サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

ボルボの「全車EV化計画」は目標の2030年までには無理だった…!? EV普及の妨げの要因と計画見直しの中身を紹介します

ボルボ EX30:ロングホイールベース、大径ホイール、均等なオーバーハングによってバランスの良い洗練されたエクステリアを採用

2030年に100%EV化を目指していたが…

スウェーデンのボルボ・カーズが、2030年までに新車の全ラインナップを電気自動車(EV)とするというロードマップを発表したのは、2021年3月のことでした。正確にはこのロードマップは、同社が販売する車両のうちEVの比率を2025年には50%に、そして最終的に2030年に100%とすることを示したもの。すでにこの段階でボルボ・カーズは、2020年にブランド初のEVとして「XC40リチャージ」の生産を開始しており、それはロードマップ実現に向けた大きな一歩となることが予想されていました。

EV化によって利益を生み出す企業体制を構築

ボルボ・カーズが将来的に全ラインナップをEV化するという、きわめて戦略的な計画を立ち上げた理由のひとつには、もちろんプレミアム・ブランドとして、さらに地球環境への配慮を前面に押し出した商品を提供するという目的があったのはいうまでもないが、同時に将来的にさらに利益を出すことのできる企業体制を作り出すことにも狙いがあったことを見逃してはならない。

EV化戦略を進める一方でプロダクト・ポートフォリオの縮小を図り、より効率的に大きな利益を確保するとともに、それによってさらに積極的な投資を実現する。もちろんその投資の先には新たなEVの開発があり、またボルボ・カーズが現在積極的に推進する車両販売のオンライン事業化、さらにはプロダクトの電動化以外に関しても、たとえばノースボルト社と共同開発するバッテリーセルについては、完全な再生可能エネルギーを使用して生産することを目標とすることなど、多岐にわたる計画を打ち出してきた。

ボルボ・カーズからは、その目標に向けてすでに5車種のEVが市場へと導入されている。最もポピュラーな存在なのはボルボ史上最もコンパクトなSUVとしてデビューを飾った「EX30」。「C40」や「XC40」という上級モデルと比較してもさらに25%もCO2排出量を削減し、かつ高い機能性が与えられたこのモデルが、同社の電動化戦略に大きな加速度を生み出したことは確か。だがボルボは先日、冒頭で触れた2030年までに完全なEVメーカーになるといった目標を断念することを明らかにしたのだ。

目標となるEVの比率を若干修正

ボルボ・カーズによれば、それは完全な目標の見直しではなく、当初2030年に全車としていたEVの比率を、2030年までに全生産車の90%以上をEV、もしくはPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)とし、残りの10%をHV(マイルド・ハイブリッド)とする計画へと若干修正したものであるという。

2030年にEVメーカーへという計画を見直した背景には、EV普及のためには必要不可欠となる充電インフラの整備が予想以上に遅れていることや、仮にそれが整っても充電に必要な時間、すなわちエネルギーの調達時間にはある程度の長さの限界があること。そしてそれを好まずに、現在でも通常の内燃機関を搭載するモデルや、HV、PHEVといったモデルが市場では人気を誇っていることなどがあった。

輸出先各国の政府による補助金制度や税金の減額などにおいても、なかなか足並みが揃わないことも、EV普及の妨げになっているとボルボ・カーズは語る。

一度は内燃機関エンジンの開発を終了すると宣言したボルボ。仮に2030年を越えてもPHEVやHVでそれが必要となるのならば、新型エンジンの開発は必要不可欠なプログラムとなるだろう。ボルボ・カーズによれば、この中期計画の見直しは資本の支出計画に重大な影響はなく、その未来は電動化にこそあるという信念は不変だ。

参考までにCO2排出量の削減目標は、2018年基準で2025年には従来の40%削減から30~35%の削減へ。そして2030年には生産車1台あたり65~75%削減することを目指すという。ボルボ・カーズのEV戦略、そしてその橋渡し役となるPHEV戦略は、今後もさらに魅力的なモデルとともに、我々の興味を抱かせ続けてくれるに違いない。

モバイルバージョンを終了