スカイラインGT-R伝説の源流となった「S54B型 スカイライン2000GT-B」
ハコスカから始まった日産「スカイラインGT-R」の伝説は、市販車をベースとしたツーリングカーレースが好きな方にとっては、欠かせない存在でしょう。197台しか生産されなかった「ケンメリGT-R」。RB26エンジンを搭載する第2世代のR32型~R34型。さらに、スカイラインから独立し、単独車種として現在でも生産が継続されている第3世代のR35型 GT-R。これらの車両に共通する「赤のGT」のエンブレムの先祖が、プリンス「S54B型 スカイライン2000GT-B」です。
生き残った風格が漂うノンレストアボディ
2024年5月5日、子どもの日に熊本県阿蘇郡にある瀬の本高原で開催された「瀬の本グランプリ 2024」にはたくさんのオールドカーが大集合し、その中でノンレストアボディと思わしき当時の面影が残るプリンス「スカイライン2000GT-B」を発見。奥様とイベントを楽しんでいたオーナーさんに声をかけたところ、なんとビンテージカー界隈で有名な福岡県久留米市の「セピアコレクション」の館長である松﨑秀樹さんであることが判明したのだった。
「本当はマツダのコスモスポーツで参加する予定だったのです。しかし、知人からみんなで同じ車種で参加しませんか? というお誘いをいただき、急遽このスカイライン2000GTでやって来ました。手に入れたのは今から41年ほど前になります。前オーナーのもとに通い詰めて、やっと手に入れた車両でした」
20歳の頃にトヨタ「セリカ」や日産「ハコスカ」に乗っていた松崎さん。当時でもすでに中古車となっていたこれらの車両に乗ってみて、旧車の魅力に気づいた。クルマは日々進化を続ける時代だったため、世のクルマ好きの興味は最新車に向くのが普通だったが、松崎さんは流行と逆行するように古いクルマの虜に。少しずつコレクションを増やしていったなかの1台がこのスカイライン2000GT-Bだった。
「手に入れてから手直しした部分はもちろんありますが、ボディはノンレストアで当時の状態のままで残しています。その代わりにエンジンは可能な限り車外品を含めた新品パーツを使って、オーバーホールしました」
ノンレストアだからといって、決してボロボロな状態ではない。むしろ、素晴らしいボディコンディションを維持していることが驚きだった。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)
若かりし頃に旧車に目覚め、コレクションがスタート
セピアコレクションの館長として松﨑さんがこだわるのは、できる限り走行状態のまま動態保存を心がけていることだ。
「30年くらいかけてコレクションしてきましたが、貴重な昭和のクルマを約130台所有しています。そのほとんどが、しっかりと走る状態で維持しています。日本でもトップクラスに入る素晴らしいコンディションの車両を集めたいという思いで続けてきました。車種によっては部品が無いので直してあげられない状態のものもありますが、それで放っておくのは、私にストレスが溜まるのです(笑)」
若かりし頃に立てた目標は、「大きいガレージを建てて、好きなクルマを集めたい」。そのためには、仕事を頑張ってしっかりと収入を得なければいけなかった。20代の頃にその目標を掲げた松﨑さんは、夢を叶えるために事業を開始。それと同時に少しずつ車両を集めたことで、15年ほど前にセピアコレクションとして名車博物館をスタートさせた。
「基本的にクルマが大好きで、その原点はどこにあるのかを遡った結果、当時の軽自動車やオート三輪に辿り着きました。誰もが欲しがる有名なスポーツカーだけではなく、当時の普通の自動車。今となっては現存台数が限りなく少ない車両も所有しているのは、そのような理由です。自動車の生産がオートメーション化する前は、職人さんが手作りで製造していました。工業製品ではありますが、人間の手によって直接作られた、当時の職人芸に対しての畏敬の念もあります」
「開運!なんでも鑑定団」に出演
じつはこの取材の後、松﨑さんより1本の電話が入った。なんとテレビ東京系列「開運!なんでも鑑定団」から連絡があり、「ある希少車」の鑑定依頼が番組側からあったのだそうだ。
「今から18年前の2006年、私が博物館を開始する前に自分のコレクションの鑑定依頼をして、一度番組に登場したことがあったのです。しかし今回は、先方からの依頼で収録に参加することになりました! 所有しているコレクションの価値を認めてもらえたようで、すごく嬉しかったです」
8月13日に放送されたが、TVer(ティーバー)では8月20日まで見逃し配信中。セピアコレクション館長として30年に渡りこだわり集めた「ある希少車」のその価値と、商売としてではなく趣味として、ここまでの車両を所有する松崎さんの熱い思いをぜひご覧あれ!
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