ワインディングは飛ばさなくても楽しい
フィアット500は高速道路で移動し、昼食を食べてから今度はワインディングを主体に移動した。
西川「アップダウンがあるワインディングだと、マニュアルモードを使ってトルクバンドをしっかりとキープしたくなりますね。トランスミッションにクセがあるからか、変速の時に一瞬アクセルオフをしたいので、リズムを取るためにパドルシフトよりもシフトレバーを使いたくなります」
AMW竹内「分かります。パドルシフトは付きましたけど、ついついシフトレバーに手を伸ばしてしまいますね。あと、エンジンは他に2気筒0.9Lのツインエアもありますが、この1.2Lの4気筒の方がトルクの出方とかが日常ユースには向いていると思います。ワインディングの上りなどではとくにそう感じますね。ツインエアのドコドコ感も味があって良いんですけど、日本で乗るなら1.2Lの方が一般には乗りやすいかと」
西川「それとワインディングは結構楽しいですね。ステアリングフィールに安っぽさがなくてしっかりしていますね。目を三角にして攻める気持ちは全然沸いてこないですが、このクセのあるトランスミッションをスムーズに操作して、綺麗に荷重を前後左右に移動させてなめらかに走らせたくなるような、そんな楽しさがあります。飛ばさなくても楽しいクルマですね」
AMW竹内「ステアリングが割としっかりしていて、ちゃんとインフォメーションがあるんですよ。アバルトと違って特別な高揚感はなくても、しっかりと運転する愉しさがありますよね」
素の500は「マルゲリータ」?
こうしてあらゆるシチュエーションで試乗をしたフィアット500。道中には日本特有の狭い道もあったが、5ナンバーサイズのフィアット500では、そんな道も苦労することなく通り抜けることができた。
西川「なんというか、カッコつけて表現するとこのフィアット500、マルゲリータみたいなクルマですね」
AMW竹内「ほう、その心は?」
西川「このクルマをベースにアバルトの595や695があるわけじゃないですか、それってフィアット500っていうマルゲリータピザに、ハムとかサラミとかいろんなトッピングを足していっているみたいだなぁって。でもマルゲリータそのものの美味しさもあるから他のピザの美味しさも際立つみたいな」
AMW竹内「たしかに、この500や、アバルトも含めた500シリーズってそういうところあるかもしれません。目新しい特別な装備やメカニズムはないのに魅力的に仕上げるあたり、シンプルなものをベースにありふれた食材で美味しい料理に仕上げるイタリアンの雰囲気と似ていますね。そう考えるとベースとなる素の500がマルゲリータなのは言い得て妙かもしれません」
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フィアット500に初めて乗った筆者にとっては新鮮な、そしてイタリアン・コンパクトの奥深さを実感する試乗となった。すでに後継モデルとなるBEVの「500e」が販売されている現在、冒頭でもふれたとおり、ガソリン版フィアット500は正規ディーラーの在庫が無くなり次第、販売終了となる。新車で買うラストチャンスということで、気になる人はぜひ一度は触れてみるといいだろう。
■specifications
FIAT 500 1.2 CULT
フィアット 500 1.2カルト
・車両価格(消費税込):259万円
・全長:3570mm
・全幅:1625mm
・全高:1515mm
・ホイールベース:2300mm
・車両重量:990kg
・エンジン形式:直列4気筒SOHC 8バルブ
・排気量:1240cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:FWD
・変速機:ATモード付5速シーケンシャル(デュアロジック)
・最高出力:51kW(69ps)/5500rpm
・最大トルク:102Nm/3000rpm
・燃料タンク容量:35L
・公称燃費(WLTC):18.0km/L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)トーションビーム
・ブレーキ:(前)ディスク、(後)ドラム
・タイヤ:(前&後)185/55R15