エスティメートの5倍以上という高価格で落札!
このほど、ボナムズ「AMG Rediscovered Online」オークションに出品された1976年式メルセデス・ベンツ450SLC「6.9」は、ダイムラー・グループの1部門となる以前のAMGが一品製作したと思われるホットロッド的チューニングカー。「グリーンマシン」の名で知られるこの450SLCは、ドレスナー銀行で頭取を務めていた人物のために高性能な「コンチネンタル(大陸)エキスプレス」として製作されたと伝えられている。
トランクリッドに「6.9」のバッジこそないものの、当時モノのAMGボディキットやカラーリングされたペンタ型AMGアロイホイール、そして左右フロントフェンダーのタイヤハウス後に新装されたワイルドな四条のサイドベントが、ボンネットの下に潜むものを示唆している。
このクルマに搭載されているのは、フルサイズの「450SEL 6.9」リムジン用の6834cc SOHC V8エンジン。ボッシュ製燃料噴射との組み合わせで286ps/4250rpmをマークし、なんと5速マニュアルトランスミッションを介して後輪を駆動する。
「シルバーグリュン・メタリック」(グリーンがかったシルバー)に、明るいグリーンのヴェロア生地インテリアが映えるこのクルマには、「あの時代」を感じさせる魅力的なアクセサリーが多数装備されている。エクステリアでは、AMGのボディスタイリングパッケージがロングホイールベースのSLCデザインと見事にマッチしており、このクルマのスリムなヨーロッパ仕様バンパーと4灯ヘッドランプもそれを強調している。
いっぽうキャビンでは、ウッドリムのAMG純正ATIWE社製ステアリングホイールや「ブラウプンクト」社の希少な「グースネック」ラジオコントローラー、メルセデス・ベンツ純正のヴェロア生地でトリミングされた「レカロ」社製スポーツシート、メモリー機能つきの電動シートコントローラーに特注のロールバー、さらには冷蔵リアコンパートメントなど、1970年代後期の技術の粋を集めて大幅にアップデートされている。
完全な状態に戻ればポルシェを圧倒するポテンシャルを秘めている
故バリー・テイラー氏のコレクションにあった間、この特別な450SLCは屋内に長期静態保存されていたという。しかし、ボナムズ・オークション社の管理下に移されたあとには、走行や始動はしておらず、エンジンを再始動する前には一定のチェックとメンテナンスが必要とのことであった。
オークションの公式カタログでは「ひとたび完全な状態に戻れば、このグリーンマシンはヤングタイマー・クラシックのコレクションの中で輝きを放ち、アウトバーンで再びポルシェを圧倒するポテンシャルを秘めている」という煽情的なPRフレーズを添えつつ、ボナムズ社は4万5000ドル~6万ドル(約658万円〜878万円)という、ちょっと控えめにも感じられるエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところで、今回の「AMG Rediscovered Online」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件とされていた。したがって、たとえ入札が希望価格に到達しなくても落札されてしまう可能性もある。
しかし、このオークションの告知でもメイン商品として世界各国の媒体で露出されていたせいか、1週間に設定されたビッド(入札)期間中に価格はみるみる跳ね上がり、終わってみればエスティメート上限を5倍以上も上回る34万5000ドルで落札されるに至った。
すなわち、現在のレートで日本円に換算すれば約5200万円。ちゃんと走らせるにはそれ相応の手入れを要するのは間違いないとともに、内外装にもそれなりの使用感があることも合わせれば、価格上昇を抑制しそうな要素はいくらでもあったはず。
それでも一般的な極上モノ450SLCの相場価格の10倍近いハンマープライスとなったのは、「AMG」+「6.9」という「パワーワード」と生来の正統性が、予想よりもはるかに大きな影響力を持っていたとみるべきなのであろう。