英国が生んだコンパクトなオープン2シータースポーツ
1961年にイギリスでデビューしたMG「ミジェット」は20年近くにわたり生産された、小型オープン2シータースポーツカーのロングセラーです。1974年以降は「ミジェット1500」となり、北米の安全基準に合わせた大きなウレタンバンパーが特徴となりますが、ここで紹介する小幡さんの1979年式はスッキリとした佇まいで美しく仕上げられています。しかしここまで直すには並々ならぬ苦労があったのだとか……。詳しく話を聞いてみました。
車検が切れて24年も経ったクルマを2年かけて再生
東京で輸入車&クラシックカーを手がけるオートモービルアシスト・ブレスでは、ユーザーを中心とした自動車趣味人に楽しく走れるシチュエーションを提供するべく毎年春と秋にツーリングを実施している。2024年の春、5月26日に開催された「Bless的趣味車ツーリング Vol.22」では非常にコンディションの良いMG「ミジェット1500」を発見したので、オーナーに詳しく話を聞いてみた。
「この1979年式のMG ミジェット1500は、とある倉庫で見つけたんですよ。それで、ご縁があって、車検が切れて24年も経ったクルマがわが家にやってくることになり、カーポートの下で2年かけて再生しました」
そのように話してくれた小幡勝士さん(取材時年齢53歳)はオートモービルアシスト・ブレスのメカニックで、同スペシャルショップにて一緒に働いている若い整備士の塩田ナオキさんを助手席に乗せ、群馬の伊香保を目的地とした自社のツーリングを楽しんでいた。
「手元に来てから約3年、ナンバーを付けてから8カ月になります。ツーリングを楽しんだり、イベントに参加する際に乗っています。いまでこそ完調ですが、この状態に持っていくまでの道のりが大変でした。エンジンがやっとかかるようになった頃、アイドリングさせながら点検していたら、突然、漫画のように水蒸気が立ちこめ、ヒーターが爆発して車内がクーラントだらけになりました。再生中に何度も水まわりが爆発しましたね」
四半世紀ぶりに公道復帰できたのが何よりの自慢
小幡さんはメカニックなので、そのようなトラブルも自分のクルマに発生した面白いエピソードとして捉えているそうだ。ミジェット1500を少しずつ直し、キレイになって健康になっていく成長過程をつぶさに見ながら愛車を育てていく、旧車ならではの楽しさがある、とも話してくれた。
「今回、一度に四半世紀分の修理をしました(笑)。ということで、愛車をイジるのは、これからのお楽しみということになります。とはいえ、すでに北米仕様の5マイルバンパーやサイドリフレクターを外し、テールランプの下の膨らみをFRPで作りました。フロントマーカーは、アルミ板から製作したプレートで固定。内装はレッドに変更。ヘタったシートはアンコを増して、シフトノブはチタンの削り出しにしました。とくにお気に入りなのは、チタンカラーと艶消しブラックで再塗装した純正ホイールです。いろいろやりましたが、とにかく四半世紀ぶりに公道復帰したのが一番の自慢ですね!」
いつかはサーキットを走れるようにしたい
MG ミジェット1500が公道復帰してからもうすぐ1年というタイミングだが、早くも苦労話があるとのことだったので話してもらった。
「ナンバー取得後、公道を走ったらどうしても速度が50km/h以上出ず、点火系のアップグレードと燃料系の見直しなど、あれこれ手を尽くしてみましたが原因が分かりませんでした。結局は燃料タンクにホースをつなぐパイプに小さなクラックがあって、エアを吸ってしまってガソリンの供給が追いつかなかった……というオチでした」
過去に、三菱「ミラージュ」、日産「パルサー」「グロリアバン」、ホンダ「プレリュード」、「ミニ1000」、マーズスピード「ミニ ハッチバック」を所有し、現在、20年以上前に購入した1989年式のローバー「ミニ 30th Anniv. Ltd. 改1300FCR」(エンジン3基目)も愛用している小幡さんに、今後のミジェット1500のカスタム予定について伺ってみた
「まずはローダウン、次にサスペンションをアップグレードですね。そして、純正トランスミッションの修理、キャブレターをウェーバーかFCRツインに変更し、タコ足とマフラーの製作、オールペイントなどなど、たくさんあります。いつかはサーキットを走りたいですね。夢いっぱいです」
MG ミジェット1500とクラシックミニをパートナーとした小幡さんのカーライフは、これから黄金時代を迎えることになるだろう。