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昭和・平成に青春を過ごした大人に贈る「胸キュン」ラブストーリー! 日産90周年記念ムービー『NISSAN LOVE STORY』を映画評論家が読み解きました

ディスコの前にケンがS13型シルビア Q'sでメリーを待つ

時代を彩ってきた歴代37車種の日産車が登場

最近、クルマ好きの間でちょっとした話題になっているのが、日産が創立90周年記念ムービーとしてYouTubeで配信している、4分13秒の動画です。『NISSAN LOVE STORY』と題されたショート・ムービーに主演するのは、眞栄田郷敦、見上 愛の2人。歴代の日産車を通して描かれるラブストーリーを読み解きます。

時代の変化とともに、変わりゆく恋人たちのラブストーリーを映像化

日産のコマーシャルというとすぐに思い出すのは、1960年代から「愛のスカイライン」シリーズとして放送されていた男女2人によるラブストーリー仕立てのCM。通称「ケンとメリーのスカイライン」だ。つまり、本作の仕立ても眞栄田と見上がケン&メリーということだろう。

その2人が1950年代の銀座(出会い)から現在までの間を時空を超えて旅をしていくストーリー仕立てになっている。その時間経過の中に登場するのが日産車の数々。ケンとメリーの過ごした時を彩るように、つねに傍らに居たのが日産のクルマだった、というもの。

思えばひと昔前は18歳になるとすぐに自動車運転免許証を取得しに、高校3年生になると自動車学校に通いだす、というのが常だった。それは名目では高校卒業後、就職するには自動車運転免許証を持っていた方が良い、というものだったが、実際の男子高校生は、就職よりも彼女を乗せてドライブしたい! という純粋な欲望と好奇心があったからなのだ(もちろん全員がそうだとは明言しないけれど)。

あちらこちらに日産の車名が登場

スカイラインに関していえば、1960年代〜1970年代が人気絶大だった。それはCMキャッチフレーズの「愛のスカイライン」、「ケンとメリーのスカイライン」の影響によるところが大きい。ケンを演じたのは蟇目 良、陣内たけし、前田俊彦といったハーフっぽいルックス、そして相手にはダイアン・クレイやテリー・ミラーの外国人女性陣。思えば今回ケンを演じている真栄田郷敦もどこか前出演者陣に顔立ちが似ているような。

1950年代の銀座5丁目を模したオープニングに登場するのは「ダットサン」で、ケンとメリーの出会いが描かれる。こだわりと遊び心を感じてしまうのは、町並みに登場する車種名を模した建造物の数々だ。プリンスデパート、喫茶アベニール、映画館セレナ座の上映作品の看板タイトルは「インフィニティ」などなど。

目を凝らして見れば町並みのあちこちに日産車種名が冠されているのに気づくことだろう。他にも1970年代の住居・コーポの名前は「フィガロ」だったり、「シルビア」が登場する1980年代のディスコの店名は「プレジデント」だったりだ。

当時のドライブインシアターは憧れの場所だった

「ローレル ハードトップ 2000GL」が登場する1970年代のドライブインシアターの名前は「レパード」だ。1970年代〜1980年代のドライブインシアターは、アメリカ文化に憧れたクルマ乗りの若者たちの間ではまさに憧れだった。周囲にたくさんの人が座る映画館とは違い、恋人と2人だけの空間で好きな映画を観ることができる楽しさ。もちろん男子たちには下心満載だったのだが(笑)。

ドライブインシアターの歴史は1933年のアメリカ・ニュージャージー州カムデンから始まる。アメリカのティーンエイジャーたちを中心にファミリー層、シニア層にも支持されシアターは増加の一途だった。だがその後さまざまなモラルの問題や法律規制により衰退していくことに。

クルマを持つことの魅力とは

閑話休題。2020年代の現代では、かつてのクルマ文化はハッキリいって方向性も嗜好も変化している。大袈裟に言うとクルマは「人生の一部」といっても良いほどの比重を持っていた。それは仕事に必要だったり、デートだったり、家族旅行だったり、人生のすぐ隣に存在していた。

筆者も運転免許証を取得してから、自分のクルマを所持していない時期は現在まで3カ月もない。つねにクルマは移動手段だけでなく、人生を豊かにするために存在しているもの。時にピンチを救ってくれたり、新しい出会いがあったり、他者の援助になったり。個人的な見解だが、昨今高年齢者の運転事故が増えたのは、もちろん年齢による反射の衰えなどもあるだろうが、じつはかつてのようにクルマを自分で点検したり、修理したりすることがなくなったからではないだろうか、と思っている。

技術の進歩革新により近未来、自分で運転することなく目的地まで到着できる完全自動運転化は間違いなく達成できるだろう。そしてそうしたクルマはコンピュータ管理で間違いなくどこも触る(メンテナンスや不具合の調整、チューンアップなど)ことはできないはず。

90周年を迎えた日産が願うこと

昔のことわざに「ダメな子ほど可愛い」という、現在となってはコンプライアンス問題になるようなものがあるが、かつてのクルマもそうだったのではないだろうか。自分で手塩をかけない、かけられないモノに愛情が生まれるだろうか? それはある種の無関心をも生み出す。無関心なモノに愛情は寄り添わない。もしかしたら愛情の欠如が突発事故をも生み出すことに繋がってはいないだろうか? あくまで筆者の個人的見解だが。

日産90周年記念ムービー。ケンとメリーの出会いから人生を紡ぐ様子、そこにはいつもクルマがあった。車種は目的や境遇によって変化し、さまざまなクルマを選び、クルマを楽しみ、クルマを愛している様子が描かれる。

たくさんの人の人生にクルマが寄り添うこと、それを日産の開発スタッフは願っている。何事も全ては可ではないし、不可ではない。それは人生においても同義。だが、過去の経験や思いでを大切に残しながら、未来へと続く道を模索し続けること。それがこのショート・ムービーには描かれているような気がして仕方がない。

【動画】日産90周年記念ムービー NISSAN LOVE STORY

 

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