ド派手なエアロと570馬力の3リッターエンジン
スーパーカー慣れした筆者であっても、乗り込む前から緊張を強いられた。乗り込むと、タイトなシートに挟まれて緊張のボルテージはさらに上がる。野太いサウンドで570psが目を覚ませば、じっとしていることがかえって辛くなってきた。
重めのクラッチを慎重にリリースし走り出す。動き出した瞬間から“軽い”と思った。太いタイヤをものともせず、むしろギュッと引き締まった状態で走り始めるのだ。
トルクの盛り上がりが凄まじい。ノーマルエンジンでは早々にフラットに転じる1000回転をすぎたあたりでも、まだまだ伸びていこうとする。最初はちょっと怖くなってアクセルペダルを緩めてしまったほど。もちろんエンジン回転もリニアでかつ軽やか、綺麗に高回転域まで力を増やしながら伸びていく。突き抜けようとする感覚が素晴らしい。
パワーフィールにばかり驚いていてはいけない。このクルマの妙味はやはりボディサイズを活かしたハンドリング性能にこそあった。
なんといっても後輪にかかる駆動が恐ろしくパワフルで、かつ出し入れの自由度が高い。またクイックなステアリングの動きにも機敏に反応するから、アクセルとハンドルの動きひとつで後輪はキレイにブレークする。ときおりトリッキーに滑るが、それは2シリーズの短いホイールベースならではで、それを予測しながらステアリングワークを楽しむというのがこのマシンの基本的な扱いだろう。
これだけのハイスペック(特にパワーウェイトレシオ)を誇るFRの比較的コンパクトなスポーツカーを公道で滑らせてなお踏み込んでいくだけの胆力は流石にない。けれども、その入り口を味わうだけでも、先の世界は容易に想像できるというもので、ACシュニッツァーのチューニング奥義の深さを実感した。