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「ミニ クーパー」にイタリア製があるって知ってた?「チンクエチェント」の国がどうして? 500万円で落札された「イノチェンティ」を紹介します

「ミニ クーパー」にイタリア製があるって知ってた?「チンクエチェント」の国がどうして? 500万円で落札された「イノチェンティ」を紹介します

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

ボディカバーは奥さまのお手製! ひとりのオーナーが半世紀愛したミニとは?

1966年に登場したイノチェンティ ミニ クーパーは、1968年秋にMk IIへと発展する。1Lユニットは、本国版クーパーSと共通のカムシャフトや2連装のSUキャブレターなどでチューンを高められ、前輪のディスクブレーキもクーパーS用からコンバート。1968年9月から1970年2月まで、8992台が生産されたといわれる。

そして、このほどRMサザビーズ「Cliveden 2024」オークションに出品されたのも、そんなイノチェンティ製ミニ クーパー 1000 Mk IIのうちの1台だった。

1969年初頭、ジュゼッペ・スゲッリなる人物が新車でオーダーしたこのイノチェンティ ミニは、4月4日にマルケ州ペーザロにて「P83501」のナンバーとともに初めて登録されたことがわかっている。

そののち50年間にもわたってスゲッリ氏の手もとに置かれたこのクルマは、雨に濡れるのを避け、つねにガレージに保管されていたとのこと。また特筆すべきは、付属されていたパッチワークのカーカバーで、初代オーナーの妻が手縫いしたものだという。

じつに半世紀にも長きにわたってスゲッリ家で特別な寵愛を受けてきた結果、このイノチェンティ ミニはノンレストアのまま、エクステリアもインテリアも非常にきれいに保たれているうえに、オリジナル性の非常に高い個体となっている。新車として工場から出荷されたときと同じ、正規オプションの「ハイドロラスティック」サスペンションが残されているのは、その最たる例といえよう。

2019年8月に、今回のオークション出品者でもある現オーナーのもとに譲渡され、英国に輸入されたこの個体には、「イノチェンティ ミニ」としてのファクトリーデータこそ存在しないものの、1969年当時物の、イタリアのディーラーが用意したリブレット(書類ケース)には、クラシックカーとしての正統性が管轄団体から承認されたことを示す「ACI(Automobile Club d’Italia)」および「ASI(Automotoclub Storico Italiano)」のパスポートが添付。またフロントグリル中央には、ASI承認の証である真鍮プレート「タルガ・ドーロ」が装着されている。

くわえて、イタリア国内での登録状況や車両履歴を証明する「エストラット・クロノロジコ(Estratto Cronologico)」も添付されているのだが、それによるとエンジンナンバーはイノチェンティ クーパー Mk IIとしての生産時に使用されたシャシー配列の正しい番号のもの。つまり、マッチングナンバーである。
RMサザビーズ欧州本社が公式ウェブカタログを作製した際のオドメーターは5万3185kmを記していたそうだが、来歴から推測する限りでは、このマイレージは正確なものとみて間違いあるまい。

わずか2オーナーしか所有していない

今回の出品に際して、RMサザビーズでは「ミニ愛好家やコレクターにとって、新車からわずか2オーナーしか所有していない、保存状態の良い個体を手に入れる素晴らしい機会」というアピールを添えて、2万ポンド~3万ポンド(約408万円〜612万円)と、このモデルとしてはきわめて順当ともいえるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして迎えた競売では、エスティメートのほぼ中央値である2万5300英ポンド、現在の為替レートで日本円換算すると約500万円で落札されるに至った。

このハンマープライスは、英国版ミニ クーパー 1000の相場価格と比較すると、いささか安価。もちろん純英国車としての純血性は薄れるものの、たとえばインテリアなどにイタリア独自の魅力があるイノチェンティも、近ごろでは再評価の傾向にあることを思えば、なかなかリーズナブルな買い物だったかにも思われてしまうのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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