どのフェラーリよりもコントロール性が高かった
カタログモデルのトップレンジとなるフェラーリ「SF90」をベースとした、公道も走行可能な「サーキットモデル」。そのオープントップモデルとなる「SF90 XX スパイダー」にフランスの一般道で試乗しました。サーキットでの走行性能を極限まで高めた1億円オーバーの限定モデル、果たして一般道での走りは?
目指したのはサーキットのラップタイム
最高出力は1000psを超え、価格は1億円を軽々と凌ぐフェラーリの限定モデル「SF90 XX スパイダー」にフランスの一般道で試乗した。SF90 XXを紹介するなら、まずはそのベースとなったSF90について説明する必要がある。
フェラーリは長年V12エンジン搭載車をカタログモデルのトップレンジに据えてきた。そういうと「288GTOやF40はV8だった」という反論が返ってきそうだが、2台はいずれも生産台数が限られた限定モデル。当時もやはり、継続的に生産されるモデルのトップパフォーマーはV12エンジン搭載車が務めていた。
その歴史を変えたのが、2019年に発表されたSF90だった。780psを発揮するV8ツインターボエンジンをミドシップするとともに、2代目ホンダ「NSX」によく似た3モーター方式のハイブリッドシステム(ただし、こちらはプラグインタイプ)を組み合わせることで、1000psジャストのシステム最高出力を達成。最高速度340km/h以上、0-100km/h加速2.5秒という驚異的なパフォーマンスを実現した、文字どおりのスーパースポーツカーだ。
そしてSF90 XXは、このSF90を上回るパフォーマンスを生み出すために誕生した限定モデルである。
もっとも、その最高出力は1030psと、SF90を圧倒的に凌いでいるわけではない。つまり、SF90を上回るといっても、最高速度や発進加速性能で差をつけることがSF90 XXの狙いではなかったのだ。
では、SF90 XXではなにを目指したのか? それは、サーキットでのラップタイムだった。この目標を達成するため、フェラーリはエアロダイナミクスを徹底的に磨き上げ、サスペンションをチューニングしなおし、もともと軽量なSF90の車重をさらに10kg絞り込んだのである。
エアロダイナミクスを徹底的に強化
なかでも注目すべきはそのエアロダイナミクスで、フェラーリのロードカーとしては1995年の「F50」以来となる、独立したリアウイングはその象徴といえる。さらにはリアウインドウ後方のフラップを上下してダウンフォースを可変させるシャットオフ・ガーニー、フロア側のエアフローをボディ上部に導いてダウンフォースを増強するF1由来のSダクトなどを採用することで、SF90の390kgを上回る530kgのダウンフォースを獲得したのである。
そうでなくともサーキット向きにチューニングされたサスペンションは、このダウンフォースの増加分に対応してさらに「ハードなものに変更された」と考えるのが自然である。筆者はSF90にアセット・フィオラーノというハイパフォーマンスキットを装着したモデルに日本で試乗し、その足まわりが「公道を走るにはほぼ限界的な硬さ」であることを知っていたので、SF90 XXの公道試乗に際しては、かなり気合いを入れて臨んだことをご想像いただけるだろう。