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マツダ「ルーチェ」が「広島ベンツ」と呼ばれたのはなぜ? サウンドセレクターに「演歌」を用意し「Sクラス」の上をいってた!?【カタログは語る】

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)

広島ベンツと呼ばれた理由とは

その一方でセールス的にもセダンに較べ圧倒的に人気が高かったのがハードトップだった。今、筆者の手元に残してあるのは1986年9月とある「ルーチェ ロイヤルクラシック」のカタログで、その後ユーノスチャネルのカタログでも見られた縦300mm×横296mmのほぼスクエアサイズのもの。

ベージュの表紙にエンボスの縁取りが入り、車名とMAZDAのロゴだけが印刷されたシンプルというかあくまで上品な仕上げになっている。で、表紙を開くと「ここに、我が心のプレステージ。」のコピーと、対向ページにはハードトップのフロントマスクを切り取った写真が載せられている。まあ、いかにもブランデンブルク協奏曲がBGMに似合いそうなタッチである。

さらにページを捲ると、問題の4ドアハードトップの自動車媒体の業界用語で言うところの前後7:3の写真が出てくる。問題の……などと思わせぶりに書いたのは、この4ドアハードトップが当時のメルセデス・ベンツ「Sクラス(W126)」に「なんか、似ている」といわれたから。4ドアハードトップはボディの下半分がグレーに塗り分けられていて、その手法はSクラスと同じだったし、いくぶんか丸みをもたせたルーフラインなども然り……だった。

じつはこのカタログを最初に眺めた時から38年経った今、この原稿を書きながら改めて同じカタログの同じページを眺めてみると「よくよく見ればそうでもなかったかもね」とも思えるのだが、それくらい当時はSクラスの存在感が大きかったということだったのかもしれない。

演歌専用のボタンを設置

他方で日本車らしくSクラスの上を行っていたのが、装備の充実度だった。中でも当時、瞳孔を大きく見開かさせられたのが、オーディオシステムだった。実車にはホームオーディオと同じ正立式カセットデッキがセンターコンソールに標準で収められていたのだった。

このデッキは「サウンドセレクター付き」が謳い文句で、5つの周波数特性がプリセットされ、選んで聴けるようになっていたのだが、その内訳はJAZZ/CLASSIC/ROCK/ENKA/VOCAL。筆者は一応オーディオマニアでもあるが、「Eは演歌!?」と、この表示を最初に見つけた時の驚きは38年経った今でも忘れられない。これぞ日本車の装備……! と、思わされたものだった。

装備でいうと他にもリアセンターアームレスト内に収納可能な自動車電話、缶ジュース5本が入るリアトレイのクーラーボックス、空気清浄機、後席パワーシート、電子メーターといった、当時としては贅を尽くした装備の数々も与えられた。新開発の2L V6エンジンと13B型ロータリーエンジン、電子制御サスペンションなどにより、走りに関しても当時のマツダのフラッグシップに相応しい快適なものだった。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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