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V12でもっとも安く手に入るフェラーリは?「365GT4 2+2」が約730万円で落札…リーズナブルである理由とは

V12でもっとも安く手に入るフェラーリは?「365GT4 2+2」が約730万円で落札…リーズナブルである理由とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

現在の実勢価格はリーズナブル、でもオーナーの経験と覚悟が必須条件

このほどRMサザビーズ「Cliveden 2024」オークションに出品されたフェラーリ365 GT4 2+2は、シャシーナンバー「17545」。1973年末に、当時のフェラーリ英国総代理店「マラネッロ・コンセッショネアーズ」と、そのパートナーディーラーであるロンドンの「H.Rオーウェン」を経由して英国在住のオーナーに納車されるために注文されたものである。

車両に添付されるファイルで閲覧可能な、オリジナルのファクトリーオーダー書類コピーで確認できるように、この365GT4 2+2は「グリジオ・アルジェント(シルヴァーグレイ)」のボディカラーに、ダークブルーの本革インテリアの組み合わせで製造されたとのこと。さらに、フェラーリS.p.A発行の納品証明書によれば、1974年1月までに英国に到着したことが記されている。

1978年までに、このフェラーリはウェールズのカーディフに住むC.D.ヤップという人物によって保有。「383 YNY」のナンバーで登録され、その後1980年代に、ミスC.ボディなる女性オーナーのもと「CDT 400T」として登録されたとの記録が残る。

そののち、シャシーナンバー17545は1997年に某オークションで落札され、その時点では黒ボディに「マグノリア(クリーム色)」のレザー内装が施されていたのだが、それは1980年代後半にレストアされたときに仕立て直されたものと考えられている。またこの時点では、イギリスのプレート「24 NYB」で登録されていた。

その後、このフェラーリはギリシャに運ばれ、アテネの「ヘレニック・モーター・ミュージアム」の展示車両群にくわわったのち、現オーナーのもとに譲渡。そして今回のオークションに出品された。エンジンは現時点でも始動可能ながら、走行前には機械的な点検と整備が必要とのことだった。

今回はリザーヴなしで出品

このフェラーリ365GT4 2+2について、RMサザビーズ欧州本社は6万~7万英ポンド(約1182万円〜1379万円)という、昨今のこのモデルとしては悪くないエスティメート(推定落札価格)を設定。さらにこの出品ロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、確実に落札されることから会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまう落とし穴もある。

そしてこの日のオークションでは、リスクを冒したことが裏目に出てしまったようで、終わってみればエスティメート下限を大幅に下回る3万6800英ポンド、日本円に換算すれば約730万円という、出品者側からすれば不本意だったであろう落札価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

RMサザビーズの公式ウェブカタログでは「次の冒険のためにスタイリッシュなグランドツアラーをお探しの方にも、希少性を増しつつあるフェラーリをお探しの方にも、365GT4 2+2は多くの方を魅了することでしょう」という、かなり楽観的なPRフレーズが記されてはいたものの、この落札価格こそがマーケットの回答と見るべきだろう。

右ハンドルであることは、バイヤーたちの嗜好によっては「希少性」と置き換えることもできよう。でも、これからメカニカルな部分で大規模なメンテナンスが必要な365GT4 2+2であれば、完調に走らせるためには1000万円単位の出費があっても不可解なことではない。

そして、新オーナー自身がフェラーリないしはイタリア製クラシックスーパーカーに対する豊富な経験を有し、しかも常に対処してくれるスペシャルショップが身近にあるという条件を満たさない限り、365GT4 2+2は安易に手を出してよいフェラーリではないと思うのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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