はそうそうあるものではありません。せっかくですので、もしドイツに旅行する機会があれば、個性的なモデルをドライブしてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、レンタカーの金額は驚くほどの円安であっても、日本と大差はありません。むしろより安価なようです。最もコンパクトなフィアット「パンダ」やトヨタ「アイゴ」であれば、1日4000円前後です。