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10台しか存在しないアルファ ロメオ「155 V6 TI DTM」は1億円以上の価値がある!? 走らせるにはさらにハードルの高い上級エンスー向けの1台でした

10台しか存在しないアルファ ロメオ「155 V6 TI DTM」は1億円以上の価値がある!? 走らせるにはさらにハードルの高い上級エンスー向けの1台でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

特別な環境を用意できる上級者じゃなければ、買っても走らせられない?

このほどRMサザビーズ「The Tegernsee」オークションに出品されたアルファ ロメオ 155 V6 TIは、アルファ・コルセが製作した1994年バージョンのわずか10台のうちの1台で、シューベルがキャンペーンを行った3台のうちの1台である。

F1グランプリでも活躍したベテラン、クリスチャン・ダナーがドライバーを務め、5月の「ニュルブルクリンク・アイフェレンネン」戦での2位入賞を含む14回のポイント獲得に貢献した。くわえて1994年のDTMランキング9位という成績には、イタリアのムジェロで開催された2つの非選手権レースのうちの最初のレースで3位入賞を果たしたことで、さらなる輝きがもたらされることになった。

1995年シーズンに向け、このマシンはアレーゼを拠点とする「ユーロチーム」の手に渡り、ダナーと同世代のF1ドライバーであるステファノ・モデナがこの年のDTM開幕戦から4レースを戦った。5月初旬に行われた「アヴス」戦では5位と2位を獲得し、このマシンのレースキャリアは有終の美を飾ったといえよう。

それから20年以上の時を経た2017年、このクルマはアルファ ロメオのエキスパートであるファブリツィオ・パンドルフィ氏によって、ベアメタル状態になるまで塗装を剥離したフルレストアが施され、1994年シーズンの「シューベル」カラーを完全再現。それ以来、走行距離はごくわずかとのことである。

そして2018年に現オーナーが入手したこの車両には、スペアエンジンや2基のギアボックス、スペアのフロントディファレンシャル、オリジナルの「ヴァーゲンパス(レース参加に必要な車両通行証)」を含むスペアパッケージが付属している。

入札は思ったように伸びず……

今回のオークション出品に際して、RMサザビーズは65万ユーロ(約1億600万円)~70万ユーロ(約1億1400万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。また、「コンクール・オブ・エレガンス・ジャーマニー」における展示を実質的なプレビュー(入札前の検分)として、入札は7月27日(現地時間)に締め切られることになっていた。

ところが実際にオークションの火ぶたが切られると、ビッド(入札)は思うように伸びず、締め切りの段階を迎えても「リザーヴ(最低落札価格)」に届かないまま、流札に終わってしまった。

とはいえ、あくまで筆者の私見ながら、このオークション結果には納得せざるを得ない気もする。たとえ入手できたからといって、誰もが普通に乗れるシロモノではないからである。

実際このマシンを走らせられる環境は、しかるべきサーキットに限定されること。また、エンジンを始動させるだけでも専用のコンピュータソフトが必要で、もちろん専門知識とスキルを持ったメカニックの助けがなければ、コースインもままならない。なんとか走り出すことはできても、消耗品などのスペアパーツは常時そろえておく必要がある。

つまり、このマシンに必要な技術力を備えたスペシャリスト、あるいはサーキット近隣にガレージを構える、いわゆる「レース屋」さんに預けておく。そして、走行イベントのある時だけサーキットのピットまで運んでもらい、整備や暖気まで済ませてもらったうえで「愛車」とともに颯爽とピットアウト。そんな乗り方ができる、裕福かつ腕自慢の上級エンスージアストでもなければ、このマシンに興味を示すことはあるまい。

でもそんな上級者は、世界レベルでも非常に限られた存在ということなのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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