ぼくらの「アポロ号」が一番いいクルマかも!?
アポロのオフィスは、クルマを借りる人でいっぱいだった。もちろん、みんな朝一番から出発したい気持ちは一緒だ。
敷地内には、いろいろなタイプのキャンパーがずらりと並んでいる。聞いていたとおり、ダーウィンはノーザンテリトリーのアウトドアの起点なのだ。
対応してくれたのは、リズさんという黒人の女性だった。テキパキと必要事項を説明し、ぼくたちが借りる予定のキャンパーバンへと案内してくれた。何台か、同じタイプのクルマがあったが、ぼくたちのクルマが一番いいように見えた。クルマの使い方を説明しているときにチラッと見ると、なんとまだ1万6000kmしか走っていない新車同然だった。これは頼もしい。ぼくはその場で「アポロ号」と命名した。
何よりも気に入ったのはタイヤだった。アポロ号が履くオフロードタイヤは、トレッドがしっかりあって信頼性がある。もちろん、スペアタイヤはふたつ積んでいるが、パンクのトラブルは避けたい。タイヤ交換など、もう30年以上していない。
ところが、エンジンをかけてチェックするとリアビューカメラが作動しないことが判明した。キャンパー部は箱状のユニットを載せているだけなので、カメラがないとまったく後ろが見えない。さらに、後から分かったことだが、サイドミラーがノーマルのままで外に張り出していないため、自分の車線がほとんど見えない。後ろから追い越されると気がつくときは、すでに横に並んでいる状態だった。
工場に運び込んでリアビューカメラを修理
リアビューカメラの修理のため、アポロ号が工場に運ばれた。「部品がなくて直らないかもしれない」と、リズさんが表情を曇らせる。予備のキャンパーバンが準備されたが、ボディが赤土で汚れていて明らかにやれている。タイヤもかなり古い。
「さっきのクルマのほうがいいね」
元日産メカニックのケンさんも、ぼくと同じ意見だ。カメラが直らなくてもアポロ号にしてもらおうと話し合っていると、「カメラが直りましたよ」とリズさんがOKサインを出した。
「よかった!」
3人は笑顔を交わした。
「時速110km/h以上出さないでください。それから、夜は絶対に運転しないこと」
リズさんの厳しい注意に「誓います」と、ぼくは右手を挙げた。
最後に満タン返しの約束の燃料が一杯に入っていないことをチェックして、ぼくたちとアポロ号はいよいよ旅を開始した。
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