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自動車メディアでみかける「オーバーハング」ってそもそも何? 車の性能を語るうえで非常に重要な「用語」をわかりやすく解説します

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: AMW

  • オーバーハングの重量は操縦性に影響する
  • トラックやバスなど、オーバーハングが非常に長いクルマは、交差点などを曲がるとき、反対車線にオーバーハングが飛び出してしまうことがあるので注意が必要
  • 「オーバーハング現象」といい、大型車特有の事故原因にもなっている
  • フロントタイヤの中心より前の部分をフロントオーバーハング、リアタイヤの中心よりも後ろの部分をリアオーバーハングと言う
  • 部品で考えると、バンパーやライト類、ラジエター、エンジンの一部、トランクの一部などがオーバーハングを構成していることになる
  • スポーツカーの運動性を比較するときは「ホイールベース・全長比」を調べてみると面白い
  • BMWが昔からフロントのオーバーハングを短くしてきているのは、運動性能を優先している証拠だ

簡単に説明すると前後の車軸より外側にある部分

「うう、頭が痛てぇ。昨日は飲みすぎた……」というのは、いわゆる「ハングオーバー」(hang over=二日酔い)。では、自動車専門誌やウェブメディアなどで見かけるクルマ用語の「オーバーハング」とはどのような意味なのでしょうか? クルマの性能を語るうえで欠かせない重要な意味を持った言葉でした。

オーバーハングの長さと重さは、運動性能と機動性に直結

「オーバーハング」(overhang)は、直訳すると「突き出ている」「張り出している」状態、および、そのような部分のことを示す。クルマのオーバーハングとは、前後の車軸より外側にある部分のことで、フロントタイヤの中心より前の部分をフロントオーバーハング、リアタイヤの中心よりも後ろの部分をリアオーバーハングと言う。

部品で考えると、バンパーやライト類、ラジエター、エンジンの一部、トランクの一部などがオーバーハングを構成していることになる。そして、オーバーハングの長さと重さは、クルマの運動性能、機動性に直結している。

なぜなら、回転運動をする物体の慣性モーメントは、「出っ張りの重さ×出っ張りの長さ」で決まるからだ。より専門的にいうと、Z軸まわりの回転モーメントは「mr2」。「m」はコンポーネントの質量、「r」は車体中心からの距離で、その車体中心からの距離の2乗に比例する。つまり、車体の先端部=オーバーハングの重量は、かなり操縦性に影響するということ。

「ホイールベース・全長比」で運動性能がわかる

ハンマーを振り回すことを想像してみると、柄の先端をもって振り回すと、慣性の影響で自分も一緒に振り回されそうになるが、ハンマーヘッド側を持って柄のほうを振り回すと、振り回されそうになることはない。同じ重さでも先端が重いか、中心が重いかでは、扱いやすさがまったく違う。

ミッドシップ車の運動性能が高い理由もここにある。FRやFF、RRのように重たいエンジンがオーバーハングにかかっていないため、小さな力でヨーが発生・収束する。そのため、アジリティが優れているというわけだ。こうした理屈から、スポーツカーの運動性を比較するときは「ホイールベース・全長比」を調べてみると面白い。これは「ホイールベース÷全長×100」で計算する。

この数字が大きいクルマは、オーバーハングが短いのでアジリティが高く、数字が小さいクルマはオーバーハングが長いので、機動性がイマイチだと考えていい。スポーツカーでいえば、「ホイールベース・全長比」は55%以上がマストだろう。BMWが昔からフロントのオーバーハングを極端に短くしてきているのも、運動性能を優先している証拠といえる。

しかし、オーバーハングが短いことにも欠点はある。

それはデザイン上の問題だ。クルマ、とくにスポーツカーはウェッジシェイプ、くさび型に先端が尖がっているほうがカッコイイ。車高が低くて鼻先が尖がったクルマを作るには、フロントノーズを伸ばすしかない。でもそうすると、オーバーハングが長くなるわけで……。ここがデザイナーとエンジニアのせめぎあいになるところ。

またトラックやバスなど、オーバーハングが非常に長いクルマは、交差点などを曲がるとき、反対車線にオーバーハングが飛び出してしまうことがあるので注意が必要。この状態を「オーバーハング現象」といい、大型車特有の事故原因にもなっている。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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