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秋発売のスズキ「フロンクス」は走りにちょっと上級感!? 辛口モータージャーナリストがホンダ「WR-V」と乗り比べてみました

秋発売のスズキ「フロンクス」は走りにちょっと上級感!? 辛口モータージャーナリストがホンダ「WR-V」と乗り比べてみました

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TEXT: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)  PHOTO: 宮越孝政(MIYAKOSHI Takamasa)

ステップシフトの6速ATがちょっとした上級感をもたらす

走り出すと、アップダウンに富む試乗コースということもあって、エンジン的にはパワー面でも強い印象を残すようなことがなく、また、なめらかでスムーズだとか、音色が心地よいとか、そういった面においては平凡に思えるものだった。いわば実用エンジンの典型といった性格なのだが、トランスミッションがこのクラスの日本車に多いCVTではなく、6速ATが与えられていることで、なんとなく小気味よい走り感を付加することになっていた。

エンジンの効率の良い領域を使うという面ではCVTは優秀だが、エンジン回転の変化と加速度がリンクしないこと、エンジン音がちょっとした負荷で捉えどころのない変化を繰り返すなど、個人的にはCVTは人の感性に沿った心地よい走り感はなかなか得られにくいと考えている。

ただ、世界の中でも、軽自動車はもちろん、日本車はトヨタのハイブリッド(THS2)の電気式CVTなどとも合わせ、CVTの採用車が突出して多いことから、このフィーリングに慣れてしまっている人も多そうだ。

思えば、フロンクスは日本メーカー製であっても輸入車。ここは異論もあることを承知のうえで言わせてもらうが、CVTではなくステップシフトの6速ATを採用しているという時点で、ちょっとした上級感をもたらす、というイメージは抱いている。

なにより、ホンダWR-Vで、日常域はスムーズで悪くないが、途中のワインディングではエンジン回転を自分の意思通りに保てないCVTがもたらす曖昧さ、もどかしさを味わってきた直後だけに、多段ATとの組み合わせが、クルマを操る感や意思疎通では数段上になると思わせるのだった。

さらにパドルシフトを備えることも、望む時に躊躇なくダウンシフト操作を行えることや、その際の減速度もギアに応じた選択度が高いことなども好ましいと思える。ただし、WR-Vに関していえば、CVTだが擬似多段化を可能にするパドルシフトも備えていることで、こと減速時のエンジンブレーキの使い勝手はなかなか優秀だった。

接地感を手のひらで感じられるステアフィール

今回の試乗では、速度制限と原則としてタイヤのスキール音を生じさせないといった条件が求められていたことから、操縦安定性に関しての評価範囲は限られていたが、その中で感じ取れたことは、このクラスとしてステアリングは操舵力、手応えともに重めなことで、それもあってスーと向きを変えるような軽快感よりも、接地感を手のひらに感じながらノーズの向きを変えていく感覚が強いことだった。

ここは、フロンクスの走りをまとめた開発ドライバーが、「完全に私の好みで決めさせてもらいました」とのこと。これを聞いた時に「そういうのが大事」と思ったのは、走りにもキャラクターを持たせることが大切だと思っているからだ。

ただ、最近の欧州車も含めて操舵力がどんどん軽くなってきている傾向の中では、走り出した直後は、ステアリングが重めだなと思ったのも事実で、ウエット路面では安定感として捉えることができる一方、ドライ路面になってくると、手応えのしっかり感と、ちょっと重いなという印象が混ざることがあった。

FWDと4WDの違いに関しては、車重差が60kgに過ぎないのだが、4WD仕様はわずかだが動き出しに重い感じをもたらす。4WDはプロペラシャフトで後輪へ駆動を伝えるベーシックな機構で、前後の駆動力配分もビスカスカップリングによる。だが、4WD仕様にはヒルディセントコントロールまで備わるなど、配慮も行き届いている。

ヘビーウエット路面からの試乗開始だったこともあり、上り勾配にタイトターンも多いこのコースでは、トラクションは圧倒的に4WDが優れていたのは言うまでもないし、安定して走りやすかったのだが、路面が乾いてくるに従い、FWDの素直なハンドリングが好感をもたらすようになってくる。

ただし、FWD仕様においては、ドライ路面でもコーナーへの進入、あるいは旋回中にも、明らかにまだ安全圏と思えるところで、過剰にESCによるブレーキ制御と出力制御が介入してくることを多く経験した。開発ドライバーも「このコースでその現象は現認できているので、制御を含めて確認する」とのことだった。こういう時、発売まで間があるのは幸いというべきだ。

この仕上がりなら新たな市場を切り拓く可能性あり

タイヤサイズは195/60R16 89Hと、カッコ重視のクーペSUVながらも無闇に低偏平大径化していないのは、インド等主要仕向け地の事情なのか、車両側の都合なのかは不明なのだが、最小回転半径にこだわったという話はあったので、そこが関係しているのかもしれない。ちなみに最小回転半径はFWD、4WDともに4.8mで、全長もホイールベースもより短い新型スイフトと同等を確保しているのはたしかに立派だろう。

全長4m以下というコンパクトサイズでのこのクーペSUVは、その仕上がりからも日本でも新たな市場を切り開く可能性を感じさせたが、とくにこのクラスにおいては価格が重要なファクターだ。

開発担当者に予定価格を訊ねても、この時点では当然答えてもらえなかったが、逆に「おいくらくらいなら良いと思います?」と聞かれたので、「FWD仕様、この装備内容で250万円くらい」と答えさせていただいたのだが、最近の情報では、どうやらまさにそのあたりらしい。これはちょっと面白くなるかもしれない。正式に発売された車両での試乗が待ち遠しく思えている。

■specifications

SUZUKI FRONX Prototype(2WD・6AT)
スズキ フロンクス プロトタイプ(2WD・6AT)

・全長:3995mm
・全幅:1765mm
・全高:1550mm
・ホイールベース:2520mm
・車両重量:1070kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHC
・排気量:1460cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:FWD
・変速機:6速AT
・エンジン最高出力:74kW(100ps)/6000rpm
・エンジン最大トルク:135Nm/4400rpm
・モーター最高出力:2.3kW(3ps)/800-1500rpm
・モーター最大トルク:60Nm/100rpm
・燃料タンク容量:37L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)トーションビーム
・タイヤ:(前&後)195/60R16

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