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V16を搭載した「チゼータ」はランボのエンジニアとガンディーニが手掛けた夢のスーパーカーだった! 現在の参考価格は1億円前後…!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

ブルネイ王室に入手された3台中の1台は、数奇な運命をたどる

ブルネイのロイヤルファミリーは、イタリアで9台が製作されたチゼータV16Tのうち3台を購入したとされる。ブラックの車両が2台と、このブルーの1台である。

今回「The Turbollection」オークションに出品されたシャシーナンバー101は、ブルネイ王室の代行として、シンガポールの「ホン・セー・モーターズ」社がオーダーしたもの。ホン・セー社はシンガポールにおけるフェラーリ正規ディーラーであり、ブルネイ王室コレクションの多くが、同社を通じてオーダーされていたといわれている。

興味深いことに、ほかのほとんどの生産モデルはサイドエアインテークに垂直の太いスリットを備えていたのに対して、シャシーナンバー101は白いプロトタイプと同じく、水平の細いフィンを備えている。

ダークブルーのボディに、同じくブルーのレザーインテリア、そしてブルネイの交通法規に合わせて右ハンドルで仕上げられたシャシーナンバー101は、イタリア全土でのプレス撮影に使用され、1993年のジュネーヴ・ショーにも展示された。

RMサザビーズの公式ウェブカタログ作成時、オドメーターに刻まれていた走行距離983kmのほぼすべてが、この時期のファクトリーによるテスト走行およびPR活動のために蓄積されたものと考えられている。

このV16Tは、1993年3月にイタリア・モデナからアジアへと出荷される。ところが理由は不明ながら、シンガポールのホン・セー・モーターズ内に25年以上も保管され、ブルネイに引き渡されることはなかった。

唯一オリジナルのまま残ったブルネイ王室購入のV16T

いっぽう王室が購入した残り2台の黒いV16Tは、いかなる経緯でそのような事態になったかは明かされていないものの、なぜかピニンファリーナの手によってフェラーリのボクサー12エンジンを縦置きで搭載し、そのために不可逆的な構造変更が施されてしまう。

さらに、そのうちの1台は未完成のまま解体され、残る1台はカリフォルニア州タスティンの「マルコーニ博物館」に展示されていることから、シャシーナンバー101はブルネイ王室が購入したV16Tの中で唯一、現在もシンガポールに到着したままのオリジナル状態で保存された個体ということになる。

生産から四半世紀の時を経た2020年、前オーナーはホン・セー社からシャシーナンバー101を購入し、走行可能な状態へと戻した。そして2021年に「The Turbollection」へと再び販売される前に、この個体はすべてのフルード類を交換し、冷却システムを整備、燃料システムのクリーニングも行っているとのことである。

「チゼータV16Tは、めったにお目にかかれない一方、信じられないほど興味深いマシンであり、第二次世界大戦後では数少ない16気筒エンジンの市販車である。驚異的なパフォーマンス、見事なデザイン、魅惑的な歴史、そして最高のエクスクルーシブ性を備えたこのV16Tは、どこへ行っても目立つこと間違いないだろう」。そんなPRフレーズを添えて、RMサザビーズ北米本社は「The Turbollection」との協議のもと、70万ドル(約1億円)~90万ドル(約1億3000万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、出品者側が期待していたほどにはビッド(入札)が伸びなかったようで、残念ながら落札には至らず。しかしそののち、同社の営業部門を介して得意客に個別セールスをかけ、販売に至ったようである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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