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熱々のボンネットで目玉焼き…なんて発想はできなくなる!? 日産自動車が開発中の次世代塗装に注目です【Key’s note】

温度計測中

テスト時、施工車両は約33度

電気自動車こそ効果を体感できるはず

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「車内の温度上昇を抑制する自動車用塗装」です。日産自動車が、エアコン使用時のエネルギー消費を抑えられるよう、温度上昇を抑制するボディ用塗装技術を開発中。実用化されれば、地球温暖化の防止にもつながるでしょう。過去にとある実験を試したことがある筆者は、どう感じたのでしょうか?

地球温暖化の防止にも貢献できる

日産自動車は、車内温度の上昇を抑えるボディ塗装を開発しているそうです。その名は「自動車用自己放射冷却塗装」。なんだか堅苦しい名前ですが、漢字を分解してみると意味がわかりますね。

塗料自体が自発的に熱を放射することで、冷却を促すというのでしょう。地球が病んでいると思わざるを得ないほどの記録的温暖化ですから、エアコンをキンキンに効かせていないと車内はサウナ状態になってしまいますよね。

ただし、エアコン稼働は航続可能距離の低下を招きます。とくにEVではエアコンを作動させると、航続距離はガクッと短くなります。とりわけEV戦略を推し進めている日産にとってそれは致命的。この「自動車用自己放射冷却塗装」は大切な技術なのです。

仕組みは塗料の中に、人工物質を練り込んでいるとのこと。「メタマテリアル」と呼ばれるそれは、自然界に起こる放射冷却と同じ現象を引き起こすのだそうです。

放射冷却とは、晴れた冬の日、夜中や早朝に起こるあの現象のこと。地球は赤外線として熱を宇宙空間に放出しています。その時、地表の熱を奪ってくれるのです。ですから、地表は冷えていく。天気がいい日の夜や翌朝が冷え冷えしているのは、放射冷却の効果なのです。自己放射冷却塗装はその原理と同じなのだそうですから驚くばかりです。

その熱エネルギーをボディ全体から放出するばかりか、大気圏外に解き放つといいますから、地球温暖化対策にも貢献してくれるわけです。

まだ開発段階ですが、通常塗料と比較し外部表面で−12℃も変化したといいますから、「ほんとかよ」と疑いたくなるほどの効果ですね。車内温度は最大5℃も低下したそうです。実際に体験した方によると、あまりの温度の違いに驚いたとのこと。12℃も差があれば、誰でも腰を抜かしかけるに違いありません。

目玉焼きを焼いてみようなんて誰も思わなくなるかも

僕が学生の頃ですから、幼稚な実験であることをご理解いただきたいのですが、当時僕はソリッドブラックのクルマに乗っていました。黒は太陽熱を吸収しますから、ボンネットに手を触れると火傷をしそうなほど熱かったのです。暑かったではなく熱かったです。

そこでピンときたのがこの実験です。ボンネットの上で目玉焼きが作れるのではないだろうかと思い立ち調理に挑んだことを思い出しました。

結果からいうなれば、白身の縁がわずかに白くなっただけで、ほとんど半熟のままでした。実験失敗です。手で触れば火傷をするほど熱いのですが、卵を落とした瞬間に冷えます。卵が日光を遮りますから、フライパンの代用であるボンネットは冷えたままです。目玉焼きなど、食べられる状態にはなりません。

などという稚拙な遊びをしていたわけですが、当時「自動車用自己放射冷却塗装」があれば、そんなことをやってみようと思わず、恥をかかなくて済んだかもしれませんね。

という画期的な「自動車用自己放射冷却塗装」なのですが、それほどの効果があるのなら、ビルや標識などの建築資材にも応用できるのではないかと想像したわけですが、実際にすでに実用化されているそうです。

ただ、建築であればローラーで厚塗りが可能ですが、自動車となればそうもいきません。クリアトップコートと呼ばれる塗装が必要です。そのためにエアスプレーなどを細工し、クリアトップコートにアジャストしたそうです。という意味で「自動車用〜」なのですね。

日産はこの技術を、羽田空港で働く「NV100クリッパーバン」で実証実験しています。巨大な航空機の周りをチョコマカと走りまわる「NV100クリッパーバン」を見たら、気に留めてあげてください。

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