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たったの240万円!? メルセデス・ベンツ「300 SEL 6.3」が格安だったのはシボレーV8に換装して80年代バブルなエアロを装着した魔改造車だからでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

シボレーV8ターボに、1980~90年代風エアロパーツで大改造

さきごろ、ボナムズ「AMG Rediscovered Online」オークションに出品されたのは、AMG登場以前の高性能メルセデスを代表するモデル「300 SEL 6.3」をベースとしつつも、写真を見れば一目瞭然の「魔改造」車だった。

「バリー・テイラー・コレクション」に属していたこの1971年型300 SELは、「109-018」のシリアルナンバーが示すように、ダイムラー・ベンツ社のジンテルフィンゲン工場で製造された「ホットロッド」6.3モデルの1台として、正規に誕生したものである。

ただし「M100」型V8 SOHCユニットは素晴らしいエンジンながら、修理やリビルドには途方もなく費用を要すると判断されたことから、ある時期にアメリカではありがちなシボレー「スモールブロック」V8 OHVに換装されてしまった。SOHCからOHVに退化するうえに、スモールブロックゆえに排気量も小さくなってしまうが、代わりに大きなターボチャージャー(メーカー不明)がかなり無造作に装着されている。

エクステリアは、グレーのヴァイナルルーフ(レザートップ)を備えたブラックボディに、ブラックアウトされたクロームメッキトリムとバンパーが不穏な雰囲気を醸し出す。さらに、1980年代的に「クールな」タービンスタイルのアロイホイールが装着されるうえに、フロントエアダムやサイドスカート、リアのアンダースカート、そして1990年代風でもあるウイング形状のトランクスポイラーで構成されたカスタムボディキットが装着されていながらも、筆者の私見ではアンバランスな印象が否めない。

いっぽうインテリアは、白いパイピングと黒ビニールの縁取りを組み合わせたチャコールストライプのファブリックシートに、黒いウール風カーペットがあしらわれ、エクステリアのテーマを引き立てている。また、インパネ周辺のウッドトリムもまずまずの仕上がりで、黒い3本スポークの「ナルディ・クラシック」ステアリングホイールが装着されている。

レストアベースとするには、なかなか好適?

テイラー氏のコレクションガレージに属していた際、このメルセデスは屋内に長期静態保存されていたとのことながら、ボナムズ・オークション社の管理下に移されたあとには一度も走行しておらず、エンジンを再始動する前には一定のチェックとメンテナンスが必要とのことであった。

それでも「メカニズムの整備と選別を図れば、このユニークな300 SELには標準的な6.3を凌駕するポテンシャルが潜んでいる」という、かなり楽観的なPRフレーズを添えて、この300 SEL 6.3「改」に、ボナムズ社は9000ドル~1万4000ドル(約131万円〜205万円)という、このモデルのマーケット相場に照らし合わせると、驚くほどに安価なエスティメート(推定落札価格)を設定。くわえて、今回の「AMG Rediscovered Online」オークションの前提条件にしたがって、「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。

この「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、自動的に落札されてしまうリスクも内包している。

そして、6月17日にはオンライン入札が解禁されたのだが、オークショネアと売り手の予測以上に入札が進み、1週間後の24日に入札締め切りとなったところで、エスティメート上限を2000ドル以上も上回る1万6100ドル、つまり日本円に換算すれば約240万円で落札されることになった。

現在の国際マーケットにおけるボリュームゾーンでは5~6万ドル、コンディションの良いものならば10万ドル超えも珍しくはない300 SEL 6.3としては、おそらく最下層に属する落札価格ではあるものの、たとえばメルセデスのベテランコレクターがレストアベースとするには、なかなか好適とも思われよう。

あるいは、ある種の「オモチャ」として入手し、そのまま手を加えることなく、毎年8月に北米カリフォルニア州の「モントレー・カーウィーク」期間中に開かれる「コンクール・ド・レモン(Concours d’Lemons)」あたりに参加するのも、きっと楽しいかもしれない……?

>>>メルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.220を読みたい人はこちら(外部サイト)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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