キャンパーバンで国立公園を巡りながらバラマンディの大物を釣りたい!
トヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー「ドルフィン」で2022年にアメリカ西海岸を旅した筆者。次なる旅の目的地はオーストラリア・ノーザンテリトリー州です。ダーウィンを出発して国立公園を訪ね、そして釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。まずは旅の相棒となるクルマ選びからです。
ダーウィン周辺は魅力的なアウトドアスポットが豊富
2022年にはトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、「ドルフィン」(愛称:ドル)をアメリカで購入して、西海岸を中心に3カ月間の旅をした。そのときのレポートは、AMWに34回にわたって連載したので、読んでいただいた方も多いと思う。
すぐにでも次の旅に出たいところだったが、その年の秋から2023年いっぱいは仕事に忙殺されて旅行どころではなくなってしまった。
じつは、2020年に外国人に日本語を教えるライセンスを取得して、新しい仕事へのチャレンジを始めた。しかし、すぐにコロナ禍となり、日本に住む外国人は激減。いきなり開店休業状態になっていた。その仕事が、コロナが終わった2022年後半からにわかに忙しくなったというわけだった。慣れない仕事だけに準備にも時間がかかり、精神的なプレッシャーも感じて、ほとほと疲れてしまった。
そんなとき、友人の紹介で出会ったのが、カズさんだった。カズさんは、千葉県の養老渓谷近くの素晴らしい環境で古民家をきれいにリノベーションしてゲストハウス「わとや」を営んでいる。そればかりでなく、休耕中の田んぼを借りて米を作ったり、古いジープをレストアしたりなど、ぼくにとっては、刺激的なライフスタイルを実践している人物なのだった。
古民家の庭先で飲みながら大いに語り合ううちに、カズさんが以前はオーストラリアの旅行を扱う代理店を経営していたことが分かった。それもキャンピングカーの旅行が主だったというから、さらに趣味が一致した。
「一度、ダーウィンに行ってみたいんですよね」と話すと、「そう、ノーザンテリトリーが一番のおすすめです!」と話がピタリと合った。初対面からこんなに話が合う人は滅多にいない。
とはいっても、ダーウィンに関するぼくの知識は、オーストラリアの最北端に位置し、パプアニューギニアやインドネシアに近いためにアジアの影響が色濃い、エキゾチックな町という程度だった。
すると、カズさんが「それも魅力なんですけど、アウトドアの目的地が多いんですよ。それも4WDのキャンパーでいくのが楽しいんです」といって、携帯の写真を見せてくれた。それは、ハイラックス4WDベースのキャンパーバン(Campervan)と呼ばれるタイプで、ぼくがアメリカで旅を共にした「ドル」の兄弟というか、従兄弟のようなクルマなのだった。
スポーツアングラーとしてはバラマンディの大物を狙いたい
もう10年以上前になるそうだが、カズさんはキャンパーバンでダーウィン周辺の国立公園を回る一人旅をしたという。その冒険心にあふれる体験を聞いているうちに、ムラムラと旅心が燃え上がってしまった。これは自分にぴったりの旅になる、と早くも確信したのだった。
じつは、敏感に反応したのには、もうひとつ理由があった。15年ほど前に、バラマンディという魚を釣るために、釣り仲間ふたりとケアンズ(オーストラリア北東部クイーンズランド州の町)に旅行したことがあった。バラマンディの大物は、スポーツアングラーにとって、どうしてもリストに加えておきたい魚種である。ところが、そのときは雨季が長引き、あまりいい釣りができなかった。そのリベンジをいつか果たしたいと、思いを温めてきたのだった。
ダーウィン近郊にはバラマンディのいい釣り場が多くある。積年の恨みを晴らす絶好のチャンスだ。キャンパーバンでオーストラリアの国立公園を訪ね、バラマンディの大物を釣る。魅力的なプロジェクトがその場で思い浮かんだ。
本来ならカズさんにプランをお願いしたいところだが、残念ながらいまは旅行関係の仕事はまったくしていない。彼にアドバイスをもらいながら、自分自身で旅の計画を立てることにした。
アポロ キャンパーバンはトヨタ ハイラックス4WDがベース
まずは、クルマである。キャンパーバンは、いくつかのメーカーで似たモデルを製作している。とりあえず、インターネットで最初に出てくるApollo(アポロ)というメーカーでシミュレーションすることにした。
ベースはトヨタ ハイラックス4WDで、シャシーに特製のキャンパーユニットを載せた、いわゆるヤドカリスタイルだ。
エンジンは2.8L・4気筒ディーゼル。カタログ上の最高出力は208psとなっている。1993年製の「ドル」はV8だったが、キャンパー部分があまりに重く出力不足を痛感した。現代の高性能車を相手に坂をノロノロ時速30km/hで上るのはストレスが大きすぎた。その点をカズさんに聞くと、「現代のエンジンだし、ドルフィンに比べれば圧倒的に軽いですからね。ストレスなく快適にドライブできましたよ」という。
考えてみれば、アメリカは砂漠といえども、ものすごい坂が目の前に聳え立つ。その点、オーストラリアのノーザンテリトリーは平たい熱帯雨林の大地というイメージがある。きっと国土に合わせた仕様になっているのだろう。
キッチンはボディパネルの外側にレイアウト
装備の一番の特徴はキッチンだ。車内ではなく、左側のボディパネルを開けると冷蔵庫を含めたキッチン一式が現れるようになっている。コンロは引き出し式の台の上に乗っていて、搭載されたプロパンガスをつないで使う。つまり、外で調理をするわけだ。室内にも小さなテーブルがセットできるが、キャンピングテーブルとチェアを積んでおいてアウトドアで食べることを推奨している。電源と水は外部から取ることができる。
ようするに、オートキャンプとモーターホームの中間といった仕様だ。日本に持ってくれば受けるんじゃないか?
ルーフはポップアップ式。屋根を垂直に押し上げて2人用のベッドを確保する。紹介ビデオを見る限りベッドは広く作られていて、男性2人でもいけそうだ。
外付けのシャワーがセットされているが、実用性は低い。サーファーが軽く水を浴びる程度だろう。水のタンクも小さい。外に蛇口があるが、これもあまり使い道はあまりなさそうだ。グレーウォーターのタンクもないから、食器洗いや洗面はキャンプ場の施設を使うことになるからだ。
いくつか気になる点はあるが、ほかの選択肢となるとファミリー向けのコンバージョンになってしまう。1人か2人の旅を想定しているので、冒険心あふれるキャンパーバンがベストだろう。このクルマを相棒に旅のプランを立てることにした。