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ポルシェ「911」初のハイブリッド車「カレラ GTS」の走りとはいかに?「大パワーのNAエンジンのようでいて、前期型ターボに迫る速さ!」

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TEXT: 藤野太一(FUJINO Taichi)  PHOTO: Porsche AG

パワーアップ分はハイブリッドでまかなう

7月初旬、スペイン・マラガで開催された国際試乗会において、911初のハイブリッドモデルのステアリングを握ることができた。GTSを見分ける最大の特徴は、フロントバンパーの左右に5本ずつ配された縦長のフラップ。内側にも別のフラップが備わっており、ブレーキまわりやアンダーフロアへの整流、またウエットモード時の雨水の流れなどを統合制御する。高速巡航時など必要なパワーが最小限の場合は、フラップを閉めてエアロダイナミクスを最適化し燃費を低減。サーキット走行など冷却効果を高める必要があるシーンではフラップを開きラジエターに空気を送り込むなど走行状況に応じて自動で作動する。

インテリアデザインは基本的には前期型を踏襲したもの。大きく変わったのは2点で、1つめは、メーターがついに12.6インチの曲面フルデジタルディスプレイになったこと。911伝統の5連メーターをはじめ、全体をナビ画面にするなど表示は7パターンから選択可能。2つめは、エンジンの始動をスタート/ストップボタンで行うようになった。911ではこれまでキー(キーレスが導入されてからはノブ)をひねってエンジンを始動するポルシェ伝統の所作が受け継がれてきたが、いまや一般的なボタン式になった。

ボタンを押すと瞬時にエンジンが目覚める。始動時の音量は前期型よりも少し抑えられたように感じた。アクセルペダルをゆっくりと踏みこむと、アイドル回転数からモーターがアシストしてくれるだけあってターボラグなくなめらかに加速する。中央のメーターを見ると、回生時には左側にグリーンの、アシスト時には右側にブルーのバーの表示が伸びる仕組みになっている。一般道を走行している場面は2000〜3000回転まではアシストするが、それ以上の回転域では駆動は内燃エンジンにまかせて主に回生を行う。先述の電動ターボも使って回生するため、アクセルを踏んでいるのに回生するシーンがあるなど制御はとても複雑なもののようだ。したがってメーター表示ではグリーンとブルーのバーが左右にひっきりなしに伸縮している。

言われなければハイブリッドに気づかない

出発地点のホテルから峠道を超えて、目的地はマラガ郊外にある会員制サーキットとして名高いアスカリレースリゾート。全長約5.5kmの本格コースだ。ここではクーペボディの「カレラ GTS」と、「カレラ 4 GTS」を比較する。GTSには、車高を10mm下げたスポーツサスペンションと可変ダンパーシステム(PASM)、そしてこの後期型からリアアクスルステアが標準装備になっている。そしてオプションのアンチロールスタビリティシステムであるポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)は、ハイブリッドの高電圧システムに統合されており、システムの柔軟性と精度が高められている。

スポーツプラスモードでアクセルを全開にすると、一切のラグタイムがなく、7000回転まで加速していく。電動化の恩恵はアクセルレスポンスにあらわれており、アクセル操作に対してリニアに反応する。そしてPDCCをオンにしておけばロールも少なくわずかにステアリングを切り込むだけで向きが変わる。2WDと4WDとの挙動の違いはわずかで、アンダーステアの傾向もなくいずれもニュートラルに旋回する。コーナーからの立ち上がりの際には4WDではフロントタイヤを通して手のひらに力強い駆動力を感じる。

いわゆるターボラグがなく、かといってモーター音などが聞こえるわけでもない。言われなければハイブリッドに気づかないかもしれない。体感的にはまるで大パワーの自然吸気エンジンのようだった。それでいて、サーキットでは前期型ターボにも迫るような速さをみせた。単なるハイブリッドにはしないというポルシェの矜持を見た気がした。

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