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ついに「600e」日本上陸! フィアットらしい電動BセグSUV。な予感…追って3気筒エンジン搭載のMHEVも【週刊チンクエチェントVol.45】

フィアット 600e:ステランティス ジャパン代表取締役社長・打越 晋氏(左)と、ステランティス グループ フィアット・ブランド チーフデザイナー、フランソワ・ルボワンヌ氏(右)

クラシック・セイチェントへのオマージュが隠れている!

名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第45回は「フィアット600eがデビュー!」をお届けします。

「600e」はフィアットにとって重要なモデル

前回もお伝えしたのだけど、2021年秋のゴブジ号はウソみたいに好調で、だからあちこちに乗っていくのがとっても楽しかった。おかげで調子にのって、仕事として呼ばれたわけでもないのにラリー・イベントに参加しちゃったりしたのだけど、それはまた次回に。またしても「やっぱり話が横にそれちゃって進展ナシかよ……」なんて声がどっかから聞こえてくる気がしないでもないけど、フィアットにとって重要なモデルが2024年9月10日に国内ローンチされたので、それを無視するわけにはいかないじゃないか。

そう、いよいよフィアット「600」──イタリア語読みでは“セイチェント”──が日本に上陸したのである。本国ではバッテリーEVの「600e」とマイルドハイブリッドの「600ハイブリッド」がラインアップされいてるが、日本ではまずセイチェントのメインストリームとなる600eからのスタートで、600ハイブリッドは2025年春頃に追加されることになるという。

この連載を以前から見てくださってる方は御存知かと思うけど、僕はこの2代目セイチェントが正式デビューの前に何の前触れもなくィアットの公式動画にサラッと登場しているのを発見したときから、ちょっとばかり注目していた。もちろん本国でのデビューのときにも紹介してる。

というのも、これ、フィアットにとってホントに重要なモデルだと思っているから。ブランド初のバッテリーEVとしてはすでに「500e」が存在してるわけだけど、チンクエチェントはどちらかといえばパーソナルカーにしてスペシャリティカー。よりファミリーユースに向いてるのは、言うまでもなくドアの枚数も居住スペースも荷室も豊かなセイチェントの方なのだ。チンクエチェントのかわいらしさが好きで一緒に暮らしたいと思っていても、ライフスタイルにあてはめにくい人というのが思いのほか多くいる。そうした人たちの心を埋められるクルマに、このセイチェントがなっているのかどうか。それは気になるってものでしょう。

500Xに似てるけど、デザインは新規でおこしている

これまではその役目を、「パンダ」や「500X」が果たしてきた。が、電動化時代に突入した現在、3代目パンダは販売終了、500Xはもう少しの間だけ販売が続けられるけど、近い将来、やはり終了となる運命にある。そして、その500Xの事実上の後継となるBセグメントSUVがこのセイチェント、というわけだ。まぁルックスを見れば簡単に想像できちゃうことだろうけど。

写真で見たときには、セイチェントのスタイリングは500Xのディテールを変えただけみたいに感じていた。実物を見てみても、500Xとセイチェントはたしかに似ている。が、ジックリ眺めてると、実はシルエットからして微妙に違ってるということがわかる。まったく新規にデザインをおこしていると考えるべきだろう。

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インテリアはクラシック・セイチェントへのオマージュ

実はこのクルマのデザインについては、出版社時代の同僚である同業の友人、南陽一浩くんがフィアットのチーフデザイナーであるフランソワ・ルボワンヌさんに話を聞いていて、このAMWで記事を展開することになってるので僕も楽しみにしてる。だから僕はあくまでも個人的な感想を述べるに留めておくけれど、ボンネットのライン、その先端のオデコからアゴに向かって落ちていく面の角度、ルーフからリアエンドに至るラインなどにクラシック・セイチェントへのオマージュが隠れてるように思えて、ちょっとニヤリとした。

インテリアも同様で、パッと見では500Xをベースにさらにモダナイズさせつつ上質に仕上げたという印象だけど、2本スポークのステアリングやラウンド型のメーターナセルなどは、間違いなくクラシック・セイチェントへのオマージュだ。エクステリアもそうだしインテリアもそうだけど、こういうのをやらせると、イタリアは本当に上手いと思う。

車体のサイズは全長4200mm×全幅1780mm×全高1595mm。500Xのスタンダードなモデルと較べて、95mm短く、15mm細身で、同じく15mm低い。このクラスのSUVに関心がある人は、車体はできるだけコンパクト、室内や荷室はその中で最大限広くというのを望むケースが多いから、このサイズは歓迎されることだろう。室内も大人4人なら充分ゆとりを持って移動できるだけのスペースがあるし、荷室に至っては通常で360L、後席を倒せば1231Lと、このセグメントでトップクラスの容量を備えてる。ついでに触れておくと、500Xよりも小物入れなどの収納が充実してる。実用性に関しては、まず文句のつけようがないレベルにある。

