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JAF公認なのに自分の愛車で誰でもエントリーできる! 往年のレジェンドも参加している「関東デイラリーシリーズ」を紹介します

ランチア デルタ HF インテグラーレ エボルツィオーネII

夢のWRC参戦への第1歩、JAF競技ライセンスも取れる

FIA主催の世界ラリー選手権(WRC)の1戦として「ラリー・ジャパン」が2022年から復活し、2024年も11月の開催を目前に控え、「ラリー」という競技への関心が高まっています。大迫力のラリー競技ですが、見るだけではなく、自分でもチャレンジしてみるとまた新たな楽しさが広がります。とはいえ、どうやってラリーを始めたらいいのか知らない人も多いでしょう。そこでビギナーが自分の普通のクルマで参加できて、ラリーの基本を学べて、さらに競技ライセンスも取得できるイベント、「デイラリー」を紹介します。

フランスで始まった自動車のラリー

クルマ好きにとっては驚きでもありますが、「ラリーってなんなの?」ということがよく言われます。パリ・オリンピックも終わりましたが、バレーボール、テニスなどでもよく聞く「ラリー」。かと思えばアメリカ大統領の選挙戦でも「ラリー」が進んでます。ラリーとは、何度も繰り返される応酬でもあり、人々の集結でもありますが、いずれにしても自動車競技に由来する言葉なのです。

自動車競技として命名されていった「ラリー」は、1911年に始まったフランスの「モンテカルロ・ラリー」が初と言われています。数日間の戦いを繰り広げる競技車が何度もスタートやゴールの拠点である地に帰還してくるイベント形態は、中世ヨーロッパの騎士たちが親分の領主のもとに集まっては戦いに繰り出し再び戻ってくるスタイルになぞらえたものと言われています。

モンテカルロ・ラリーは競争に臨むクルマでヨーロッパの各地からモナコ王国に集結した者たちが、フランス地方のいろいろな峠を走り越え巡るルートに繰り出しての競い合いを経て、再びモンテカルロに戻るイベントとして始まったのです。

日本でいえばその昔「いざ鎌倉」という想いとともに馳せ参じる武者たちがいたといいます。昭和の時代に日本でも始まったラリー競技は、当時まだまだとても貴重だった自動車をもって展開されてきました。参加クルーたちはまず、それぞれのクルマを愛でながら集結地点に落ち合えた喜びのなか競技をスタートし、辛苦の長距離走行を経てゴール後の再会の喜びを分かち合う、そんな想いに満ちた競技が育まれていったのです。

さて、世界で一番有名なラリーといえばWRC(世界ラリー選手権)。シリーズ全13戦が世界各国をめぐって戦われているそのラウンドのひとつ、ラリージャパンが、自動車産業立国たる日本での12年ぶりの開催となった2022年から、2024年で3年連続開催となります。日本での開催が繰り返されることによりラリーに対しての関心が高まっているのは確かでしょう。

開催地は、世界屈指の自動車会社トヨタのお膝元愛知県と、隣接する岐阜県、近隣地域の市町村を拠点としたもの。全国各地から観戦応援に駆けつけてくる一大イベント「ラリージャパン」はシリーズの最終戦として2024年11月21日にスタートします。

憧れの世界イベント、実戦を観戦して壮絶なラリー車のかっ飛んでゆく姿を目前に見ると酔い痴れるものです。これが街中を走っているトヨタ「ヤリス」からの化身マシンなのかと驚くばかり。しかし公道を走るクルマで生まれてきたスポーツだけに、世界戦であっても誰でもが参加できる車両のクラスがあるのがWRCです。F1のような限られた台数の特殊マシンでの興行とは違って、開催各国の地元参加者がイベントを盛り上げもするお祭りなのです。

ラリー体験をしながらライセンスを取得できる

この憧れの夢の競技に参加したいとあれば、モータースポーツ競技を統括している団体から参加してもいいよという許可を得なければなりません。その許可証が「競技ライセンス」で、これを持つドライバーが参戦できるのです。日本ではJAF、日本自動車連盟が発行しています。

競技ライセンスの第1歩である国内ラリーに出場できるライセンスが国内Bライセンスというもの。頂上の国際イベント、WRC参戦には国内競技への出場実績をもって国際Cライセンスを申請取得することが必要となるので、モータースポーツをしてみたいひとはまずBライセンスを取る、ということになるわけです。

一般的に競技ライセンスの取得は講習を受けてのものがありますが、ラリーイベントに参加して申請すれば得られる、それがこの「デイラリー」です。モータースポーツ競技に入門したい人にとっては、ラリー体験とともにライセンスが取得できるだけにまさに一石二鳥。ラリー参戦の基礎技術、知識などを固めてゆくにも、絶好の場ではないでしょうか。

どんなクルマでも2人以上であれば参加可能

すでに10数年の歴史をもつ「関東デイラリーシリーズ」は、関東北東部や福島エリアを中心に展開されています。2024年はシリーズ全5戦が組まれ、7月21日に開催された第3戦は福島県東白川郡鮫川村の鹿角平観光牧場を拠点とした100kmほどのルートが舞台。当然ながら自動車運転免許を持つ人であれば、ラリー競技車でなくても自分のクルマで、もちろんどの地方からでも参加できます。車検を通っているクルマならば、セダンはもとより、トラック、ミニバン、SUVなど、どんなクルマでも2人以上、最多乗車定員数までの人数であれば1台で何人でも競技に参加できるのです。

