フェラーリ456GTのマーケット相場は、静かに高騰中?
自動車エンスー界において毎年8月の恒例行事となっている「モントレー・カーウィーク」では、中核イベントである「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」や「ラグナセカ・モータースポーツ・リユニオン」にくわえて、欧米を代表する複数のオークションハウスが、カルフォルニア州モントレー半島の各地でクラシックカー/コレクターズカーの大規模オークションを開催しています。そんななか、RMサザビーズ北米本社が2024年8月15日~17日にモントレー市内で開いた「Monterey 2024」オークションでは、昨今のヤングタイマー人気と歩調を合わせるように相場価格を上昇させている1台、フェラーリ「456GT」の6速マニュアル仕様車が出品されていました。
名作デイトナを意識したスタイリングに最新のテクノロジー
1992年、ヨーロッパ大陸でも最古のフェラーリ正規代理店「ガレージ・フランコルシャン」の40周年を記念する式典として、その母国ベルギーのブリュッセルで開催された「FF40」において、フェラーリは当時最新の4シーター・グランドツーリングカーを発表した。それが「456GT」、発表当初は「456GT 2+2」と呼ばれていた。
エレガントなピニンファリーナのスタイリングを身上とする456GTは、1950年代と1960年代の見事なGTカーを彷彿とさせると同時に、フェラーリを21世紀へと押し上げるテクノロジーの結晶でもあった。
また、フェラーリの名作「365GTB/4 デイトナ」を意識したと公表されていたスタイリングにも表れているように、456GTはかなりスポーティなキャラの持ち主。また、歴代のフェラーリ製2+2グラントゥリズモの常識からすれば、456GTのパフォーマンスは並外れたものだった。
最高出力442psをマークする完全新設計の65度V型12気筒・4カムシャフト48バルブ・エンジンを搭載。時速186マイル(約300km/h)以上、0-60マイル(約96km/h)加速はわずか5.2秒を実現した。
往年のデイトナと同じくトランスアクスルを採用
パワートレインには、理想的な重量バランスを実現するため、往年のデイトナと同じくトランスアクスルを採用。デイトナ時代からの伝統たるシフトゲートで区切られたトランスミッションは、フェラーリの市販ロードカーとしては初めて6速とされた。
サスペンションには、テレスコピック式ガス封入ショックとセルフレベリング式リアアクスルが採用され、高速走行時の究極のロードホールディングを実現した。
456GTはその優れたグランドツーリング能力にくわえ、エレガントなスタイリングに素晴らしいパフォーマンス、快適なサスペンションも相まって、かなり信頼性に難があるという4速AT仕様を除けば、近ごろでは「中古車」から「コレクターズアイテム」へと急速に変容している模様である。
やはり高価な456GTは、マニュアルに限る?
このほどRMサザビーズ「Monterey 2024」オークションに出品されたフェラーリ456GTは、1994年7月にマラネッロの本社工場からラインオフし、ボディカラーは「ネロ・トロピカーレ」、インテリアは「ベイジェ(ベージュ)」の本革で仕立てられた1台である。
カリフォルニア州ニューポートビーチの「ニューポート・インポーツ」社を通じて新車で販売され、2013年にフロリダ在住の人物に購入されるまで、カリフォルニアの所有権を保っていた。
その後、アメリカ国内での登録履歴を問い合わせられる「CARFAXレポート」によると、このフェラーリはコネチカット州およびペンシルヴァニア州内在住の個人オーナーによって所有され、2017年1月以降は、今回のオークション出品者でもある現オーナーのコレクションに加わった。RMサザビーズ北米本社が公式のウェブカタログを作成した際の走行距離は、新車からの通算で1万4353マイル(約2万5200km)に達していると伝えられていた。
今や日本国内でも1000万円越えが珍しくはない
最後のアナログ・フェラーリのひとつである456GTは、内外装ともイタリア流エレガンツァを究めたデザインに、フロント搭載の強力なV型12気筒プラントを備えるかたわら、4人乗りの実用性と独特のゴージャスな魅力も備え、素晴らしいドライビング体験と、世界で最も知名度が高く、名高いブランドのひとつであるフェラーリを所有するスリルを味わうことができる。
今回のオークション出品に際して、RMサザビーズはそんな謳い文句とともに、11万ドル~12万5000ドル(邦貨換算約1617万円〜1837万円)という、以前の456GTの相場価格を知る者にとってはかなり強気にも映るエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、出品者側が期待していたほどにはビッド(入札)が集まらなかったようだが、それでも終わってみればエスティメート下限を少しだけ割り込む9万5200ドル。すなわち日本円に換算すれば、約1360万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったというのだから、やはり456GTのマーケット評価は、かなり動いているということなのであろう。
2+2の12気筒フェラーリの常として、以前はマイナートラブルが頻出するという悪評から、456GTはかなり安価。コンディションに不安のあるものならば500万円以下の売り物もけっこう存在していたはずながら、今や日本国内でも1000万円越えが珍しくはないようだ。
ただし、456GTで高価格のつく絶対条件がマニュアル仕様であるということも、決して忘れてはならないだろう。