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2000万円オーバー! アーマーゲーと呼ばれていた時代のメルセデス・ベンツ「500TE AMG」は世界に1台しかない超希少車でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

おそらく世界で1台の、AMG製V8を搭載したS123ワゴン

今回ボナムズ「AMG Rediscovered Online」オークションに出品された1979年式メルセデス・ベンツ「500TE AMG」は、ダイムラー・グループの1部門となる以前のAMGが一品製作したと思われる、特別な1台。その最大の注目要素は、生来の2.8L 6気筒エンジンから換装されたメルセデス「M117」型V8エンジンである。

この500TEを2020年に逝去するまで愛蔵していた、サンフランシスコの「AMGウェスト」社代表、故バリー・テイラー氏の記録によると、このV8エンジンはAMGによって手が入れられ、標準の5.0Lから5.2Lに拡大されていたという。

創業当初から、車両全体のバランスまで考慮するチューニングカンパニーのひとつだったAMGでは、フロントに搭載された大型V8からの追加パワーに対応するため、サスペンションの改良とホイールも大型化を行っていた。

また、この時代のAMGを象徴するボディキットやブラックアウトされたモールディングにくわえ、当時のBBS製バスケットウィーブ型スプリットリムホイールが装着され、オリジナルの「アストラル・シルバー」のボディに、カスタマイズされた赤い本革インテリアの組み合わせで仕上げられている。

この個体にはなんらのドキュメントも添付されていないながらも、AMGの大家であるテイラー氏がAMGのIDプレートとシリアルナンバーを付けていると主張していたことから、数少ないアファルターバッハ製コンプリートカーである可能性は非常に高い。

そのことを証明するかのように、エンジンルーム内のバルクヘッドを見るとダイムラー・ベンツ社オリジナルのシリアルナンバー「123.093.12.008986」にくわえて、そのサイドにAMGとしてのナンバーが打ち込まれている。

エスティメートを下回る価格で落札

幸運にもこの「500TE」に出会ったことのあるエンスージアストたちによると、テイラー氏はこのクルマをこよなく愛しており、自身のビジネスであるAMGウェストの社用車としても愛用していたという。たしかにその使われ方を物語るように、インテリアなどには明らかな使用感が見受けられる。

また、ボナムズ・オークション社の公式ウェブカタログ作成時の走行距離は8万2894kmだったそうだが、テイラー氏が亡くなってからはガレージ内に保管されていた。

メルセデス・ベンツのエステートワゴンは長い間、熱狂的なファンを獲得してきたいっぽうで、S123は近年ではコンディションの良い個体が少なくなってきているため、コレクターも注目しているようだ。

公式カタログでは「この素晴らしく希少な500TE AMGは、間違いなく私たちが出会ったメルセデスの中でもっともクールなワゴンの1台であり、週末の“カーズ・アンド・コーヒー”で、あるいは子どものサッカーの練習を終えたあとにタイヤスモークとV8サウンドに包まれながら帰るときに、主役になれるポテンシャルを充分に秘めている」という、いかにもアメリカ的なPRフレーズを添えつつ、15万ドル~18万ドル(約2197万円〜2636万円)というかなりの自信をうかがわせるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

なお、今回の「AMG Rediscovered Online」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件とされていた。したがって、たとえ入札が希望価格に到達しなくても落札されてしまう可能性もある。

しかも、エスティメートの段階からけっこう高価だったこともあって、「リザーヴなし」ではしばしば起こりうる安価な落札もオーナー側では危惧されただろうが、実際のオンライン競売ではその不安が的中。

1週間に設定されたビッド(入札)期間中にも大きく伸びることなく、結局エスティメート下限を下回る13万8000ドルで落札されるに至った。

すなわち、現在のレートで日本円に換算すれば約2020万円。現在の慢性的な円安の為替レートではけっこうな高価にも感じられるものの、唯一無二のAMG製スペシャルカーであることを思えば、落札者にとってはなかなかリーズナブルな買い物だったようにも思われるのだ。

>>>メルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.220を読みたい人はこちら(外部サイト)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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