スーパーカーからレア車まで新旧イタリア車が南ドイツのミュンヘンに大集合
ドイツ在住でモータースポーツを中心に取材を続ける池ノ内みどりさん。今回は、南ドイツ・ミュンヘンで開催されたイタリア車のイベント「ベッラ イタリア」へ向かいました。会場には、世界にたった1台しかない超貴重なマシンやフィアット、アバルトなどが大集合。まるでイタリアにいるかのようなイベントをレポートします。
クルマとカルチャーのエンターテインメント施設「モーターワールド」で開催
バケーションシーズンまっただ中の真夏のヨーロッパ。真っ青な空に白い雲が美しいカラリと晴れた南ドイツのミュンヘンで「ベッラ イタリア」なるイタリア車のイベントが開催され、まだひんやりとした空気感が気持ちのよい爽やかな朝に、自宅からママチャリを漕いで駆け付けました。
駐車場へ踏み入れた瞬間ににぎやかな熱気があふれていて、思わず笑みがこぼれてしまいます。昨今のドイツ車は黒、グレー、シルバー、白が主流で、カラフルなクルマはさほど多くなく、青空に映える色とりどりのクルマにワクワクします。このベッラ イタリアが開催された「モーターワールド(MOTOR WOLRD)」は、ドイツを中心にヨーロッパに急拡大中のクルマとカルチャーのエンターテインメント施設。ミュンヘンのモーターワールドは、1916年から稼働をしていた旧ドイツ国鉄の機関車の修理・整備工場跡を活用し、趣のあるリノベーションが施されています。
新型コロナウイルスの蔓延と感染拡大防止のために工事が遅延したこともあり、構想から開業まで12年もの年月がかかったそうです。中にはバーやレストラン、ミニカーショップ、ライフスタイルショップ、もちろんマクラーレンやブガッティ、ロールス・ロイスをはじめ、超ラグジュアリーブランドの正規ディーラーやショールームも入り、ステキなホテルも併設されています。365日オープン、入場料は無料という太っ腹の施設です。
ドイツなのにチンクエチェントが一番人気?
モーターワールドの駐輪場に一旦ママチャリを駐輪しようと思いながら向かいましたが、そこに辿り着くまでもなかなか先へ進めません。なぜなら、会場の外にはあふれんばかりのイタリア車が所狭しと並んでいるのですから! こんなにたくさんの新旧のイタリア車を目にすると、その美しいデザインに、クルマにとくに興味のない方でも心躍るのではないでしょうか。屋外のDJブースではイタリアの人気歌手エロス・ラマゾッティをはじめとするイタリアの流行りの曲がエンドレスに流れ、イタリア感を盛り上げます。朝こそ涼しかったものの、日中はイタリア並みの日差しと気温に汗が滴ります。
自動車大国のドイツでイタリア車? そんな風に感じられた方もおられるかも知れませんが、たとえば、フィアット「500」はイタリアよりもドイツの方が販売数では何年もはるかに勝っているというフシギな状態なのですよ。少なくとも私の住むミュンヘンでは、毎日あちらこちらで500を見かけます。イタリア人男性の平均身長がほぼ日本人男性と同じ172.2cmに対し、ドイツ人の平均身長はかなり大きな180cm。コンパクトなイタリア車に無理やり乗り込んだ感が否めない体形の方もいらっしゃいますが、窮屈さなんか苦じゃありません。500は老若男女に大人気なんです!
気分はイタリア! 陽気な音楽に気さくな人々
会場では、とくに旧車のオーナーさんはイタリア風のファッションに身を包んでおられる方を数多く見かけました。ミュンヘンにお住まいのイタリア人でしょうか、会場ではイタリア語をあちらこちらで耳にし、ミュンヘンにいながら気分はイタリアです。モーターワールドの館内では「オー・ソレ・ミオ」や「フニクリ・フニクラ」(日本では鬼の穿いているパンツで有名ですね!)が流れる中、ゆる~い雰囲気でオーナーや見学者がイタリア車やイタリアにいるような雰囲気を楽しみました。
イタリア車のオーナーらは、モーターワールドの建物内でのパレードランが可能とあり、愛車を駆って会場を沸かせました。友達同士で誘い合って来た中高生らしき少年少女たち、いまでこそ旧車となってしまいましたが、当時は最新モデルだった愛車で青春を過ごしたであろうシニアまで、幅広い年齢層の方々が集いました。他人同士でも「ステキなおクルマですね」から会話が始まり、「ステキな1日を!」と言葉を交わして笑顔でお別れする、このヨーロッパのなごやかな雰囲気が大好きです。
現在も会社組織としては残っているようですが、かつてフィアットグループがNSUとともにファクトリーを稼働し、1931年から1973年までドイツのネッカースウルムやハイルブロンの工場でフィアット「522」をはじめ、「トッポリーノ」など数多くのモデルが製造されたそうですが、もしかするとこの会場にいらっしゃった方で、最後の1970年代初頭にそれに携わっていらっしゃった方もご来場なさっていたのかも知れませんね。