新たな価値観を提供したラルゴ
現在の日産のフラッグシップミニバンといえば、言わずと知れた「エルグランド」ですが、1997年に初代エルグランドが登場する以前のフラッグシップミニバンは「ラルゴ」が担っていました。ラルゴはもともと小型のキャブオーバーワゴン/バンの「バネット」の上級車種として1982年9月に「バネットラルゴ」として登場したのが始まりで、1993年5月に登場した3代目モデルからバネットの名前が外れてラルゴとなっています。
上級セダンから乗り換えても質的に十分満足できた
3代目日産「ラルゴ」は、それまで存在していた同じ車体を共有する商用モデルを廃し、ワゴン専用モデルとなっていた。それに伴って3ナンバーサイズのボディを持っていた点が最大の特徴。
開発コンセプトは「高質で快適なドライバーズワゴン」とされていた。従来のワンボックスカーが持つ多人数で移動が可能というユーティリティはもちろんのこと、気持ちよく余裕ある走りが味わえ、上級セダンからの乗り換えの際にも質的に十分満足できた。所有する喜びが得られるという新たな価値観を提供することを目標に開発されていたのだ。
そのため存在感のあるデザインにプラスして上級セダンのようなフロントグリルを備えたほか、運転席はインパネからコンソールへ連続感のあるコクピット感覚のデザインとなっていた。さらに余裕のある座面長のシートなどもおごられていたのだ。
パワートレインには余裕ある走りを実現する2.4Lのツインカム16バルブエンジンを用意(他に2Lディーゼルターボモデルも設定)。足まわりにはフロントにストラット、リアにマルチリンクという日産らしいものを採用したうえに、GTパックとして減衰力を3段階に切り替えることができる電子制御サスペンションとスーパーHICASが採用されていたのも特筆すべきポイントとなっている。
専用エアロパーツを装着した「ハイウェイスター」
そして1995年8月の一部改良のタイミングで、オーテックジャパンから「ハイウェイスター」が追加となる。このハイウェイスターは、専用エアロパーツやアルミホイール、専用の塗り分けとなるツートーンカラー、ボディストライプなどでスポーティなスタイルとしたほか、エクセーヌと本革調合成皮革を用いた専用シート表皮や木目調パネルなどで差別化を図ったもの。
このラルゴ ハイウェイスターは、現在でも日産の一部の車種に採用されているハイウェイスターの元祖となるモデルであるが、1996年10月のマイナーチェンジ時にカタログモデルとなるほどの凄まじい人気っぷりも話題となった。
その後は前述したように1997年5月に登場したエルグランドにフラッグシップミニバンの座を譲ると、1999年6月に2代目「セレナ」が登場したのを見届けて終売。直接的な後継車種は存在しないが、ラルゴが果たした役割は非常に重要なものであったと言えるだろう。