日本を駆け巡る1000キロのグランドツアー
フェラーリは、かつてヨーロッパの貴族や文芸作家などが行なっていた「グランドツアー」の精神を現代に体現したツアーを日本国内で開催しました。フェラーリ初のSUVである「プロサングエ」で日本の伝統と革新を巡る、約1000kmの全行程に参加した自動車ライターの西川 淳氏がツアーの様子をお伝えします。
雨すらも楽しめる“全天候型”フェラーリ
京都をスタートし、金沢、松本、箱根、鎌倉を抜けて東京へと至る、およそ1000kmのグランドツーリングにフェラーリ「プロサングエ」で参加した。京都〜金沢の前半は日本人ジャーナリストのみ、金沢〜東京の後半はドイツやオーストラリア、中国、韓国からの取材陣を迎えての豪華なプログラム。筆者は全行程にお付き合いすることに。
出発地の京都はあいにくの雨模様。街中を北上し、鯖(さば)街道へ。大原を抜け、琵琶湖の西岸へと進路をとる。時間が経つにつれて次第に本降りに。とはいえ今回のパートナーは跳ね馬といっても背が高いモデルだ。天候に左右されないフェラーリということで、かえって楽しめるじゃないか。しかもプロサングエのフロントミドには12気筒エンジンが積まれている。新緑の美しいはずの鯖街道も景色を楽しむどころではなかったけれど、たなびく素晴らしいV12エンジンの咆哮と、悪コンディションをまるで気にさせないハンドリングとがドライバーの心を大いに盛り立てた。
金沢に着く頃には雨もようやくやんで、遠くの空には晴れ間も見えだした。天気予報によれば明日からなんとか天気も持ち直しそうだ。2日目、有名な千里浜なぎさドライブウェイを楽しむ。満潮ということでかなり待たされたが、短い区間ながらなんとか走った。
金沢を南下し、こんどは世界遺産の白川郷を目指す。茅葺(かやぶき)の家々が立ち並ぶ風景は我々日本人にとっても里山の原風景を思い出させてくれる貴重な機会だろう。そして、この村もまた昔のままのように見えて、その実、知恵と工夫を注ぎながら変えるところは変え、守るべきものを守って、維持されていることを知る。時代の変化に適応しつつ、古き良き伝統も立派に残す。フェラーリがプロサングエに12気筒エンジンを積むという行為とそれはよく似ている。
白川郷から飛騨高山、そして信州へと抜ける山間のワインディングロードでは、プロサングエの運動性能を存分に嗜んだ。重量バランスの良さと秀逸な新サスペンションシステムのおかげで、そのドライブフィールはまるで背の高い「812」である。
松本・扉温泉は明神館へと到着。グルマンが目指す温泉ホテルで、ルレ・シャトー会員というだけあって、地産地消に徹し、和のテイストも取り入れたフランス料理のプレゼンテーションが素晴らしい。これもまた伝統と革新が融合する一例だ。