小さくなったポルシェ911ダカール
2024年6月28日~30日、名門「ボナムズ・オークション」社がスイス西端のリゾート、シェゼレックスの「Golf & Country Club de Bonmont」を会場として開催した「THE BONMONT SALE」オークション。クラシックカーや近代スーパーカーなど1分の1サイズ、本物のクルマたちが数多く出品されたいっぽうで、子どものために小型化した、いわゆる「ジュニアカー」「チルドレンズ・カー」たちも、複数が出品されたようです。今回はそのなかから、昨今話題のポルシェ「911ダカール」の元ネタ、1984年のパリ・ダカール・ラリーを制したポルシェ「911カレラ3.2 4×4」を模した1台を紹介します。
400ccエンジンを搭載したコレクター向けジュニアカー
昨今の国際マーケットでしばしば話題に上る「チルドレンズ・カー」ないしは「ジュニアカー」は、しばしば呼ばれる「キッズカー」よりは、少しだけ対象年齢が高めのものを指していう言葉。これらのモデルの一部には、モデルとなる「ホンモノ」のクルマの再現度や作り込みの精巧さなど、子ども用のおもちゃの領域をはるかに凌駕し、コレクターズアイテム、ないしはアート作品のレベルに達したものも少なくない。
そして、これらのジュニアカーだけを収集するコレクターは、欧米には数多く存在するばかりか、専門のミュージアムもいくつか設立されており、国際オークションでは重要なアイテムとして取引されていることは、これまでAMWでもしばしばお話ししてきたとおり。そして今回「THE BONMONT SALE」オークションに出品された小さなポルシェ「911」も、そんな大人のコレクター向けの本格的ジュニアカーのひとつといえよう。
このジュニアモデルは、ボディ全面に「スワロフスキー」社製クリスタルを貼りつけたジャガー「Eタイプ」の1/2モデルで話題となった英国「ハーフスケール・カーズ」が製作したもの。1984年のパリ・ダカール・ラリーで総合優勝を果たしたポルシェ911に敬意を表し、あの時代のポルシェをスポンサーとして支えていたタバコブランド「ロスマンズ」のカラーリングが施されている。
ショックアブソーバーを変えると本格的なラフロードも走行可能
キーをひねって始動するセルフスターターつきの400ccエンジンを搭載し、最高出力は15.2ps。最高速度は実に50マイル(約80km/h)にも達するそうだが、子どもを乗せる際には、希望により速度制限を可能としているそうだ。
また、メカニズムにおけるそのほかの特徴としては、ラック&ピニオン式ステアリング、あの「ブレンボ」社製の油圧ディスクブレーキ、ウィッシュボーンとコイルオーバーによる独立サスペンションなどが挙げられる。
これらの高度なテクノロジーが集結し、まるでフルサイズ車のような走りを実現する縮小版911、その一方で最低地上高を高め、ショックアブソーバーをアップグレードすることで、けっこうなラフロードでもスムーズな走りを約束するとのことである。
コクピットには、コノリーレザーとカスタマイズ可能なクロス張りの2つのミニバケットシート、ダッシュボードの計器類、レザートリムの「モト・リタ」社製ステアリングホイールが装備されている。
この911ジュニアカーに、ボナムズ社は3万~4万スイスフラン(約512万円〜683万円)というかなり強気とも思えるエスティメート(推定落札価格)を設定。そのうえで「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
この「リザーブなし」という競売形態は価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、自動的に落札されてしまうリスクも内包している。
そして6月17日に入札解禁されたオンライン入札では、エスティメート下限に近い2万9900スイスフラン、つまり日本円に換算すれば約510万円で落札されたのだ。