参加者をざっと見ると、ラリー登竜門として参加しているであろう関東工業自動車大学校(関東工大)ラリー部の若き面々。23歳のドライバー渡邉公輔さんに、3人のナビゲーター、山根孝了さん(21歳)、古澤優太朗さんと 石井璃玖さん(ともに18歳)が乗り込むスズキ「スイフトスポーツ」がありました。後部席にも2人乗って4選手での参加というわけです。

参加車種の自由度は1号車の4WDオフロードカー、スズキ「ジムニー」を見ても歴然。SUVのマツダ「CX-5」、トヨタ「ハリアー」、商用車ダイハツ「ハイゼットカーゴ」もいれば、人気のあるコンパクトなスイフトスポーツはもとより、往年のスバルの名車「レガシィ」から「ヴィヴィオ」、ホンダ「インテグラ」、ランチア「デルタ インテグラーレ」、ローバー「ミニ」もありにぎやか。販売開始年が1989年以前のクルマで参戦というLクラスには、ホンダの2代目「シティ」やいすゞ「ジェミニZZ-R」、トヨタAE86「スプリンタートレノ」など、そうそうたる走り屋のクルマたちも。

参加者の中にはレジェンドの姿も!

2台のランチア デルタ インテグラーレ。一方のドライバーはなんと、今回最年長でもあった岩瀬晏弘さんではありませんか! 1993年、ワークスマシンのトヨタ「セリカGT-FOUR」で、時速150km/hオーバーの荒野巡行も多々あるWRCの過酷なサファリ・ラリーで4位となる歴史的偉業を遂げている岩瀬さん。ラリー界の重鎮が至って朗らかで寛容なチーム参戦で、ゆったりとしたアベレージ走行のこだわりを楽しんでいる、と見受けられます。

先述したジムニーはベテランの飯田好範さんで、デイラリーシリーズ最終戦では運営側に回る主催クラブの長老。今戦の「MSCCラリー in 鮫川」は由緒あるマツダスポーツカークラブの主催であり、競技長として運営にあたっている遠藤 彰さんといえば、1991年全日本ラリー選手権チャンピオンである山内伸弥さんのナビゲーターとして自身もチャンピオンとなっている方で、クルマは知る人ぞ知る懐かしの三菱「ギャランVR-4」でした。こんな具合のデイラリーだけに、他のシリーズ戦では主催者側に回るメンバーたちも散見される、フレンドシップあふれているシリーズなのです。

デイラリーシリーズの競技はアベレージ走行を競う

モータースポーツに興味があるという方であれば、現在ではWRCのゲームやeスポーツに参加しているかもしれません。さらに「ラリー」のリアルを求めたくなったなら、気兼ねなくちょこっと現場に踏み込んでみるのはどうでしょう。スポーツでは誰にでも憧れの選手がいたりします。夢であっても世界一、日本一、少しでも上達したい欲望が生じるものです。夢と現実を結んでいく生きがいがあれば、より楽しい世界が広がるはずです。

目標がスピードを競う最高峰のラリーであっても、まずはJAF競技ライセンスを取得しなければなりません。デイラリーはこんな時には絶好の参加イベント。関東各地の由緒あるクラブたちが10年以上にわたって主催し続けているJAF認定のシリーズだけに、初心者にとっては、集っているラリー経験豊富な先輩たちに会えるまたとないご利益もあるでしょう。

デイラリーシリーズの競技はアベレージ走行を競うもの。公道でのクルマを使ったスポーツとして、安全走行を徹底しながら、競技区間における指示された平均速度走行を通して評価されていきます。ルートに点在するチェックポイントの競技車の通過タイムをオフィシャルが計測し、指示されたアベレージ走行ができているかどうか、正確な通過時間との秒差の違いがどれほどあるのかを捉え、その累計値の少なさが競われます。アベレージラリーはそんなスポーツです。

モータースポーツの第1歩にオススメ

オリンピック競技のひとつである馬術では乗馬しているジョッキー1人が馬を操り課題を乗り越えますが、クルマを操作し競い合うスポーツのラリーでは、乗車している乗り手は2人。また1人のドライバーがマシンに乗りこんで競い合うレースとも違います。ペアで競う競技もまた、バドミントン、卓球などいろいろありますが、ラリーでは競技者2人に加えてクルマもいっしょに戦っています。

マシン特性の理解、走行速度に関わるドライブテクニック、走行ルートの状況判断をともなうナビコミュニケーション、突き詰めるものはいろいろとありますが、それだけ楽しめる側面が多く、こんなスポーツはなかなか無いように思われます。

車内にめぐらされたロールバーがなくても、ラリーコンピューターがなくても、ノーマル市販車のままの自分のクルマであっても参加できる、ラリー初心者、入門者に最適でもあるデイラリー。今シーズンは残り1戦。茨城県常陸太田周辺で展開されるターマックラリー(10月13日)があります。

世界各地に広がっているモータースポーツのラリー。第1歩としてまずは競技ライセンスを取る。デイラリー参加でそれができるなんて、座学の講習で取得するのとは違った、何かいいことがあるに違いありません。

JMRC関東デイラリーシリーズ(外部サイト)

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