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軽自動車スズキ「アルト」でレースに夢中になる理由とは? 30年のベテランだからこそ「無事故で帰宅する」という重要なタスクを完遂中です

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭(SATO Kei)

  • エアクリーナー以外はほぼ何もできない3クラスの車両規定。だからこそ吸気系はこだわって作り込んでくるエントランドが多い
  • トラブルを未然に防ぐためコイルなどの変更はOKだ。オイルフィラーキャップはレースカーらしく、入念に抜け防止の対策が施されている
  • ロールケージはクラスを問わず必須のアイテム。ステアリングは操作性を重視しバックスキン、シフトノブは金属製の円形をチョイス
  • フルバケットシートは車高調と同じくナビック製。不要なパーツはすべて取り外しているが、まだまだ軽量化できる余地はあるという
  • フロントバンパーの左右に取り付けた、シャークフィンと呼ばれる空力パーツ。ボディ幅には影響せず外観もノーマル風を維持できる
  • サイドシルの後端に整流するための小さな空力パーツを追加する。車速が高いスポーツランドSUGOやウエット路面で効果を発揮しそう
  • シャークフィンはフロントバンパーだけではなく、ルーフとリアクオーターの後端、さらにリアスポイラーの上面にまで装着している
  • リアバンパーの下部は空気が溜まり、抵抗になるのを防ぐためカットするのが定番。レース当日のためナンバープレートは外している
  • 車体だけではなくヘルメットのカラーリングにもこだわる。初参戦から8シーズン目を迎えた2024年、ベテラン山口の戦いに注目したい
  • 中古車が減少し今となっては少数派なHA23だが、山口さんをはじめ熱烈なファンは多く存在。もちろんポテンシャルはまだまだ衰えていない
  • 無理しすぎないのも大きなテーマ。レースの雰囲気や周囲とのバトルを楽しみながら、隙あらば表彰台を目指すのが山口さんのスタイルだ

走りに惚れたHA23アルトで東北660選手権を戦う

新規格のNAエンジン搭載軽自動車などで争われるレースが、「東北660シリーズ」。学生から大ベテランまで、多くのモータースポーツ好きが楽しんでいます。今回は30年以上モータースポーツ活動を続ける、ベテランドライバーと愛車のスズキ「アルト」を紹介します。

大事な相棒「アルト」を長く乗り続けていきたい

学生でも気軽に参加できる「東北660シリーズ」。ベース車両の価格や維持費はリーズナブルであり、改造範囲が狭いがゆえにカスタム費用も安く済む。もっとも、低コストの恩恵を受けるのは若者に限った話ではなく、カムバック組を含む家族を持つ中堅の世代にとっても同様だ。

できる範囲でエントリー費やタイヤ代を捻出し、時にはレースを欠場することもありながら、細く長く続けるエントラントも数多くいる。そのひとりが30年というサーキット歴を誇り、2017年から参戦しているHA23の山口忠伸さんだ。

山口選手

新規格NAによる東北660選手権を知ったのは、東北で耐久レースに参加していた友人からの情報。その後K4-GPにHA23型スズキ「アルト」とダイハツ「エッセ」で参加する機会があり、2台を乗り比べた結果アルトのほうが楽しいと感じたとのこと。そこでHA23をベースに参戦マシンを製作し、2017年は開幕戦からエントリー。ビギナー限定の5クラスとはいえ2位で表彰台に立ち、第2戦からは連続で優勝を遂げてシーズンを終えた。2018年からは3クラスへ移行し現在に至っている。

特筆すべきは7年間で大きな事故もなく同じマシンで戦い続けていること。クラッシュやエンジンブローなどがきっかけになったり、単にほかのクルマが欲しくなって乗り換える人もいるなか、山口さんの相棒は参加者にお馴染みとなったカラーのアルトだ。

一番最初に感じた楽しさは今でもまったく色褪せることはなく、セットアップが進むに従い手足のように操れる感覚も増してきた。それに加えて愛着もどんどん湧いてきたようで、とにかく長く大切に乗り続けたいと山口さんは話す。

セットアップを煮詰め、狙うは久々の表彰台!

レースでは周囲に迷惑をかけないため自分の気持ちを含めコントロールしつつ、予選落ちが当たり前な3クラスで表彰台を目指すことをつねに意識しているという。2024年シーズン第2戦は予選で6番手に食い込むも、決勝で後退し11位でフィニッシュだった。エビスサーキット東コースはHA23と相性がよく、旋回性能を高めるためにいろいろと細工してきたとのことで、本人としては不完全燃焼な1日だったかもしれない。

とはいえ無事に自走して埼玉まで帰るという目標は達成でき、混戦を経験することでドライバーとしての引き出しも増えたはず。外から見ていて感じる山口さんの走りは、ベテランらしく決して無理し過ぎず、周囲の状況をつねに把握していることだ。だからこそ誰かと接触することなく無事故で帰るという、草レースのもっとも重要な目標を完遂できるのだろう。

愛車で気に入っているポイントは、何年も使い続けている、京都のショップ「ナビック(Navic)」によるオリジナル車高調だ。フロント10kg/mm、リア8kg/mmと街乗りも余裕でこなすレートながら、サーキットでは扱いやすくドライでもウエットでも安全に走れる。以前は知人に譲ってもらった某メーカーの特注品だったが、ナビック製のほうが走りやすく感じるという。

もうひとつは試行錯誤しながら進めてきた空力で、きっかけは雨のレースでグリップ感がなかったこと。とはいえナンバー付きで自走している以上、軽自動車の幅を超えるエアロは使えない。そこでモータースポーツやチューニングの本を参考に、試行錯誤を繰り返しながら改良させていくことにした。2本の長いストレートを持つスポーツランドSUGOでは、ウエットでもドライでも空力改善は間違いなく効果があると思われる。

また今後の課題は車高調を活かすタイヤの使い方を覚えること、そしてエアクリーナーをリメイクして吸気の流速を高めること。さらに、軽量化で現在の618kgから600kg台に入れたいとか。すべて達成すれば3クラスの表彰台に立つことはもちろん、5クラスを卒業して以来の優勝カップも手にできるだろう。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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