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最初期型ワンオーナーのホンダ「NSX」に試乗! これは間違いなく日本製スポーツカーの金字塔です【旧車ソムリエ】

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

節度感あるシフトフィールはフェラーリよりも魅力的?

そして、いよいよ念願の試乗のときが訪れた。キーをひねると、これも往年のホンダ車と同じ軽いクランキング音のあと、間髪入れずにV6エンジンが始動。まるでレジェンドのように静かでスムーズなアイドリングに入る、

当時の「プレリュード」などのホンダ製スポーティカーは、クラッチやステアリングなどの操作系が、ちょっと不安を感じるほどに軽いものだったと記憶しているが、NSXのクラッチは比較的がっしりとした足応え。でも、操作自体はとてもナチュラルで、発進に特別なテクニックなどはまったく必要ない。

また、初期型NSXでは4速AT仕様車にはパワーステアリングが標準装備されていた一方で、マニュアル車はノンパワー。同じくノンパワーだった当時のフェラーリでいえば、「328GTB/GTS」よりも少々軽い程度の重さながら、今となってはそれが頼もしくて心地よくさえ感じられる。

この個体は「タイプR」用のチタン製シフトノブに換装されており、シフトに要する力は若干重くなっているそうだが、それでも「ゴクッ、ゴクッ」という節度感のある感触はとても心地よい。この部分だけを比較すると、ストロークが長いうえにシフトゲートにこすりがちなフェラーリのシフトフィールよりも、個人的には魅力的なものと感じられてしまう。

すべての90年代ミドル級スーパーカーのなかでも珠玉の1台

まずはクルマに慣れるために、街道では流れに任せてゆっくりと走らせていた。でも、撮影のためにワインディングロードに入ると、NSXは真の姿を見せはじめた。

パワーは当時の自主規制に従った280ps。ただし、オーナーのKさんは購入後わずか約2000kmの段階でエンジンを降ろし、入念なバランス取りをおこなったとのこと。その結果、Kさんとは親交のあった上原 繁氏からも「お墨つき」を得ることができたという。

Kさんいわく「NSXのVTECは、切り替わりが体感できないくらいにスムーズなのが正しい」とのこと。たしかに、低回転域では高級セダンのようなマナーの良さばかりが目立つが、一切の「段差」を感じることなく高回転域に突入すると、「クァオオオオーンッ!」という咆哮とともに、目の覚めるようなレスポンスと吹け上がりを余すところなく披露する。

さらに総アルミボディの軽さのおかげなのだろうか、筆者のコーンズ時代の記憶にかすかに残るフェラーリ「348tb」よりも明らかに速いように感じられたものの、それでもやはり、NSXの真骨頂はハンドリングにこそあるといわねばなるまい。

アルミモノコックらしい「ドライな」高剛性と軽さにくわえ、4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションに施された妙なる調律により、タイトコーナーではライトウェイトスポーツカーを思わせる俊敏な身のこなしを見せるいっぽう、中・高速コーナーでは非常に安定したスタビリティを示してくれるのだ。

この素晴らしさは、同じ時代のスーパースポーツたちと同じテーブルで戦い、しかもさまざまな部分で凌駕するレベル。ポルシェ「911カレラ(3.2)」と同等の絶対的安心感がありながら、あの時代の911に垣間見られる、ビギナーのフールプルーフを拒む気難しさは皆無である。そのかたわら、ちょっと本気で走らせればフェラーリ348tbにも負けない煽情的官能も味わえる。

そしてなにより、エンジンフィールからハンドリングに至るあらゆるところで感じられる爽快感は、国籍やクラスを問わず、1990年代に生まれたすべてのミドル級スーパーカーのなかでも、格別なものと感じられたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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