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実走60キロ! 1億円で落札された10台のみ別注されたメルセデス「SLRマクラーレン クラウンエディション」の中身は「722エディション」だった!

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

知られざるSLRマクラーレンの限定車、マーケットの評価はいかに?

正直なところ、筆者は寡聞にしてこの「SLRマクラーレン クラウンエディション」の存在すら知らなかったのだが、調べてみるとバーレーンの国王陛下がアラブの王族への贈り物としてオーダーしたものとのこと。

「クラウンエディション」は10台のみの限定製作で、生産ラインから選ばれた個体をベースに、アップグレードされたエンジン、カーボンファイバー製エアロパーツ、より硬いダンパー、19インチの軽量アルミホイールなど、722エディション仕様のフルパーツでアップグレードされたとのこと。ボディカラーは、シルバーやブラックなども存在したことがわかっている。

このほどボナムズ「Goodwood Festival of Speed」オークションに出品された、ワンオーナーのSLRマクラーレンは「クラウンエディション」の9台目。SLRとしては珍しい真紅のボディに、「シルバーアロー」らしい赤/黒レザーのインテリアがマッチした1台である。

もともと中東に行くはずだったのが選に漏れたのか、それとも当初から英国に留まる予定だったのかは不明ながら、マクラーレンの専用工場をラインオフして以来、このクルマはさるスーパーカー専門ディーラーが所有する、ブランドやジャンルをまたいで収集されたプライベートコレクションの一翼を担う存在として、これまで長らく静態展示されてきたとのことである。

近年になって、英国ノーフォークのロング・ストラットン近郊に本拠を構える、クラシックカーおよび近現代スポーツカーのスペシャリスト「ストラットン・モーター・カンパニー」によって、再び路上に乗り出すためのメンテナンスを施行。オークションで落札する次期オーナーがグランドツーリングにおける目覚しいポテンシャルを発揮する準備が整った、とボナムズ社のオークション公式ウェブカタログでは高らかにアピールされていた。

走行距離はわずか60キロのみ

このカタログが作成された時点で、オドメーターに刻まれた走行距離は、わずか60kmのみ。それを証明するドキュメントとして、ストラットン・モーター・カンパニーから提供された2008年購入時のインボイスと再整備のインボイスのコピーも、車両に添付して出品されていたようだ。

そしてボナムズは20万ポンド~30万ポンド(約3724万円〜5586万円)という、かなりリーズナブルとも感じられるエスティメート(推定落札価格)を設定したのだが、実際にオークションが始まってみると、ビッド(入札)がみるみる跳ね上がり、終わってみればエスティメート上限の2倍近い56万3500ポンド。すなわち日本円に換算すれば、約1億800万円で落札されることになった。

とはいえ、ここ数年のSLRマクラーレン 722エディションは、今回のハンマープライスと同等、あるいはそれ以上の価格で流通している事例が多いことと比較すれば、やはり世界的な知名度というのは、この種のハイパーカーであってもかなりの影響力を及ぼすと実感させられてしまう、オークション結果となったようだ。

>>>ネオクラシックを特集したメルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.221を読みたい人はこちら(外部サイト)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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