いたずら坊主のような、ちょっとヤンチャな顔つき。角らしい角のないフォルム。クラシックとモダンが違和感なく同居してるディテールの数々。チンクエチェントを中心としたファミリーのメンバーでありながら、チンクエチェントとはちょっと違うんだけどね、とでも言いそうな穏やかで軽やかな明るい主張。かわいらしさを残しながら少しばかり大人びた感じの、チンクエチェントのしっかり者のお姉さんといった雰囲気。このクルマ、結構好きだな、というのが初対面での印象だった。

日本では絶妙な3色の展開

その好印象に輪をかけていたのが、ボディカラーだ。発表会ではキーカラーのサンセットオレンジが目立っていたが、日本市場ではそれに加えてスカイブルーとホワイトという3色展開。その色味が絶妙で、かなりいいのだ。ちなみに本国ではほかにSABBIA(砂)、VERDE MARE(海の緑)、RED(by RED=エイズ対策プログラム支援/赤)、NERO(黒)が用意されている。昨年の6月に宣言したとおり“イタリアの海、太陽、大地、空からインスピレーションを得た”色だけで構成されていて、グレーはなし。そういえば600eのアイボリーを基調としたインテリアにも、ところどころに鮮やかなブルーの刺繍やステッチが施されている。イタリアは色彩の国。こういうのが“らしさ”なんだよな、なんて感じられて嬉しい気分になった。

肝心のメカニズムはどうか。セイチェントの基本骨格は、ステランティスの電動化車両用モジュラープラットフォーム、eCMPだ。ジープ アベンジャー、アルファ ロメオ ジュニア、ランチア イプシロン、そして旧PSA系フレンチ・ブランドの各モデルと、基本を同じくしている。セイチェントは、そのeCMPの最新版を採用してる。

実は7月に同じ最新版eCMPを使ったアルファ ロメオ「ジュニア」を本国で試乗してきたのだけど、そちらは高性能モデルだったため、様々な部分に手が加えられていた。セイチェントのプラットフォームはそうした特別なチューンナップのようなことは行われておらず、いわば標準仕様のようなものだという。eCMPのベーシックな底力、本質的な良さのようなモノが、このクルマで表現されているわけだ。

パワートレインはバッテリーEVとマイルドハイブリッド

そこに搭載されるパワートレインは、2系統。先ほども記したとおり、バッテリーEV、そして1.2L 3気筒にe-DCTと呼ばれるモーター内蔵トランスミッションを組み合わせたマイルドハイブリッド、だ。今回はじめに上陸したバッテリーEVの600eは、54kWhのリチウムイオンバッテリーと前輪を駆動するシングルモーターの組み合わせ。最高出力は156ps、最大トルクは270Nmと、ジープ「アベンジャー」やランチア「イプシロン」などの姉妹車、それに内燃エンジンの500Xとほぼ同じ数値だ。一方で車重は500Xより170kg重い計算で、それをモーター特有の瞬間的に立ち上がるトルク特性がどう補っているのか。実は今から1週間後に試乗する予定になってるので、いずれここで印象をお届けする機会もあるかもしれない。……いや、間違いなくあるな。だって皆さん、興味あるでしょ?

そうそう、もうひとつ皆さんが気になるのは、600eの航続距離だろう。WLTCモードで493km。実用上は環境その他で変わってくるけど、カタログデータの6〜8割ぐらいと考えたら、ざっくり300kmから400kmは走ってくれそうな計算だ。それって通常ならば充分に日常使いできるといえる範疇にあるんじゃないか?

まぁほかにも説明しておきたいことは山ほどあるのだけど、ほんとに山ほどあって記事が絵巻物みたいになっちゃうから、今日の段階ではここまで。

9月23日まで東京・二子玉川ライズでイベントを開催

だけど、どうしてもお伝えしておかなきゃならないことがあって、それはこのクルマが発表された9月10日から23日までの期間、東京・二子玉川ライズにおいて、600eのデビューを記念したイベントが開催されているということ。会場には600eを含めたフィアットのラインアップがズラリと並ぶだけじゃなく、何と『ルパン三世』とのコラボレーションによるチンクエチェントの特別仕様も展示されていて、さまざまキッチンカーが日替わりで登場する期間限定のFIAT CAFFÉもオープンする。最初の週末には特別なイベントも開催され、2回目の週末には600eの特別試乗会も開催されたりする。

フィアット・ファンにとっては見逃したらダメなヤツ。詳細はイベント概要を以下に貼っておくから、そっちでしっかりチェックして、じゃんじゃんバリバリ遊びに行ってきてねー!

■イベント概要はココから!

FIAT CIAO 600e FESTA

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